冥土院日本(MADE IN NIPPON)

K君の守護霊

ある日の夜、高校時代の友人のKが電話をかけてきた。Kは貿易商社の取締役で羽振りが良い。小学校から高校まで柔道部に所属し、黒帯の猛者であった。学校を卒業した現在も、午後6時を過ぎれば銀座・赤坂・六本木でのクラブ活動に余念がない。得意技はもちろん寝技である。そのやんちゃぶりは数十年たった今も昔と変わらない。

(私)「随分久しぶりじゃないか、今夜は赤坂オフィスか?」
(K)「そうだ、よく分かったな」
(私)「電話から香水のにおいがする」
(K)「嘘つけ!」
(私)「毎日、飽きずにクラブ活動ができるもんだなぁ」
(K)「今日は仕事だ。客と一緒だよ」
(私)「まあ百歩譲って仕事ということにしておこう。ところで仕事中に何だ?」
(K)「ちょっと教えて欲しいことがある」

Kの教えて欲しいこととは次のような内容だった。

ホステスさん達との会話が弾み、それぞれの不思議な体験談をご披露することになったそうだ。夢枕の話あり、あるいは怪談ありで、その場は大層盛り上がったそうだ。「化粧濃い目の女神教」の熱心な信者だが、無神論者で唯物論者のKにはそんな話のネタがない。困ったなどうしようかと思っていたら、大学時代の出来事をふと思い出したそうだ。

大学一年生の時、入学祝に買ってもらった大型バイクで街中を走っていた時のことであった。交差点の出会いがしらに、対向車と正面衝突をした。かなりのスピードを出していたので、バイクから放り出され、身体が宙を飛んだ。

空中を飛んでいる間がとても長く感じられ、過去の十数年の出来事が走馬灯のように脳裏を横切った。「ああ俺はもうだめだ、死ぬのかもしれない」と思った刹那、『目を開けよ』という男の声がはっきりと聞こえた。彼が目を開けると、コンクリートの塀が目の前に迫っていた。その瞬間、柔道で鍛えた身体が無意識に反応し、身体を一回転させると見事な受身で着地した。目を開けるのがほんの少し遅れていたら間違いなく頭からコンクリート塀に激突しているところであった。着地の際に服が破れただけで彼は奇跡的に無傷であったそうだ。

この話をしたら、ホステスさんから「どうして僅か数秒の間に一生分の人生がみえたのか?」「目を開けよという声はいったい何なの?」と質問攻めにあったという。そこで、お手洗いに行くふりをして私に電話をかけてきたという訳であった。

(私)「かなり、やばかったようだな。人は事故などで死ぬ時は、一生を回想するらしい。その時は時間を超越しているから、とても長く感じるようだ。死んでいてもおかしくない状況だよ」
(K)「そんなにやばかったのか・・・では声の主は?」
(私)「おそらくお前の守護霊か、ハイヤーセルフの声だろう」
(K)「ハイヤーセルフって何だ?」
(私)「真我ともいう、高次な存在のお前自身だ。守護霊にしろ、ハイヤーセルフにしろ、かなりの霊能がある人でも、普通は声として聞くことが出来ないものだ。切羽詰った事態だったので、はっきりとした声で語りかけたのだろう。守護霊さんに感謝しなくっちゃな」


私の話に半信半疑のKはさらに聞いた。

(K)「そういえば以前、お前も何度か守護霊さんに助けられた話をしていたな」
(私)「ああ、俺の場合は、声は聞こえないが、虫の知らせや直感という形で事前に知らせてくれる」
(K)「お前の守護霊は事前に教えてくれるのに、何故俺の守護霊は知らせてくれなかったのだ。あんな怖い目に会う前に、身を守ってくれるのが守護霊なんだろう・・・」

鋭い突っ込みだ。私は一息おいて答えた。

(私)「俺の性格を一言で言えば何だ?」
(K)「用心深い」
(私)「そうだろう、だから守護霊さんも事前に教えてくれるのさ」
(K)「じゃあ、俺の場合はどうなんだ?」
(私)「守護霊さんが前もって『危ないからバイクに乗るな!』って知らせてくれても、お前は黙って言うことを聞くタマか?」
(K)「たぶん聞かないだろう」
(私)「切羽詰らなきゃ言うことを聞かない、お前の性格を一番良く知っているのさ。守護霊さんはお前の過去世のお前自身でもある。言わば似たもの同士なのだよ・・・」

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