キスして

冬の海は冷たい。風が吹く。ニット帽を深くかぶり直す。耳たぶが痛い。　　海はどんよりとした灰色だ。光を内包しているようには見えない。マットな灰色。　　ざらっとした紙をくしゃくしゃにしたよう...

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2022年1月6日

空蝉

　あの人は、帰っていった。夏の夜明けは早い。烏帽子を被り直したあの人。狩衣には私が調合...

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2021年7月30日

いちご飴のキス

カナタくんは、かわいい。さらさらの髪。薄い背中。すりガラスのような声。そして、そのかわ...

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2021年7月1日

龍虎相打たない

散歩。散歩。空中を散歩。今日は、空も晴れ渡り、気持ちがいい。僕の鱗が日差しを浴びて、き...

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2020年7月14日

掌上小説集

「布団のお昼寝」ぽかぽか日差し。ベランダに干されて、ひと休み。今日は、休日。世界は、お...

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2020年5月25日

夜の砂を噛む

　心が欲しいと思うのは、大きすぎる望みなのだろうか。　夜は、更けた。私は、仰向けのまま...

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2020年5月14日

花形ギタリストのウィンク

歓声が聞こえる。観客の期待が、膨らんでいる。突けば、破れそうだ。　ショーが、はじまる瞬...

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2020年4月11日

ポケットドラゴン〜日曜朝ごはん編〜2

ウリュは、俺と同じくらいの大きさの茶碗で、飯を食べる。小さい体で、案外大食らいだ。ウリ...

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2020年4月11日

夜半の月

　夕方、父が入所している施設から、連絡があった。　施設で、誤飲して、意識不明になったた...

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2020年2月16日