NPO法人POSSE(ポッセ) blog

職場のうつでキャリアを失わないために ~職場のルール向上と社会保障制度の整備を!~キャンペーン

 私たちNPO法人POSSE(ポッセ)では日頃より、労働相談を受け付けており、その数は累計500件以上にも及びます。
 この間、目立って増えてきているのが、パワー・ハラスメント(以下、パワハラと表記)やうつに関する相談です。
 実に、直近数ヶ月の相談の約半数がパワハラやうつに関連するものでした。また、これらの相談が、退職勧奨や解雇と関連して起きているという傾向も見受けられました。ここには、退職や解雇に伴う法的/社会的なルールを無視し、相談者個人を力により攻撃することにより、精神的に傷を負わせた状態で会社から排除する―そのことにより、本来会社が負うべき責任を負わず、相談者個人にすべて転嫁する―という会社側の姿勢が見られます。


● 無限の指揮命令
 これらの相談事例からは、単に「上司のマネジメント能力」には還元できないパワハラの本質的な原因が浮かび上がりました。―すなわち、職場内において、使用者の指揮命令権の範囲が無限とも思われるほどに広く容認されている、ということです。
 雇用契約の締結により、労働者は「労働契約」の範囲内で使用者の指揮命令に服する義務を負うことになります。が、この指揮命令の範囲は、これまで広範かつ曖昧に解釈され、逆に言えば、パワハラの範囲は狭く解釈されてきました。業務とは関係のない事情で叱責することや、業務を遂行するためであっても人格を傷つけるような行為を行う・強要するといった場合、さらにいえば、合法であっても本人はどうしてもやりたくない内容の営業活動を強要するような場合、本来であれば「指揮命令権の逸脱」=「パワハラ」であると考えられる可能性があります。にもかかわらず、これまで「指揮命令権の範囲内」とされ、労働者は従わざるを得なかった。そのことによってうつ病になってしまったり、過労死に追い込まれてきたのです。
 パワハラの問題とは、労働者を雇用して行う企業の経済活動が、いったい人間をどこまで利用し、命令を行ってよいか、という道徳的な範囲をめぐる概念であると考えられます。
 今年度、NPO法人POSSE(ポッセ)は、この問題を就職難と絡めて調査を行います。

● 労災保険適用の難しさ
 一方、労働者の業務上または通勤時による傷病等に対しては、労災保険制度があり、必要な保険給付(治療費等)等の費用は、原則として事業主の負担する保険料によってまかなわれています。業務上の理由によってなってしまったうつ病に対しては、この労災保険の対象となり、勤務当時の給与の8割の給付と解雇制限の適用など補償を受けることができます。この「業務上の理由」には、上司とのトラブルや退職の強要なども要素としては加味されます。
 しかし、労災保険の申請から認定・給付までには様々なハードルがあるのが実際です。
 ますひとつには、そもそもうつ病に対して、労災保険の適用・給付が受けられるということが、知られていません。一般的には、自身の健康管理の問題、個人の精神的な強さの問題と捉えられがちです。
また、いったんうつ病になってしまうと、そういった申請手続き、あるいはそれに伴って当時のことを思い出し、人に説明するといったこと自体がなかなか難しくなってしまうということがあります。
 つぎに、申請から認定・給付までに、審査期間として6か月以上もかかってしまうという問題があります。この間に、うつ病が業務上の理由によるものなのか否かが審査・判断され、業務上の理由によるとされれば認定・給付となります。が、社会的にうつ病罹患者・それによる労災申請者が急増していること、業務上の理由によるか否かの判断が非常に難しいことなどが原因で、審査期間は延びる一方です。その間、申請者はただただ認定されるかもわからない不安な状態におかれ、また無収入の状態が続くことになってしまいます。
 そして、不安定な状態で待ったとしても必ずしも認定・給付にいたるとは限りません。厚生労働省の発表では、認定率は約3割とされています。
 さらに、給付期間は「その疾病が治癒するまで」とされているものの、現実には6か月間とされています。これは、疾病の原因であった職場から離れれば回復すると考えられているためですが、実際には、6か月間で今までと同等に働けるようになるのは難しく、ましてうつ病が完治するわけでもありません。

● 健康保険適用の難しさ
 そのほか、業務上ということにこだわらないならば、疾病により働けない場合に対しては健康保険の「傷病手当給付」を受けることができます。これは、勤務当時の給与の約2/3が1年半の間支給されます。労災保険の窓口でも、審査期間において、傷病手当給付を受け、労災が認定された後に返金するという方法が勧められています。
 しかし、ここで問題になるのは、本来なら会社の責任でうつ病になったにもかかわらず、あたかも自分の責任というかたちになり、給付額の減少や解雇制限が適用されないなどの不利益をこうむってしまうことです。また、会社が健康保険組合の手続き事務窓口となっているために、嫌がらせとして健康保険の給付申請をさせてもらえない、などの更なるトラブルも生じています。

 総じて、うつ病に罹患した際、現行の制度を利用するには様々な困難があり、場合によっては制度の隙間からこぼれ落ちてしまう人がいるというという問題があります。疾病により収入が途絶えてしまった際、それまでの低収入や就労期間の短さなどにより貯金がなかった場合、頼れる親や家族がいなかった場合、そこからすぐさま貧困へと転落するのは火を見るより明らかです。


 このような現実を前に、NPO法人POSSE(ポッセ)では、「職場のうつでキャリアを失わないために~職場のルール向上と社会保障制度の整備を!~」と題して、下記のキャンペーンを行います。

1 全国ハローワーク前・聞き取り調査
 … NPO法人POSSEでは昨年3月にハローワーク前で離職者に対する離職理由などに関する調査を行いましたが、その際、「パワハラを理由に会社を辞めた人」は1割にのぼりました。
 今回、あらためて全国のハローワーク前で調査を行い、職場で日常茶飯事化しているパワハラの実態・それに対する有効な対処方法について、詳細にわたる調査を行います。

2 セミナーの開催
 … パワハラやうつ病など含め労働問題に詳しい弁護士や相談の多い業界(ITやサービス業、製造業)に詳しい方を招き、職場でトラブルにあった際、どのように対応すればいいのかを伺います。うつ病になる前の段階でトラブルを解決する方法・自分の身を守る方法、うつ病になってしまったときや会社を辞めてしまったときに使える制度についてなどを紹介します。

3 対応マニュアルの作成
 … 職場でトラブルにあった時どのように対応すればいいのか、「調子が悪いな…」と思った時どうすればいいのか。使える制度は? サポートしてくれる機関は? それらを紹介する、困った時にすぐ使えるマニュアルを作成します。

4 政策提言
 … 労災保険制度のあり方、職場における働かせ方等の問題について、政策提言を行っていきます。


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NPO法人POSSE(ポッセ)は、社会人や学生のボランティアが集まり、年間400件以上の労働相談を受け、解決のアドバイスをしているNPO法人です。また、そうした相談 から見えてきた問題について、例年500人・3000人規模の調査を実施しています。こうした活動を通じて、若者自身が社会のあり方にコミットすることを 目指します。

なお、NPO法人POSSE(ポッセ)では、調査活動や労働相談、セミナーの企画・運営など、キャンペーンを共に推進していくボランティアスタッフを募集しています。自分の興 味に合わせて能力を発揮できます。また、東日本大震災における被災地支援・復興支援ボランティアも募集致します。今回の震災復興に関心を持ち、取り組んで くださる方のご応募をお待ちしています。少しでも興味のある方は、下記の連絡先までご一報下さい。
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NPO法人POSSE(ポッセ)
代表:今野 晴貴(こんの はるき)
事務局長:川村 遼平(かわむら りょうへい)
所在地:東京都世田谷区北沢4-17-15ローゼンハイム下北沢201号
TEL:03-6699-9359
FAX:03-6699-9374
E-mail:info@npoposse.jp
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