2009年９月、政権交代が実現しました。これまでの日本の社会保障制度はいま、大きく転換するチャンスを迎えています。
折しも「派遣村」や「派遣切り」が話題になった今年は、「セーフティネット」のあり方が建設的に議論されるようになってきています。ただし、その実際の意味は、新政権の中ですら必ずしも正確に共有されているわけではありません。議論の中には、「セーフティネット」の整備を逆行させるようなものや、「セーフティネット」と称しながら失業者が不利になるような政策を導入しようというものもあります。
そもそも「セーフティネット」とはどのような制度のことを指しているのか。また、それがこれまでの日本ではどのような形をとっていたのか。そして、これからどのように変わっていくことが必要なのか。今回の特集では、「セーフティネット」の現実と課題を理念、歴史、実態などの視点から多面的に解説し、今の日本に本当に必要なセーフティネットのあり方を議論していきます。
職業訓練、雇用保険、住宅保障、ワークフェア、ベーシックインカム、社会的排除……セーフティネット論に必要な議論を網羅しています。
ブックガイドも充実しており、これから労働問題、雇用政策について勉強しようという方にも入門的な特集となっています！
●本誌編集部
５分でわかる！セーフティネット論入門
…そもそもセーフティネットとはどういう概念なのか、前提となる福祉国家の概念、70年代のその転換、そして登場したセーフティネットをめぐる概念、そして日本における特殊性などを簡単に解説しており、本編に入る前に今回の特集の全体像がつかめるようになっています。
●濱口桂一郎（労働政策研究・研修機構統括研究員）
日本型システムにおける労働とセーフティネット
日本型セーフティネットからの転換を提言
…ブログでおなじみの濱口桂一郎さんの論文です。日本型ワークフェアからの転換は「ディーセントワークフェア」に向かうのか？それとも「シバキ型ワークフェア」に陥るのか？
●白川一郎（追手門学院大学教授）
企業にこびた「即戦力」教育より英米型の職業訓練を
各国の職業訓練制度を紹介！正社員化ではなく、セーフティネットを
…欧米の職業訓練を解説した入門書『日本の二ート・世界のフリーター』の著者、白川一郎さんのインタビューです。就労を強制し、福祉を削減するという視点から批判されがちな英米のワークフェア（しかもサッチャーやレーガン政権下でも）ですら、職業訓練が日本よりはるかに充実していることがわかります。対照的に、自身の体験から日本の大学における職業教育についてもはばっさりと斬り捨てています。
●本誌編集部
就職できない職業訓練
―訓練学校民営化の罠―
訓練学校が派遣労働を勧める？
日本の職業訓練制度の矛盾に迫る
…「派遣切り」にあった失業者の方たちを訪ね、彼らが通った職業訓練校の実態を取材します。国や都の施設、民間委託の施設の差異、そもそも職業訓練紹介をほとんどしないハローワーク、そして日本の職業訓練制度の根本的な問題点に迫ります。
●川村遼平（NPO法人POSSE理事）
失業者を助けられない雇用保険
――ＰＯＳＳＥハローワーク前調査報告――
企業の横暴で雇用保険が使えない！
５００人の声が明らかにした制度的欠陥
…ＮＰＯ法人ＰＯＳＳＥでは、毎年調査活動を行っておりますが、今年度はハローワーク前で求職者を対象として、失業した理由、雇用保険の実態に関するアンケートを行っています。（本論文では９月までの集計ですが、３月時点での中間報告はこちらからダウンロードできます）→【POSSE2009年度ハローワーク前調査９月中間報告】
※追記・本調査については１０月２６日に報道されました。
共同通信 http://www.47news.jp/CN/200910/CN2009102601000537.html
毎日新聞 http://www.mainichi.jp/select/today/news/20091027k0000m040108000c.html
●本誌編集部
生活保護行政がつくるハウジングプア
～無料低額宿泊所という「あきらめ」の牢獄～
貧困ビジネスと行政が連携する理由を
POSSEボランティスタッフが取材
…POSSEでは、労働相談のほかに生活保護申請などの生活総合相談も行っております。このルポでは、POSSEのボランティアスタッフが実際に受け付けた失業者の生活保護の相談から、彼らの生活保護費を利用する「貧困ビジネス」と、生活保護行政が一体化している実態を紹介します。POSSE生活総合相談窓口はこちらから→【POSSE生活総合相談窓口】
◇次回は、特集「どう変わる？ ニッポンのセーフティネット」の紹介の続きです。
