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NPO法人POSSE(ポッセ) blog

雑誌編集部裏日記 ~「消費者金融・闇金マンガの背景」~

雑誌『POSSE』の創刊号、皆さん読んでくださったでしょうか?
(雑誌の詳細はこちら→http://npoposse.jp/magazine/)
創刊号の特集は『派遣労働問題の新段階』と『労働と貧困の若者マンガ』でした。

メイン特集の派遣労働の方も非常にいい内容だったのですが、マンガのほうも、地味にそこそこ面白い企画に仕上がっているものと自負しています。
今回は、そんなマンガ特集の裏話について、お話したいと思います。

マンガ特集をお読みになった方は、ある記事を読んでいて、「この特集にこの内容はいいんかい!」と些細な疑問を抱かれた方もいらっしゃるかもしれません。
その記事とは、サラ金・ヤミ金問題でおなじみの闘う弁護士、宇都宮健児先生にインタビューさせていただいた「消費者金融・闇金マンガの背景」です。

より具体的には、宇都宮弁護士がヤミ金やサラ金マンガについて発言された、
「勧められるようなマンガ? ないない。」
というあまりにも衝撃的かつそっけない一言です。

他にも『ミナミの帝王』などについても「けしからん」と一蹴されるなど、サラ金問題の第一人者らしい実に容赦ない発言でした。詳しくは雑誌をご覧ください。
※消費者金融については、宇都宮先生の著書、『消費者金融―実態と救済』(岩波新書) をご覧ください。

確かに、宇都宮弁護士のサラ金・ヤミ金の実態についてのインタビューを聞いてからそれらのマンガを読むと、ミーハーな私でも「こんな実態じゃないだろー」とか、「これは犯罪だろー」とか、「こんな犯罪者が好意的に描かれていいのか!」という違和感を禁じえませんでした。それほどいまの闇金・サラ金マンガは、現状とかけ離れていたり、あまりに金融業者をかっこよく、そして被害者を情けなく描いてしまっているわけなんです。

とはいえ、そもそもそうしたマンガをほとんど読まれていないという宇都宮弁護士の発言に、「金融マンガの背景についてはかなり面白いんですけど、これだけだと消費者金融マンガの特集とはあまり言えないんじゃない? ていうかむしろ編集者の責任では…。」と思った方もいるかもしれません。少なくとも私は思いました。

そこで私は、実はこの宇都宮弁護士のインタビューをさらに読み応えあるものにすべく、とある企画を当初は考えていたのでありました。

バブル崩壊の不況から現在の格差社会に移行する中での闇金問題の深刻化を背景に、サラ金マンガ、闇金マンガがどのように変遷していったのか? 宇都宮弁護士の貸金融業者に対する主張は社会的に影響力を持っているにも関わらず、依然としてマンガのなかではまだ共通認識にはなっていないのはなぜか? それらを分析するというわれながら意欲的な内容です。

題して、「サラ金・闇金マンガの系譜 ~『ナニワ金融道』から『闇金ウシジマくん』まで」。

この一大プロジェクトを成功させるべく、私はブックオフ数店とネットカフェ数店に通いつめ、『ナニワ金融道』全巻はもちろんのこと、『ミナミの帝王』をとりあえず最新刊あたりから遡って、60巻ぐらいまで目を通しました。しかし、これだけで「系譜」とは、とてもじゃないが言えやしません。そこでさらに消費者金融や闇金が出てくるマンガを探し、『日掛け金融地獄伝 こまねずみ常次朗』、続く『日掛け金融伝 こまねずみ出世道』、『カバチタレ!』、『クロサギ』、『新宿スワン』、『ダブル・フェイス』、さらには闇金が何シーンか登場するというだけで『わにとかげぎす』、『カネが泣いている』、そして『闇金ウシジマくん』などを順序読んでいきました。
しかし、新堂冬樹原作のマンガ版『無間地獄』に手を出したあたりで、ふと「俺何やってんだろ…」という虚無感というか徒労感に襲われ、それ以上にそもそもどうやってまとめたらいいのか、苦悩の日々が始まりました。

そして、考えた挙句、ついに方向性は固まった…のは、時すでに遅く、雑誌入稿のデッドラインの数日前。
レイアウトや他の原稿の執筆や構成など、編集作業を優先させるべく、泣く泣くこの企画を落としてしまい、あえなく企画倒れという哀れ極まりない結末を迎えたのです。まあ、私の責任ですが。コラムにしてでも掲載したかった…。

そんな幻と化したサラ金・ヤミ金マンガ企画こそ掲載されていませんが、いまのままでも十分面白いと思いますので、ぜひぜひ「労働と貧困の若者マンガ特集」、読んでみてください! 宇都宮弁護士の背景説明と、さきほどご紹介したマンガをを読み比べてみるとより一層味わい深いと思います。

ちなみに、私のお気に入りは、なんといっても国友やすゆきの『カネが泣いている』です。被害者に対する自己責任的な描写には大いに異論がありますが、金融業者をかっこよく描くことをせず、むしろ印象を悪くしようとしているかのようなダークサイド描写、そして打ち切り決定後のやけくそなんじゃないかとしか思えない3巻の急展開ぶりは、ヒーロー然とした金融業者にうんざりしていた私に、現実味のあるブラックなひきつり笑いをもたらしてくれました。

あと、『ミナミの帝王』も全面肯定はできないんですが、部分的に面白かったです。ヤミ金業者であるはずの主人公が、自分の債務者を守る(というか債権を取り立てる)ために、彼らを借金まみれにしている元凶(たいていチンピラみたいな犯罪者)と闘うというありえない展開がちょくちょく見られるのですが、そのなかでたびたび、銀行とか大企業とか、社会的な巨悪を敵に回すことがあるんですね。
そのなかで、あろうことか同業の商工ローンと闘う話があるのですが、被害者をサポートするために、「理不尽な借金は払う必要はない!」とヤミ金業者にあるまじき、正論というしかないアジテーションをぶち上げ、「そんな借金踏み倒したれええっツ!」という咆哮をバックに、巨大な象の足がページいっぱいにのしかかる豪快なシーンに、不覚にも感動しかけてしまいました。

他にも、留保はつきますが、やはり『ナニワ金融道』や『ウシジマくん』、『新宿スワン』(闇金編)なんかも漫画としては面白かったです。それと唯一、『カバチタレ』の消費者金融の相談の話だけは、終始債務者の立場に立って、金融業者を美化しないマンガとして、お勧めできそうに思いました。

…いつかどこかの媒体で、「サラ金・ヤミ金マンガの系譜」原稿に、日の目を見させてやれるときが来ることを願いつつ。(坂倉)


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