NPO法人POSSE(ポッセ) blog

新宿七夕訴訟の傍聴に行きました!

NPO法人POSSE(ポッセ)スタッフの津金です。

2011年6月21日、生活保護申請を不当に却下した新宿区を相手に、保護申請をした原告が却下の取消を求めた裁判における結審が行われ、NPO法人POSSE(ポッセ)メンバーで裁判の傍聴へ行きました。結審では、これまでの審理で原告が主張してきたことがダイジェストにまとめられ、再度裁判官に対して原告の最後の主張が述べられました。

本件の概要については以下の通りです。


【本件概要】
原告は、路上生活で生活に困窮していました。原告は住所がないと生活保護の申請ができないと思っていましたが、あるとき、支援者の方に声をかけられ、住所がなくても生活保護の申請ができると知ります。そして、申請を行うことを決め、新宿区の福祉事務所へ行きました。

しかし、新宿区の担当職員は「生活保護ではなく仕事をすることを考えろ」と言ったり、東京都の独自制度である「TOKYOチャレンジネット」に行けとチラシを渡したりして申請を受け入れようとはしませんでした。その後、再三に渡って新宿区へ生活保護の申請を行いますが、却下とされてしまいました。

そして、2008年7月7日に原告は本件を提訴するに至ったのです。

なお、この処分を受け、生活の安定を優先させる事を本人と弁護団や裁判を支える会で検討した結果、都内の板橋区に生活保護申請することになりました。その結果「要保護性があり、緊急性が高い」ということで即日保護が開始決定され、開始決定通知と8月分の保護費の受給が行われました。このことからも、新宿区の生活保護の申請を却下する判断がおかしいということがうかがえます。

本件の概要、法的論点などについて、詳しくは前回のブログをご参照ください。
→【3月2日に新宿七夕訴訟の傍聴に行きました!】
http://blog.goo.ne.jp/posse_blog/e/62744932896bdae8084d212a532fa31c


【本裁判の傍聴へ行って】
新宿七夕訴訟について、NPO法人POSSE(ポッセ)は前回の原告尋問から裁判傍聴を行っています。今回、参加して思うところは、傍聴人の少なさです。裁判の時間が平日の昼間ということもあってか学生や社会人の方は少なく、傍聴人の多くは原告の支援者や同じく生活保護を申請している方などで、メディアも入っていない様子でした。この間、生活保護の打ち切りなどのニュースが報じられており、「生活保護」という言葉が注目を集めていました。本件はまさしくその生活保護のあり方を問うものであって、判決次第では今後、生活保護の申請が更に難しくなってしまう恐れがあるのです。しかし、実際のところは傍聴席のいたるところに空席が目立っていました。社会的な認識の薄さに危機感を覚えます。


また、原告代理人が裁判官に最後の主張を行う中で、印象に残った言葉が一つありました。それは「何も特別なことは求めていない」ということです。本件では、新宿区は申請を受け付けなかったのですが、板橋区は申請を認めています。なぜ、他のところは生活保護の申請を受け付けているのに、新宿区はしないのか。新宿区に対して、申請を認めさせることは何も特別な決定が必要なわけではありません。革新的決定ではなく、当たり前のことが認められる決定を。原告代理人が、主張をする中で何度も述べている言葉でした。


裁判の後は場所を変え、弁護士会館にて報告集会を行うとのことでしたので、NPO法人POSSE(ポッセ)メンバーも参加しました。そこでは、弁護団から本日のまとめと法的論点の解説が行われ、そのあとに質疑応答の時間が設けられました。生活保護に関する法律や専門用語が分からない、というような質問があがりましたが、弁護団によってわかり易く、丁寧に解説がなされました。法律や制度の知識に乏しい人でも裁判に参加してもらえるよう十分な配慮がなされていると思います。また、原告とは別に生活保護の申請を行っている人や支援者の方から現状の生活保護の対応はどうかという話も聞けました。話によれば、新宿区に限らず、生活保護について何も知らないで福祉事務所へ行くと門前払いされるそうです。ただ、現在では待機場所である簡易旅館が満員状態であり、事実上、入居できない状態にあるそうで、アパートにも入れるようですが、時間がかかるそうです。このような現状だと、貧困ビジネスの横行も懸念されます。それを防ぐためにも支援の輪を広げていくことも重要ですが、そもそも簡易旅館に入りきらないほど生活困窮者が増えている社会に対して問うていかなければならないでしょう。


【次回裁判のお知らせ】
9月20日15時から東京地裁にて判決が下される予定です。

本件は生活保護のあり方を問うものであり、「何も特別なことを求めて」はいません。生活保護が必要な人に対して、行政が生活保護の受給を行うという「当たり前のこと」を求めている裁判です。次回は、その裁判の結果が下されます。皆さんも是非裁判所へ足を運んでみて下さい。


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NPO法人POSSE(ポッセ)は、社会人や学生のボランティアが集まり、年間400件以上の労働相談を受け、解決のアドバイスをしているNPO法人です。また、そうした相談 から見えてきた問題について、例年500人・3000人規模の調査を実施しています。こうした活動を通じて、若者自身が社会のあり方にコミットすることを 目指します。

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