法案の内容は30日以内の短期派遣の禁止を行うというもの。しかし、これまでの議論からは、さらに後退している。問題を二点に絞ってみていこう。
①ポジティブリストの定め方
厚生労働省案では、原則として短期派遣は禁止される。しかし、「日雇い派遣が常態で労働者保護に問題がない業務」については、政令で定め、例外的に認める考えを示している。「政令で定める」場合には、国会の審議を行わずに、内容を変更することができる。つまりこの法案が通ったあとに、リストをどんどん付け加えることができるのである。
そこで、引越しの業界団体や製造業の業界団体までもが、「日雇い派遣が常態で労働者保護に問題がない業務」に認定するように同省と交渉中だとのこと。
つまり、この法律が制定されてすぐに、これらがまた解禁され、結局なにもかわらなかったという事態になりかねない。むしろそうなる可能性が極めて高いと言わねばならないだろう。
②事前面接の解禁
次に、これまで許されていなかった、派遣前の労働者を特定すること、が認められるようになる。 そうなると、派遣はいよいよユーザー企業による労働者の「選別」としての機能を強める。「市場のマッチング」という本来予定されていた「建前」はさらに崩れていくことになる。労働者を特定せずに、必要なところに派遣会社の責任で派遣するからこそ、派遣会社は市場をマッチングして雇用を生み出すと考えられたわけだ。短い雇用など、広い労働市場の中で断片的に存在する需要。それに対して、派遣会社が独自に情報を集めて人を配置する。そこに「市場の調整機能」としての派遣会社の存在意義があると言われてきた。
ところが事前に労働者を特定するということになると、派遣先企業が自分の責任で必要な場所に必要な労働者を配置することになる。つまり、派遣会社が中間に立つことによって柔軟な配置が可能になり、雇用が創出される、という建前が完全に失われることになる。派遣会社は自分の意思で、広い労働市場を見渡した上で適切な配置をするのではなく、派遣先に言われるままに労働者をあてがうしかない、という状況を法律が認めるからだ。
この点については法学者たちも、すでに紹介予定派遣など特定の場面で認められてきた事前の労働者の特定に対し、厚生労働省や内閣府の政策を厳しい論調で批判している。法律の建前と中身が完全に矛盾しているからだ。
この改正が行われれば、派遣法は、ただ大企業の雇用責任回避のための制度となっている、とはっきりとわかる内容になるだろう。
③そもそもの問題点
最後に、派遣法の改正を「日雇い」の問題にすること事態がそもそも問題の矮小化である。当初2ヶ月間だった政府の最低期間の案からも、30日とさらに後退している。にもかかわらず、この「日雇い」の規制すら行わずに済む抜け穴を設けているのだ。その上、事前面接を解禁し、これまで以上の規制緩和の実現を図っている。
世間が派遣を問題化したために、あたかもそうした趣旨にそった改正を厚生労働省は提案するとおもいきや、実はより派遣に対する規制を緩和しよう、という内容を出している。
これは派遣法についての「規制強化」を図るものではなく、むしろ「規制緩和」を志向するものだと言えるだろう。
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