<前半:講演>
~「生きづらさ」の突破口×自己責任論の背景×日本型雇用の破壊の完成~
まず雨宮処凛さんはご自身の体験を基に、10~20代の頃は社会の中に居場所が無く「生きづらさ」を感じていたが、労働問題への取り組みがその解決への突破口になることに気づいたと語りました。また取材してきた日雇い労働者が酷使されており、絶望的な状況にあることをお話されました。
次に酒井隆史さんは、「自己責任論」の背景にある<労働>概念の変化を語りました。かつては労働時間の長さと賃金の間に相関関係があったが、今ではどれだけはたらいているか、は賃金や生活と関わりがなくなっているという。そのため働き続ける理由を精神論、さらには占いやスピリチュアリズムで補い、自己責任論へといたる異様な状況が訪れていることを明らかにしました。
そして後藤道夫さんは、労働ビッグバンが正社員を中心とした日本型雇用の破壊の完成であることを指摘。経済がグローバル化し企業が海外へ進出していく中で、競争への生き残りをかけて政界と財界が非正規雇用の増加をいかになりふり構わず意図的に進めてきたかを詳しくまとめてくださいました。
<後半:パネルディスカッション>
~広がる自己責任×世代間の断絶×新たなコミュニケーション~
後半では「NPO法人ニュースタート」の梶屋大輔さん、「ガテン系連帯」の倉吉三佳さん、POSSE代表の今野晴貴を交え、会場からの質問を受けながらパネルディスカッションを行ないました。
最初の質問では若者世代が劣悪な労働環境など社会の側の問題を自分に責任があると思い込まされている、どうすればよいかという質問が出て、雨宮さんがそうした心理になる背景を取材経験をもとに語り、梶屋さんはニート支援の困難を、倉吉さんは派遣労働の現場で広がる諦めやいじめについて報告されました。さらに「ニート(NEET)」も発祥のイギリスでは経済問題のはずが日本では個人的問題としてネガティブなイメージを持たされ、その結果「再チャレンジ」からは若者の側の選択の自由が失われているとの質問も出ました。
さらに話は世代間の断絶などへと進みます。酒井さんは自己責任論の広がりを「マリー・アントワネット現象」と呼び、バブル期に入社した世代を境に労働への感覚が異なってしまい、誰もが自分の若い頃の感覚で考えてしまうと指摘。続けて後藤さんは上の世代が持つ資源やネットワークを若い世代へ移動させ、有効活用することを提案しました。
最後に話題は社会変化とともに訪れる人間観やコミュニケーションの変化に移りました。自己責任論にとらわれて「依存」を恐れることなく、「協働」しながら生きるといったキーワードが挙がり、POSSEの今野は、インターネットなどを駆使した新しいコミュケーションや働き方の変化の中で、若者の力は増大していることを指摘しました。
多彩なパネリストに加えてとても幅広い論点が出され、時間が不足し質問を取りきれなかったことは運営上の不備でした。この場を借りてお詫びいたします。自己責任論に負けることなく、若者を置き去りにしながら進む「再チャレンジ」や「労働ビッグバン」を変えていくにはどうすればいいのか。これからもみなさんとぜひ考えてきたいと思います。シンポジウムへのご意見・ご感想をお待ちしています。
(文責・編集部)
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