2021年4月16日
厚労省「履歴書の様式例の作成について」に関する声明
NPO法人POSSE
(団体URL:http://www.npoposse.jp/)
私たちNPO法人POSSEはLGBTQを含めた人々の労働問題の改善に取り組んでいます。本日4月16日、厚生労働省は私たちの取り組みを受け、「履歴書の様式例の作成について」を公開しました。私たちは、昨年2月末から「履歴書から性別欄を無くそう #なんであるの?」という履歴書から性別欄をなくす社会キャンペーンを展開し、今回はそれを受けての発表です。
◆これまでの取り組み
履歴書に性別欄があることが、性差別やトランスジェンダー差別につながり問題であると私たちは認識し、これまで性別欄削除を求める活動をおこなってきました。
2020年2月 オンライン署名サイトChange.org(チェンジ・ドット・オーグ)上にて署名活動を開始
2020年6月 経産省へ署名提出、会見を行う。
2020年7月 日本規格協会へ署名提出、日本規格協会は経産省からの行政指導をうけて性別欄だけでなく、年齢や写真等の欄も含む様式例を削除
2020年8月 日本最大手の文具メーカーであるコクヨに署名提出。コクヨは後に性別表記のない履歴書の販売を開始。厚労省への要請開始
昨今、公務員試験や高校入試などでは性別欄をなくす動きが全国各地に広まっており、海外では性差別を予防するために履歴書で性別を尋ねることを禁じている国も多くあります。もともと「男だから採用する、女は採用しない」などと性別を採用の判断に用いることは男女雇用機会均等法で禁じられています。性別を尋ねる合理的理由がないのに、日本中の履歴書にはどうして性別欄があるのか、私たちは問題視してきました。
法律上の性別と、現在暮らしている性別が異なるトランスジェンダーの人たちは履歴書の性別欄のせいで半強制的にカミングアウトを強いられ面接で落とされています。トランスジェンダーの約9割が就職活動の際に困難を感じたという調査(2019年にNPO法人「ReBit」が行なったもの)もあります。現在暮らしている性別を書けば、今度は嘘つき呼ばわりされ、内定切りされてしまう事例もあります。性別を理由に内定切りすることは不当なのに、被害者は泣き寝入りを強いられます。性的少数者であることを表す個人情報が回覧され、事実上のアウティング(性的少数者であることを同意なく暴露されること)にもなっています。
以上のような問題意識からはじめた署名活動には、本日までに13000を超える賛同が寄せられています。
◆厚労省発表に対する評価
厚労省の発表した履歴書が性別欄を任意回答にしたことについて、私たちは当事者とともに性差別に戦ってきた取り組みの成果であり「一歩前進」と評価します。今回の発表を受け、各企業は合理的理由なしに求職者に性別を書かせない/性別欄をエントリーシートなどで設けないといった積極的な対応を行い、差別是正を打ち出していくべきと考えます。
その上で、次のような問題が残ることを懸念します
・任意形式であったとしても性別をたずねることで差別の可能性が残ること:本来必要ではない場面にもかかわらず性別を尋ねることを国が許容することで、女性やトランスジェンダーへの差別が継続していくおそれがあること
・未記載時や、性的マイノリティであることを記載した際に不利益が生じるおそれがあること。
・上記のような不安を求職者に抱かせてしまう心理的負担があること
以上のような懸念があるため、私たちは引き続き世界基準の人権規範として性別欄は無くしていくことを求めます。また写真欄や年齢欄など、個人の属性を問うことのない履歴書がスタンダードになるよう継続して取り組みを進めます。
以上