ＮＰＯ法人ＰＯＳＳＥ（ポッセ）　blog

4月27日、POSSEが支援している外国人労働者パスポート取り上げ裁判の進捗報告

2021-05-29 13:05:29

パスポートを会社から取り上げられていた元通訳者のフィリピン人女性が、当時の勤め先である行政書士事務所「アドバンスコンサル」（神奈川県横浜市。代表者：小峰隆広）に自身のパスポート返還を求め、昨年1月に会社を起訴した裁判の第6回目が先月（4月）27日に行われました。本裁判は、外国人労働者の日本初のパスポート返還請求訴訟になります。

●Posseに届いた「Help me」の声
行政書士事務所「アドバンスコンサル」で通訳していたフィリピン人女性のAさんは、2019年5月に入社した際に、「在留資格の変更手続きに必要」と言われて、自身のパスポートや大学の卒業証明書を会社に預けました。しかし、7月に在留資格が更新された後にもそれらは返還されませんでした。

Aさんは会社の労働環境の劣悪さから転職をするため、会社に管理されていたパスポートや卒業証明書などを会社に「返してほしい」と主張しましたが、会社側が返還を明確に拒否したことから、パスポートの返還を求め会社側を起訴し、Aさんは1年半以上たった現在も裁判で会社と闘っています。これに対し会社側は、パスポートの返還拒否を違法ではなかったと主張し続けています。

更に会社はこの問題について、自身のホームページに「悪質外国人や犯罪者集団を支援する団体を撲滅する活動に参加しております。」と掲載し、これまでの記者会見等の行為は、会社の名誉棄損であるとして、本裁判に関わった当事者を起訴し、損害賠償と謝罪広告の掲載を要求しています。また、これまでに何度も裁判の期日を先延ばしにしようとしており、当事者の在留資格の期限が切れるのを待っているかのような態度をとっています。

●本裁判について
前回から4か月半も延期を経て、ようやく開かれることになった今回の裁判では、事務所の代表である小峰氏が意見陳述を行いました。小峰氏は、当事者であるAさんを前に、外国人労働者を「社会正義に反する悪質な存在」との発言を繰り返し、「悪質な外国人労働者から日本社会を守るためのもの」と自らの行為の正当性を強調しました。また、労働者の人権を侵害しているパスポート取り上げに関しては、「日本の治安を守るため」という意義に基づいた行為であると主張しました。

これらの小峰氏の発言は、外国人労働者自体の存在や人権を否定したヘイトスピーチであり、パスポート返却を求める労働者の声をかき消すことで、自らの人権侵害を正当化しようとするものでした。こうした会社の対応は、明らかに外国人労働者の人権を踏みにじっているのにも関わらず、パスポートという重要書類を会社が預かる行為に対して日本では法的な規制がないことを逆手にとり、劣悪な労働環境でも労働者を強制的に働かせることの社会的正当性を主張するという、許されない行為です。

法廷の場では、外国人労働者の存在を否定する発言が野放しにされています。会社のパスポート取り上げという行為とそれを正当化するために外国人労働者の存在自体を否定したヘイトスピーチに対抗し、企業側の責任を裁判所にとどまることなく、社会的に追求していく必要性が明らかになりました。

また、今回の裁判にはPOSSEの学生ボランティアを中心に大学生など多くの若い世代が傍聴に駆けつけました。外国人労働者を身近な存在と感じる若い世代と労働者が連帯することで、本問題の会社側の責任の所在を明らかにし、パスポート取り上げを違法化する動きを社会的に作り上げていくことが重要になります。

●まとめ
会社が外国人労働者のパスポートを保管する行為は、実質的に労働者の転職を妨げ、悪質な労働環境でも強制的に働かせることを可能にします。このような行為は外国人労働者の人権を侵害するにも関わらず、法的な規制がないために実質的に日本社会では「合法」とされています。また、外国人労働者は社会的に声を上げにくい状況にあることから、まだ明るみになっていない多くの被害者が存在している可能性があります。こうした強制労働を可能にする企業の人権侵害を止めるため、パスポート取り上げの違法化の実現に向けて、外国人労働者の権利を社会的に求めていきます。

NPO法人POSSE外国人労働サポートセンター
https://foreignworkersupport.wixsite.com/mysite
supportcenter@npoposse.jp
ボランティア募集サイト

change.orgの署名
パスポートを奪う企業から外国人労働者を守ろう！ ―外国人の身分証の取り上げを禁止するための法規制を求めます―