著者、出版社:本田由紀、内藤朝雄、後藤和智(光文社新書)
ニートという言葉が日本で使われ始めたのは、2004年頃からです。もともとはイギリスで使われ始めましたが、日本では、その使われ方が大きく変わってしまいました。大まかには、「働かず、就学もせず、求職行動もとっていない若者」を指す言葉ですが、日本ではその語義を越えて、差別的なイメージが言葉に貼り付けられ、社会的に広がってしまいます。
本書は、日本における「ニート」という言葉の使われ方が持つ根本的な問題を捉え、冷静に現状を分析し、有効な対策を打ち出すにはどのようにすればよいのか、を示そうとする試みです。
第一部「現実」では、本田由紀氏が「ニート」という言葉でくくられる状況の現実を分析し、その対策を提示しています。「ニート」の中にも、「働きたいけど、具体的に求職行動を取っていない、非求職型(進学・留学準備中や、資格取得準備中のため)」と「そもそも働きたい、と思っていない非希望型」がおり、近年増加しているのは、非求職型であることが示されます。しかし、近年それ以上に増大しているのは、ニートという言葉では捉えられていない層である、「求職型」(現在失業者ではあるが職を求めている)や、「フリーター」です。非求職型の「ニート」と求職型、フリーターは、実はその境界線があいまいなのです。最も重要な問題は、若者の失業率の増加や、非正規雇用にしかつけない現状であるにも関わらず、あいまいな語である「ニート」のみが問題視され、社会的に否定的なイメージを付与されている、ということが示され、そもそも若者の雇用の問題を改善するにはどのような対策を講じればよいかが示されます。
第二部「構造」では、内藤朝雄氏が、ニートという言葉が差別や偏見を表すものとなった社会的な構造を、他の様々な若者に対するバッシングの分析を通して、提示しています。
第三部「言説」では、後藤和智氏が、ニートという言説がどのように使われてきているのか、それがはらむ問題は何か、を分析しています。「ニート」が何故、様々な偏見や差別的な意味を持ってしまったのか、言説の分析を通して明らかにしています。
三人の著者の意見は必ずしも一致していませんが、「ニート」という言葉の持つ根本的な問題点を指摘し、若者の雇用の問題全体に取り組まなければならないことを提示しています。本書は「ニート論」を越えて、そもそも問題は何なのか、それにどう対処すればよいのか、を考える契機となるでしょう。
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