NPO法人POSSE(ポッセ) blog

労働相談の報告(2011年10~12月)

■労働相談の概況
この間の労働相談は、10月23件、11月41件、12月23件と、3ヶ月で合計87件にのぼりました。
相談内容としては、賃金未払いが29件、パワー・ハラスメント(以下、パワハラ)が28件、解雇・退職勧奨に関するものが23件と大半を占めています(1件の相談のうち複数の問題を含む場合は、重複して計上)。
※詳細については別添「2011年10~12月労働相談状況」(PDF形式)を参照


■傾向の分析と今後の活動方針
 今季の相談傾向をみると、パワハラや解雇・退職勧奨といった離職に関する相談が依然として多い一方、賃金未払いの相談が最多となりました。賃金未払いに関する相談においては、労働契約の内容がポイントのひとつになります。
 また、年度の切り替え時期においては、契約を更新したり、新たに契約を取り結ぶにあたって不安やトラブル、相談が多くなる時期でもありますので、
今回は契約に関するトラブルについて取り上げたいと思います。

 賃金未払いに関する相談事例を紹介すると、「時給1000円で契約したにもかかわらず、時給950円として計算されて給与が支払われている」、「月収25万、但し残業代を含むと言われ、いくら分が残業代として計算されているかわからない」等の相談が寄せられています。
また、離職に関するものでも、「面接のときに合意した労働時間以外の時間での就労を求められ、それを拒否したら解雇された」、「面接時には聞いていなかった仕事をさせられ、精神的に追い込まれ働けなくなってしまった」等の相談が寄せられました。

 これらの相談事例で共通して問題となっているのは、契約時に合意したはずの内容と実際の労働条件が異なっているということです。当然のことですが、時給1000円と合意したのであれば、時給1000円として計算して支払わなければなりません。また、所定の時間しか働けないということで合意したのであれば、それを超えての命令には別途合意が必要ですし、それを拒否したことによるって解雇するなどの制裁措置も不当なものといえます。
 つまり、労働契約は双方の合意内容が原則となるのです。(但し、「残業代は支払わない」等の労働基準法の定める最低限の労働条件に反するような合意は、法律に反する部分に限り無効となるので、契約時の合意が絶対というわけではないという点には注意が必要です。)

 これらのケースにおいて、実際に差額の賃金を(契約した額どおりに)支払わせる、使用者側の命令が契約で合意した範囲を逸脱するものであると主張するためには、そもそも合意した内容が何であったかを証明する必要があります。そして、合意内容を証明するには証拠の有無が重要な要素となります。

 証拠を残すという観点について、パワー・ハラスメントや退職強要等の相談につおいては、加害者や上司の発言をICレコーダーで証拠として残すということを実践しているという方は少なからず存在します。しかしながら、契約時において、合意の内容(雇用条件だけでなく、書面雇をとりかわしているか)やその場の状況(契約内容につきしっかり説明を受けているか、有無を言わさずサインさせられるような状況でなかったか)について証拠を残しているケースはほとんどありません。(そもそも口頭でのやり取りのみで雇用契約書や労働条件通知書が示されていない、面接時に口頭で合意し働き始めた後に作成した契約書の内容が事前の合意と異なっている、説明を受けないまま急がされてサインだけ求められる等のケースがあります。)

 しかし、上記の相談事例のようなトラブルを解決するためには、契約内容に関する証拠の保全し、契約段階からトラブルに備える防衛策を取っておくことが大切です。具体的には、第一に、契約を口頭でのやり取りだけで済まさずに、しっかりと書面で交わすことが重要です。第二に、ICレコーダーで契約時のやり取りやその他の状況を音声データで保存しておくことが有効です。これにより、契約書の内容がよくわからないまま、せかされたり騙されたりすることによって、不利な内容のものにサインをさせられてしまうといったケースにも対応することができます。
 また、その他にも契約時に注意すべき点等については、以前作成いたしました「就職活動のための法律ガイド」(http://www.npoposse.jp/lawguide/guide.html)をご参照ください。

 証拠を残すことの重要性については以前から様々な場面で書いている内容ですが、契約時の合意内容と実態としての労働条件が異なるということから派生する様々な問題に対応していくためにも、契約段階からの防衛策が重要であるといえます。NPO法人POSSE(ポッセ)では、労働法セミナーや労働法教育等の取り組みを通じて、今後もこれらの重要性を広めていきたいと思います。


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NPO法人POSSE(ポッセ)は、社会人や学生のボランティアが集まり、年間400件以上の労働相談を受け、解決のアドバイスをしているNPO法人です。また、そうした相談 から見えてきた問題について、例年500人・3000人規模の調査を実施しています。こうした活動を通じて、若者自身が社会のあり方にコミットすることを 目指します。

なお、NPO法人POSSE(ポッセ)では、調査活動や労働相談、セミナーの企画・運営など、キャンペーンを共に推進していくボランティアスタッフを募集しています。自分の興 味に合わせて能力を発揮できます。また、東日本大震災における被災地支援・復興支援ボランティアも募集致します。今回の震災復興に関心を持ち、取り組んで くださる方のご応募をお待ちしています。少しでも興味のある方は、下記の連絡先までご一報下さい。
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