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NPO法人POSSE(ポッセ) blog

青砥恭『ドキュメント高校中退―いま、貧困が生まれる場所』書評


4月30日のセミナーで講演していただく青砥さんの著書を紹介する。

毎年10万人近い高校生が中退しているが、本書はそういった若者たち1人ひとりの具体的な実態を数多く紹介しているところに特徴がある。元高校教師であった著者が実際に会って話を聞いた内容が伝えられることで、社会では隠れている若者の悲しみ、苦しみ、助けを求める声が明らかになっている。それと共にこうした若者を生み出し排除する、社会構造的な問題 が示されている点に、本書の意義がある。

■高校を中退するのは本人の無気力が原因?
なぜ彼らは中退したのだろうか?本書ではその原因分析も詳細に行われている。文部科学省の統計によれば、中退理由のほとんどは「学業不振、学習意欲がない」「学校生活への不適応」といったものであるが、その内実は社会で言われているような本人のなまけや無気力、気の短さ、努力の足りなさなどではない。多くの高校中退者の事例に共通する背景は「貧困」である。彼らは幼いころから貧しい家庭に育ち、食事や入浴、睡眠などの規則正しい生活習慣が身につけられる環境にない。さらにまともに勉強する機会などもなく、とりあえず高卒の資格は必要だからひとまず入れる高校に入学してやめていくのである。そのため、高校中退者は最も学力の低い「底辺校」に集中している。小学2年生頃からすでに勉強についていけなかったような生徒が、中学も不登校で成績がついていないような状態でも入学できるといった、入試結果がほとんど関係ない高校 にとりあえず入学したところで、勉強を継続していくのが困難なことは容易に想像できるだろう。

■貧困と低学力、低学力と高校中退の連関
高校中退と貧困との相関関係は統計データによっても示されている。高校を入試の平均点によって5段階 に分けてみると、底辺校のグループに授業料免除を受けている貧困世帯が集中しており、中退者も圧倒的に多い。所得と教育の格差は最近よくいわれていることであるが、それをはっきりと示すものである。底辺校の生徒は母子家庭・父子家庭が多く、その親の職業も技能職(運転手や大工)や不安定なアルバイトが多いため収入が少ない。逆に進学校(最も学力が高い)の生徒は持ち家があり、父親が会社員や公務員、教師といった職業についている割合が高くなっている。 つまり、生まれた時から家庭環境に歴然とした格差が存在し、その影響が子どもの教育に強く現れているのである。

■貧困の連鎖
貧困家庭から生まれる教育問題は授業料や給食費が払えない、学習塾に通わせられないといったことにとどまらない。収入が少ないために親が夜も働いていて、幼いころに基本的な生活習慣が身につけられない、家庭内で十分な会話がなされない。貧困からくるストレスや孤立感から親が子供に虐待やネグレクトをすることも少なくない。そして子どもは家庭に居場所をなくす。精神的な発達も阻害される。居場所をなくした子どもは仲間を求めて同じように学習から排除された不良集団に入る、あるいは早期の性行動への依存につながる。10代での若年出産をすれば、余計に生活が苦しくなり貧困が再生産される。親が貧困で家庭の人的資源が不足していれば、それが生活環境に様々な悪影響を与え、高校中退者を生み出し、貧困の世代間連鎖が生まれる。このように問題は相互につながっているのである。

■高校中退者の行く先
高校中退者の若者に仕事はない。むしろ高校生の方がアルバイトの募集は多い。高校中退となると、求人票の時点で募集の要件を満たさないことが多く、そうなると日雇いや水商売といった不安定な仕事に就くしかない。アルバイトをするにしても幼少期に虐待を受けたり家族との人間関係を上手く作れなかった若者は、仕事が長続きしないこともある。仕事を見つけることも、安定的に続けることも困難なのである。安定した正社員になる道は閉ざされているといっても過言ではない。ここに貧困家庭で育った若者の貧困が再生産されていくのである。

■子どもを貧困から守るために
著者はこの現状を変えていくために高校の義務教育化や高校の教育内容の見直し、地域の児童相談所、ケースワーカー、保健師などと協力した子どものサポートを提言している。現在の教育制度や貧困家庭を救うセーフティーネットの限界は、本書だけでなく他の書籍・メディアでも示されている通りである。NPO法人POSSE(ポッセ)としても日々の生活相談から貧困状態に陥っている人々をサポートする役割をしっかりと担っていかなければならない。

本書は単なる「貧困と教育格差」という格差問題を述べるだけのものではなく、多くの子どもへのインタビューから得られた実態から問題の原因や背景となる構造を分析し、データによって示している点で優れていると言える。第1章はルポ形式で読みやすく、第2章で分析とまとめが書いてあり、貧困と教育問題のつながりを知るには大変参考になる1冊である。

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『ドキュメント高校中退』著者・青砥恭さんをお招きして、セミナーを開催します!


子どもの貧困:高校中退、低学力、不登校
その実態と支援のあり方


     日時 430日(月・祝) 1500分~(開場13時30分)
     場所 北沢タウンホール11階 研修室4
          (世田谷区北沢 2 - 8 - 1 8 http://kitazawatownhall.jp/map.html)
タイムテーブル 13:30 開場
            15:00 開会のあいさつ、講師紹介
            15:05 青砥恭さんご講演
            16:05 休憩
            16:15 質疑応答
            16:45 閉会のあいさつ、ボランティア募集のご案内
            16:50 閉会
            ※セミナー開始前に会場でボランティア募集説明会を行います(詳細は
            http://bit.ly/I13Grhを参照ください)
    参加費 無料
     予約 不要


講師 青砥恭(あおと・やすし)
1948年生まれ。20年以上にわたり埼玉県立高校教諭として教育現場に立ち、現在は大学講師を務める。自身の教師としての経験、高校生を対象としたアンケート調査、100人以上の高校中退者へのヒアリングなどから「子ども・若者と貧困」を独自の視点で研究している。さいたま市内の生活保護受給世帯の中・高校生を対象とした居場所づくりと学習支援事業、居場所のない若者の居場所づくり、「たまり場」「学び場」を提供するNPO法人さいたまユースサポートネットの代表。主著に『ドキュメント高校中退』(筑摩書房、2009年)、共著に『日の丸・君が代と子どもたち』(岩波書店、2000年)。


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NPO法人POSSE(ポッセ)は、社会人や学生のボランティアが集まり、年間400件以上の労働相談を受け、解決のアドバイスをしているNPO法人です。また、そうした相談 から見えてきた問題について、例年500人・3000人規模の調査を実施しています。こうした活動を通じて、若者自身が社会のあり方にコミットすることを 目指します。

なお、NPO法人POSSE(ポッセ)では、調査活動や労働相談、セミナーの企画・運営など、キャンペーンを共に推進していくボランティアスタッフを募集しています。自分の興 味に合わせて能力を発揮できます。また、東日本大震災における被災地支援・復興支援ボランティアも募集致します。今回の震災復興に関心を持ち、取り組んで くださる方のご応募をお待ちしています。少しでも興味のある方は、下記の連絡先までご一報下さい。
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NPO法人POSSE(ポッセ)
代表:今野 晴貴(こんの はるき)
事務局長:川村 遼平(かわむら りょうへい)
所在地:東京都世田谷区北沢4-17-15ローゼンハイム下北沢201号
TEL:03-6699-9359
FAX:03-6699-9374
E-mail:info@npoposse.jp
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