2016年12月『POSSE』vol.33を発行しました。
『POSSE』vol.33の特集テーマは、「働き方改革「技術ユートピアの幻想」」です。政府の「働き方改革」でもAIの導入に関する論点があがるなど、AIが労働や社会を変容させる可能性が現実味を帯びてきました。今回の特集では、技術の発展によってどのような社会がもたらされるのかについて、多方面にわたる視点から論じています。
人工知能の発達というと、まず浮かんでくるのが「シンギュラリティ(技術的特異点)」という単語です。これは、人工知能が人間の知性を完全に超えた「超知能」となるポイントを意味します。ただし、シンギュラリティの実現には相当の年月を費やすと予想されており、それまでの過程で変容していく社会のあり方が重要となるでしょう。IT起業家のドミニク・チェンさんとPOSSE代表・今野晴貴による対談「AIを人間にとって肯定的なものとする条件とは何か」では、これから進化していくAIが労務管理などさまざまな場面で応用されるイメージについて論じています。
とくに労働のあり方を変化させると考えられているのが、特化型AIの導入です。これは、ひととおりの知的活動を人間並みにこなすAIで、2030年ごろに実用化されるとの見通しがたっています。では、特化型AIは労働にどのような変化をもたらすのでしょうか。「覆面座談会 AIで、日本の労働、社会はどう変わるのか」は、AIが労働にもたらすインパクトを含め、公共政策や社会政策についてもAIの影響を徹底的に論じる、力の入った特集記事となっています。
AI化がもたらしうる大きなリスクのひとつとして考えられるのが、「技術的失業」という問題です。これを一言でいえば、「人間が担う仕事がAIに代替されてゆき、膨大な失業者が生まれる」ということです。とはいえ、これだけではさまざまな疑問が残るでしょう。具体的にどのような職種がAIに代替され、どのような職種は「生き残る」のか。あるいは、過酷な長時間労働を改善する特効薬としてAIは期待できるのか。また、政府の「働き方改革」でも、AIによる労働の代替やその後の制度設計が主要な問題として取り上げられています。今野晴貴「AIと労働についての検討」では、政府の打ち出した方針について論じながら、ライフスタイルの変化から労働運動のあり方まで、「AIと労働」に関するさまざまな疑問に答えています。
AIが全面化したときの社会の変化も気になるところです。接客業にAIが導入されれば、労働者の代替というだけでなく、店舗や施設の運営のあり方も変わってきます。介護施設では実際にロボットを利用した介護サービスの提供も始まっています。はたしてこのような変化は、よりよいサービスの提供につながるのでしょうか。また、人間の労働者が提供するサービスとの違いは具体的にどういった点にあらわれるのでしょうか。これらの疑問に答えるべく介護ロボットの最先端を取材した様子は、「ルポ 介護ロボットの登場は介護労働にどのような変化をもたらすか」でお伝えしています。
技術的失業との関連で、社会保障の問題も出てきます。失業者の生活を保障する制度設計については、現在もさまざまな議論がなされています。そのなかでもとくにAI化の文脈で論じられているのが、全国民に一定額の現金を給付する「ベーシックインカム(BI)」という制度です。AIに対応したBIが「技術ユートピア」をもたらすという主張もある一方で、社会保障のあり方としてBIを批判する意見もあります。明治大学准教授・飯田泰之先生へのインタビュー「AIのもたらす技術的失業の大変動にどう備えるのか」では、技術的失業が生まれた後の制度設計として、BI導入論も含め具体的な方策が論じられています。
以上がAI化をめぐる主要な論点です。IT技術から経済学・社会学まで多方面の専門家への取材により、さまざまな切り口からの非常に充実した議論が展開されておりますので、興味のある方はぜひご一読ください。
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