グッドウィルは労働者の安全管理のためとして、任意に「データ装備費」名目で一日200円分派遣労働者の賃金から天引きを行っていた。これについて違法性が指摘されてきた。
今年3月にグッドウィルユニオンが結成され、データ装備費の変換交渉を始めた。その後5月1日にデータ装備費の徴収をやめ、返還すると回答した。ところが5月末には理由を明確にしないまま「返還しない」との姿勢になった。
グッドウィルの対応は二転三転したが、明らかに合理性を欠く「徴収」に行政まで動き出し、ついに観念したようだ。
今回の問題を労組側は「賃金未払い」と位置づけ、徴収された分の返還請求をしている。
その法的構図についてみていこう。
労働基準法は賃金について、全額を支払わなければならないことを明記している。だから、一方的な天引きなど原則として許されないのだ。法的に源泉徴収が許される場合は二つある。
①法律で定められているもの→税金の徴収など
②労働者の代表との協定(労使協定)がある場合で、かつ対象者の個別の同意がある→社内の福利厚生費などの徴収
今回のグッドウィルの天引きは「労働者の福祉」に関する天引きだから、それが合法的であるためには、②の条件を満たさなければならないことになる。
だが、まず「労使協定」については、「過半数の労働者の代表」を選出することが果たしてスポット派遣の場合で可能なのか? また、今回の書面の効力はあるのか。次に、「個別の同意」があったのか?
この双方とも満たされていたとはとても思えない。まず労使協定のための代表選出の手続きが極めて怪しい。さらに、「個別の同意」をといっているが、私自身グッドウィルで働いた経験があるが、「同意」した覚えは一切ない。
このように、「データ装備費」は労働基準法に違反しているので返還請求が生じるのは当然といえるだろう。
ところでグッドウィルは二年分の不払い賃金を返還するという。これは賃金債権の時効が2年間だということを参考にしているそうだ。
だが、今回の問題は単に「賃金不払い」というだけの問題なのだろうか。
最近さらに衝撃的な事実がわかった。グッドウィルは保険名目で天引きを行っていたにもかかわらず、重症事故に逢った労働者に保険金を支払っていなかったのだ。
つまり、今回の事件は「賃金不払い」の問題を超えて、詐欺、横領の問題にまで及ぶということだ。
グッドウィル労組もすでに「不当利得」での返還請求訴訟の構えを示している。賃金債権は時効2年だが、不当利得の場合時効が10年となるからだ。
思うに、現在の法律では確かに労基法上の「賃金不払い」なのか、詐欺や横領に基づく「不当利得」なのかで時効に違いがでる。そのためそちらでの立論を行うというのは理にかなっている。
だが、そもそも昨今横行している「賃金不払い」自体が極めて犯罪性の高いものだということを改めて思い起こさなければならないのではないだろうか。
先日の東京都労働局の発表では、賃金不払いの相談件数が昨年度で1万件を超え、急激な増加傾向を見せているという。
人を働かせたのに、賃金を勝手に減らしたり、払わなかったりすることは詐欺や横領とまったく同質の犯罪なのだ。いや、直接に個人の生活を脅かしているだけに、詐欺や横領よりも社会的な罪は重いともいえる。
当然刑事的にも追及されるべきだ。
今回のグッドウィル事件を通じ、賃金のピンハネは犯罪だということが改めて社会に投げかけられている。
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爺
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POCO
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