今春卒業予定で就職を希望する大学生の2月1日時点の内定率は80%で、同様に高校生の1月末時点の内定率は81.1%と発表されました。卒業を間近に控えながら、5人に1人が就職先を確保できていません。加えて、非正規社員の割合は増加し続けており、15歳から24歳の若者ではほぼ半数が非正規という状況です。
このように新卒一括採用や終身雇用を特徴とした「日本型雇用」が崩壊した状況のもとで、今までは〈職業的意義〉を持たなくてもよしとされてきた、従来の教育のあり方が問われています。
本書は、日本で長く見失われてきた、〈教育の職業的意義〉の回復を多くの人に訴え、教育を通して日本社会の再編という大きな問題に取り組むという目的で書かれています。
では、なぜ教育の職業的意義が必要とされているのでしょうか?
本書では、様々なデータを基に日本の仕事の世界が正社員・非正社員を問わず過酷化している実態を明らかにしています。そして、そのような状況にも関わらず、「労働者の権利についての知識という面でも、職業能力形成という面でも、働く者たちは自らの深刻な事態を改善するための手段を手にしていない」と指摘しています。
状況を改善するためには、働き方そのものを法や規制を通じて改善していくことや、社会保障を拡充していくことが必要であることを前提としたうえで、「働く者たちが自分たちの身を守るためのさまざまな手段を彼らに与え、積極的に声をあげるとともに、仕事に関するすぐれた力を発揮できるようにしてゆくことが不可欠である」としています。そして、教育という社会領域もこのような課題に対して正面から取り組むことが求められています。本書では〈教育の職業的意義〉を、綻びがあらわになりつつある日本社会を立て直すための、「重要な部品のひとつ」として位置付け、議論を展開しています。
〈生きる力〉や〈人間力〉といった抽象的で曖昧な理念を掲げる〈キャリア教育〉に対して、〈教育の職業的意義〉は、働いていくなかで、自分自身を守るために必要不可欠な労働に関する基本的な知識を身につける〈抵抗〉の側面と、個々の職業分野に即した知識やスキルを身につける〈適応〉の両側面によって定義されます。そして、しっかりとした専門性をもつと同時に、隣接する他分野への移動の可能性をもった、〈柔軟な専門性〉が提起されます。
もちろん、本書でも何度も述べられているように、教育を変えていくだけで状況がよくなるわけではありません。労働市場や社会福祉の改善は前提として必要です。本書では、それらを総合的に分析し、〈教育の職業的意義〉を新たな日本社会を考えていくための「重要なピース」として位置付けています。そのため、若者から、教育関係者、社会問題に興味がある人など、多くの人に読んでもらいたい良書です。
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