先月28日、日本のサービス産業界に激震が走った。グローバル資本の代表格であり、ファーストフード業界最大手の「日本マクドナルド」が、管理職扱いで雇っていた店長に対する不払い残業代支払いの判決を裁判所から受けたのだ。
訴えたのは、マクドナルドの店長(熊谷支店)で、99年に店長昇格後、残業代が支払われなくなった。バイトの穴埋めをするなど月80時間の残業もたたり、脳梗塞で倒れることもあった。
サービス産業では、これまでも店長は管理監督者扱いでどれだけ残業しても、残業代が支払われず、そのため過労で倒れる人が多く社会問題化していた。そもそも、管理監督者とは、「経営者と一体的立場で労働時間の枠を超えてもやむを得ない重要な権限を持ち、賃金が優遇されている者」と定義されている(今回の判決でも)。管理職につけば、残業代は支払われない。労働時間の自由裁量があるからだ。ただ、多くのサービス産業業界では、肩書きは店長だが、実質、経営者と一体的な権限もなく、労働内容は、自分の下で働いている部下と変わらない、いやそれ以上働いているという場合が多かった。
今回の判決でも、原告が「管理監督者」にあたるかが争点となった。毎日新聞によると、裁判長は、「同社店長について、店舗責任者としてアルバイトの採用や会社のマニュアルに基づく運営など店舗内の権限を持つにとどまり、経営者と一体的立場とは言えないと認定。さらに、品質・売り上げ管理などに加え、調理や接客なども行うため、労働時間の自由裁量性は認められず、部下の年収を下回るケースもあるなど待遇が十分とは言い難い」と指摘した。そして、日本マクドナルドに対して、未払い残業代や慰謝料など計約755万円の支払いを命じたのだ。
業界でまん延している店長の過酷な労働条件に規制をかけていく上で、今回の判決は重要な意義をもっている。これまでは肩書きだけで、働く人の法規制をかいくぐれるような実態があったが、この判決で、労働実態が重要性を帯び、肩書きと労働内容の矛盾が指摘された。今後は、その実質的な労働内容と管理監督者の定義を照らし合わせて法規制の対象範囲を判断していくことになるであろう。そうなれば、今の飲食業界を中心に、大きな労働条件の見直しが迫られるのは必須だ。(↓写真は毎日新聞より)
特に、最近では、飲食業界の人材不足も深刻化し、高齢者や外国人労働者を大量に雇用している。安さとスピードが重視される中、働く人の環境が犠牲にされてきた。
ちなみに、マクドナルドは、東京地裁の判決後も「残業代を支払う考えはない」として控訴している。朝日新聞の取材にも「店長は今でも管理職で、自分の判断で残業時間を管理できるから「みなし労働」にあたらない」と語っている。徹底的にたたかうつもりだろう。というのも、この訴訟で負ければ、これまでマクドナルドがタダでこき使えた店長に、大量に人件費をさかなければならないからだ。ただ、その一方で、セブンーイレブンの対応は、早かった。マクドナルドの件をうけ、先手をうち、管理職をしている店長に3月から残業代を支払う方針を打ち出したのだ(管理職手当てを減額)。さらに、残業時間45時間(月平均)を30時間に減らす目標を設定した。セブン-イレブン側は、「制度変更は一年前から検討してきた。残業代を払うことで店長はメリハリのある働き方ができるし、会社も残業時間の把握を通じ、店長の働き方も分かるようになる」と説明している。つまり、制度変更したのは、ワーク・ライフ・バランスを進めるためで、訴訟の影響ではないと言いたいらしい。
単に、残業代を支払って終わりでは意味はない。店長を含めサービス産業全体がはらんでいる、働く人の長時間労働や過労の問題を規制していく取り組みが必要である。今後、すでに店長に残業代を支払っているローソンやファミリーマート、セブン-イレブン、そしてマクドナルド(まずは払ってから)には、単に「残業代支払うから、もう文句は言うな。長時間労働も我慢しろ」ではなく、働く人の労働環境をしっかりと整備することが、求められるであろうし、消費者側からも積極的にそうした対応を促していかなければならない。
<店長への残業代支払っていますか?>
○YES
・ケンタッキー(06年人事制度により、店長を管理職から外す)
・ドトール・コーヒー
・ファミリーマート
・吉野家
・ローソン(店長=非管理職)
○NO→YESへ
・セブン・イレブン(ワーク・ライフ・バランスのため?)
○NO
・すかいらーく
・マクドナルド
・モスフードサービス
・ユニクロ(独自に、過剰労働を防止する措置を取っている?)
・ロッテリア(「今回の訴訟結果を見守る」とのこと)
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ぴっける
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Saya
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