ここ数年、就職失敗を理由にした若者の自殺が増加しています。就職失敗が原因で自殺した30歳未満の若者は、警察庁の調査によれば07年に60人、08年に91人、09年に130人、10年に159人、11年に150人となっています。
ただし、これは遺書や遺族からの聞き取りをもとにした、就活の失敗が動機と見られる自殺数の調査です。この中には自殺未遂は含まれていません。少なくとも分かっているだけでこの数ということです
就活うつの一端を明らかにするものの一つに、POSSEが2011年に学生634名に対して行ったアンケート調査があります。この調査では就活生の7人に1人がうつ状態であることが判明しました。うつ病の診断に利用される基準「ICD-10」を参考にチェック項目を設け、該当数でうつ症状の重さを評価したところ、軽症・中程度・重症を合わせて14.4%が「就活うつ」状態にありました。
就活における不安の具体的な内容としては、「内定が決まらないのではないか?」、「内定が決まっても取り消されるのではないか?」、「希望している企業や職に就けないのではないか?」、「職が決まらなければ非正規になったり、不安定な収入で生活せざるを得ないのではないか?」など、就活を控えた学生からは経済的な不安が多く聞かれました。
関西大学の森岡孝二教授が言うように、失業しても社会保障がない日本では、正社員の内定をとれるかどうかに生活の安定や社会的承認がかかっています。何としても内定を得なければならないと学生が駆り立てられるのはそのためでしょう。その様子は同調査の「非正規でも働く理由」や「非正規では働きたくないと考える理由」にもよく現れています。
一方、就活を経た学生の声からは不安の質的な変化が見受けられます。「内定をもらうことに必死になりすぎて、本当にやりたいことが何なのかわからなくなった」、「私はどんな人間なのか、自分自身がわからなくなるときがありました。本当にこの仕事がしたいのか、自信をなくしました」など、不透明な採用基準に翻弄されて「自己否定」を繰り返す様子が伺えます。
以上をまとめると、社会保障の不備と、ブラックな働き方を求める企業の人事がその背景にあると言えるでしょう。ブラック企業の要求は時に過労死を引き起こすほどに理不尽です。就活自殺に現れているのは若者の「甘え」ではなく、就職して生活を安定させることもできないにもかかわらず、そうした異常な働き方を選ばざるを得ない社会の歪みなのではないでしょうか。その歪みを正すことこそが、就活自殺への一番の処方箋になるはずです。
(大学2年生 ボランティア1年目)
(参考文献)
森岡孝二著 『就職とは何か』 岩波新書 2011
児美川孝一郎編 『これが論点! 就職問題』 日本図書センター 2012
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