昭和の想い出ーその6
『君の名は』
※クロと一緒に何を見ているんですかね?好きな写真の一枚です。
チコとクロ、母子が並んでいる姿を見ることができなくなってから、どれくらいの月日が流れたのでしょうか
※たぶん中学の入学式の日の写真だと思います。
チコとクロ
中学生になっていた僕は、日常的にしていたケガも、随分としなくなっていました。
チコが旅立ってから、夜に遠吠えをするクロの姿は切ないものがありました。
隣で感じられていた温もりが、ある日突然なくなってしまったのですから切ないですよね。
家で生まれたからかクロは気立てが良くて優しい犬でした。
クロが小さい頃から、チコはケンカの仕方を教えていたりしたのは、もしかしたらクロと長くは一緒に居られないことを感じていたのかもしれません。
息子にケンカの仕方を教えてはいましたが、チコはケンカが弱い犬でした。
猫に返り討ちにあっていたこともあったようでした。笑
チコはちょっと気が小さい所があったのですが、クロは真逆でとても大らかな性格をしていました。
そしてチコがケンカを教えたとは思えないほどケンカが強い犬でした。
自分からケンカを売ったことはないのですが、売られたケンカを買って無敗でした。
自分より大きな犬にも敗けたことはありませんでした。
クロはいつも嬉しそうに、顔とかいろんなところをペロペロと舐めてくるのですが、父が水虫の足を舐めさせようとしたときだけは、嫌そうにしていました。
それでもしょうがなく、あきらめたように舐めてあげていました。
何でも、クロに舐めてもらうと1シーズンは水虫の発症を抑えさせられたそうです。
僕も、たまに擦り傷とか舐めてもらっていましたが、自分で舐めるより治りが早かったです。
ケガをして、一番治りが遅いのは“赤チン”を塗ったときで、次が自分で舐めたとき、クロに舐めてもらうのが一番治りが早かったんですよ、ほんとうに。
クロとは一緒に成長しているような気がしていましたし、友達のような感覚。今でもその気持ちは変わっていません。
縁側で横になってテレビを見ていると、クロが縁側に上がってきて僕の足元を枕にして寝ていた光景が僕は好きでした。
チコが旅立ってから、どれくらの時間が流れたのでしょうか・・・。
君の名は
中学何年生のころか覚えていないんですけど、僕の交通事故キッカケで階段をつけてくれた“下高井戸八幡神社”のお祭りの日の出来事です。
お祭りから帰ってみると、車庫に見慣れない子犬の姿がありました。
『おや?』
『君の名は?』
※家にきてしばらく経った頃のベス
その犬は、とても小さくて生後間もない感じでした。
毛がふさふさとしていて、誰かが“サルみたい”って言ってました。
何でもお祭りの人通りの中で、家の前をずっとウロウロしていたのだそうです。
まだ生まれて数週間程度に見えたその子犬を放置して、人に踏んずけられたり車に轢かれでもしたら可哀想だからと、とりあえず家に保護したのだそうです。
家は、八幡神社への通り道になっていたので、お祭りの日はかなりの人が往来するのです。
その犬は雌犬だったこともあってか、それか淋しがってたところに来てくれた仲間のような感覚だったのか分かりませんが、クロはとにかく優しく接していました。
自分のごはんも、その小さな子犬に分け与えているようでした。
※ベスに食べられて空になった自分の鍋を見つめるクロ
その名はベス
お祭りも終わって暫くして、家族で話し合いました。
あんな小さな子犬だし、飼い主だった人はさぞかし心配しているだろうと、近所の人とかに見覚えがないか聞いて回りましたが飼い主は見つからず。
『子犬預かってます』と、貼り紙を作って呼びかけもしましたが、飼い主らしき人は一向に現れず・・・。
『何で首輪していなかったんだろう?』家族の誰かが言いました。
そうです、その子犬は首輪をしていなかったんです。
どれだけ探しても飼い主が見つからなかったので、“飼い主が見つかるまで家で育てよう”ということになりました。
とりあえずでも家で育てるなら、と『ベス』という名前をつけました。
結局その後、家に居つくことになるのですが、ある程度時間が経った頃に『似たような犬を探している家がある』という情報が届いて、母親と兄が連れていったのでした。
僕は、『もしかしたら、ベスとはもう会えないのか』と少し寂しい気持ちになりましたが、ほどなくして母親と兄がベスを連れて帰ってきました。
どうやら犬違いだったようです。
※同居人(犬)がきて嬉しそうなクロとベス
ベスはちょっと不思議な犬でした。
犬らしくない犬、というのか家の人は“宇宙犬”て言っていました。
“自分のこと人間だと思っているんじゃないの?”と父が言っていましたが、よく二本足で立ってました。
クロも人懐っこくて愛嬌たっぷりの犬でしたが、ベスは自己アピールもハンパない犬でした。
クロがベスに対して甘やかすもんだから、ベスの態度はどんどん増長していきました。
といっても、クロだけにですけどね。クロが良いならそれで良いけど...なんて思って見ていましたね。
それぞれの鍋に餌を入れると、ベスは先ずクロの鍋から食べ始めるんですね。姉はよく怒っていました。
でも、クロとベスは何だかんだ仲良くやっていましたし、クロも嬉しそうだったので良かったのかな??と思います。
後から、クロにごはんあげたりして。
※なぜかよく二本足で立っていたベス
ベスは人間に媚びるのが上手というか...かわいいと思わないのは、僕の姉くらいだったんじゃないでしょうか。笑
家の前を通る小学生たちからは“チョコ”と“クリーム”って呼ばれて可愛がられていたみたいです。
ベスは僕が家に帰ると、一度挨拶を済ませると、その後まわりにある何かを口で噛んで持ってくるんですね。
いつもはたいてい車庫にある布切れとか、毛布とかを噛んで持ってくるんですけど
ある日、僕が帰った時に、僕に寄ってきて挨拶を済ませたあとにベスが後ろを振り向いてキョロキョロとし始めました。
その日車庫には何もありませんでした。
ベスはしばらく考えています。
僕は、どうするんだろう?と様子を窺っていました。
その瞬間ベスは、“まさか!?” の行動にでます!
庭先に行って、自分のフンを口に咥えて持ってきたのです、それも嬉しそうな顔で。
さすがに僕も、そのときばかりは逃げるようにして玄関の扉を閉じたのでした。
※あくびをするクロと宇宙犬ベスと兄
大切な想い出
その後、クロは僕が22歳の時に旅立っていきました。
旅立つ前の日の晩に、弱っていたクロに話しかけたときに、力なく『クゥ~ン、クゥ~ン』とないた声が、僕が聴いたクロの最期の声でした。
クロとの出会いに感謝していますし、今でも僕にとっての友達のひとりです。
ベスは、クロが旅立ってから一人(犬)になるのですが、暫くしてまたもやひょんなことからベスに同居人が現れます。
父が会社の近くで信号待ちをしていたところ、見知らぬ犬が付いてきてしまったそうです。
詳細は知りませんが、“捨てられた飼い犬”だと判断した父は、家に連れってベスと一緒に育てました。
明らかな飼い犬なのに首輪を外されていたとか、少し怯えているようだったとか、そんな理由だったような気がしますが理由は覚えていません。
その犬はそこそこの年齢で室内で飼われていたらしく、当初は鳴くこともありませんでした。
散歩に連れて行っても、最初は痛々しくアスファルトを歩いていましたが徐々に慣れていきました。
その犬はケリーと名付けられました。シープドッグでした。
最初に飼った犬がチコで、その子供がクロ、そしてお祭りの日に保護してそのまま居ついたベス、父についてきた犬ケリーと、妙な縁で家に住みついた犬は4匹です。
血縁はチコとクロだけでしたが、4匹の犬たちには縁あって出会えて良かったです。
やがてケリーが旅立ち、最後にベスが旅立って、実家から犬が居なくなりました。
この写真から、何となくわかりません?偉そうなベスに従うクロの構図。
クロはとにかく、色んな意味で“男らしい犬”で、ベスは“女らしい犬”だったのかもしれません。
昭和から始まった4匹の犬たちとの想い出は、平成で幕を閉じました。
チコ、クロ、ベス、ケリー、大切な想い出をありがとう!!
最期までお読みいただきありがとうございました。
あなたにとって、素敵で幸せな日常でありますように願いを篭めて