さんぜ通信

合掌の郷・倫勝寺のブログです。行事の案内やお寺の折々の風光をつづっていきます。 

ご先祖様を迷子にしないために

2017-11-21 12:39:44 | お坊さんのお話

 

先日アップした「八柱でお墓の将来について少し考えてみた」に少し手を加えて年末発送の「合掌だより」に掲載することにしました。

お正月にむけての冊子ですので、あまりおめでたくない話もどうかと思ったのですが・・

「門松は冥土の旅の一里塚めでたくもありめでたくもなし」という一休さん?の狂歌があるくらいですから、

正月のご家族みんなが集まる時こそ、供養のあり方についてお墓についての話のネタにしてもらえたらと思います。

もし不安があれば、その不安を不安のままにしておくのではなく、みんなで話し合えば心やいろんなところが軽くなります。

お墓や葬儀の話はデリケートな問題でもありますが、話すきっかけがあれば意外と皆さん、いろんな意見を持っていたりするものです。

長幼の境を外して耳を傾けてみるのも、よい歳迎えになるかもしれません。

※写真は本文とは関係ありません。先日、保田の観音寺の十夜の際に、昌龍寺で写したものです。

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『ご先祖様を迷子にしないために』

先日、納骨の供養があり松戸の八柱霊園に出かけてきました。

倫勝寺はもともと江戸川区にあったこともあり、東京の古いお檀家さんの中には八柱にお墓を持つ方が結構多いのです。

八柱は古い霊園なので大きな立派なお墓が多いのですが、最近はあちこちに打ち捨てられたような、手入れされていないお墓が増えてきました。

中には植えた木が繁茂しすぎて、まるで森のようになっているところもあります。

草木をかき分けて奥を覗き込まなければ、そこがお墓ということがわからないような場所も見受けられます。

写真の山茶花を撮影したところは、ちょっと見ただけではお墓とは気づかないほどみごとな?山茶花の林になっていました。

最近はお墓やお寺が消滅するとか、墓仕舞いや墓地の無縁化などといった問題がメディアに取り上げられることが多くなりました。

高度成長期以降、地方の檀信徒が仕事を求めて都会に移住し、さらに檀家がいなくなった寺が経済的に立ち行かなくなって無住化、最悪の場合は廃寺になるという悲しい現実があります。

墓仕舞いして移住先にお墓を移せる人はいいのですが、ローンや子育て、日々の生活を維持することだけで他に手が回らず、結局お参りする人がいなくなった先祖代々のお墓だけが田舎に残される・・・

原因はこれだけではないにせよ、昨今の少子高齢化や極端な都会への人口集中、都市と地方の経済格差からくる社会のゆがみが墓地の無縁化に大きく影響していることは疑いのないところです。

しかしこれらは、なにも田舎や限界集落だけの問題ではありません。

八柱の荒れたお墓を例に出すまでもなく、都会のお墓でも同じことは起こっています。

バブル崩壊後に起きた多くの経済的打撃によって都市生活者の間でも徐々に経済格差がうまれ、逼迫した家計の事情で法事や葬儀などの宗教行事を行うことに困難が生じています。

そしてその延長上に、都市部の荒れたお墓が存在するのです。

来年、開園から三十年を迎える合掌の郷も例外ではありません。

さすがに荒れた墓地はありませんが、管理費の滞りや未納も散見されますし、葬儀や法事のお布施、お墓やお仏壇の維持などについて様々な相談を受けることが増えています。

「お父さんが亡くなった後、引きこもりの長男と二人暮らしで法事などできない」

「病気の老親を抱えて働けないうえ、三ケ所のお墓の面倒を見なければならない。今後どうしたら良いものか」

など、近年の急激な社会の変化とともに、心の問題や家族間の確執、経済的な問題などこれまででは考えられないような相談事が出来してきています。

今後、特に団塊の世代と呼ばれる方々が亡くなる時期には、お墓や仏事の様子は大きく変わっていくに違いありません。

諸行無常は世のならいとはいえ、打ち捨てられたようなお墓、行き場のないお骨やお位牌を目の当たりにすればだれでも心が痛むものです。

お墓は遺骨の埋蔵場所であると同時に、亡くなった故人と過ごした日々を振り返り、自分自身の今を再確認して明日への生きる力を得るための場所であると思います。

家墓や個人墓、合祀墓など形態は違っていても、生きるために死者と向き合う場であることに変わりはありません。

お墓の様子は今を生きる私たちを映す鏡でもあるのです。

お墓のことだけでなく、将来にわたって安心して供養を続けることができるようお手伝いさせていただきますので、安なことがありましたら遠慮なく住職や管理事務所にご相談ください。

それぞれのご家庭の事情によって相談の内容やお答えできることも違います。

正解のない問いに向き合うことの難しさを痛感することもしばしばですが、知恵を出し合い、ともに良い方向に進んでまいりましょう。

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寺下の写真家・章夫ちゃんの本職は花卉農家であります。カーネーションの栽培が盛んな鋸南町でも有数の花職人。

平日の昼下がり、誰もいないハウスを覗いてみるとカーネーションが咲いていました。

きれいに整えられたハウスの中は、小春日の趣です。

静かなハウスの中、かすかに揺れるカーネーションの向こうに、遠い波音が聞こえたような気がしました。

冒頭に載せたように、保田では水仙が咲き始めています。時期になると水仙まつりも開催されます。

水仙まつりに関しては、きょなんインフォメーションからどうぞ。12月中旬から来年2月4日春分の日までの開催です。

最後は先日の会合の後に立ち寄った、ホテルニューグランド本館の2階フロア。

来年23回忌を迎える先代住職が大好きなホテルでした。

今日はここまで。



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