8月の拙ブログでも紹介いたしましたが、当教区(曹洞宗の地域単位のこと)ではFacebookで教区のページを運営しています。
日本中見渡してもFacebook上にページをもっている教区なんてあまり聞いたことはありません。
当教区ではこれまでも布教に独自の取り組みをしてきましたので、いろんなことに挑戦する下地ができています。
そんなことから今回はコロナ下、そしてコロナ後の布教の方法として、ネットを通して曹洞宗の教えを発信していこうということから
Facebook上にページをもつことになりました。
Facebookページの名前は「生きる力」。(検索する際は「生きる力 神奈川」で探してみてください)
夏頃から少しずつお寺の行事の様子などを掲載していますが、今回はじめて法話の動画をアップすることになり、
教区長をしている住職にまず最初にやってくださいと依頼があったわけです。
あれこれ悩み呻吟しながら台本を作り、時間通りに収まるかを考え、一昨日19日に収録をさせていただきました。
彼岸会など行事のYouTube配信で顔を出しているとはいえ、今回はお檀家さんだけではなく一般向けですので、
言葉が訛ってないか、聞きにくいことはないか、視線が泳いでないか、姿勢は・・などなど心配することばかりです。
一時間半余り撮影を行い、あとはなんとかなるでしょう、編集にお任せ、という事で収録は終了。
近日公開予定ですので、気が向きましたらFacebookに訪問してみてください。
住職の言葉が訛っていて聞き取れない、という方のために、法話を文章化したものを載せておきます。
法事で時折お話させていただいている「茹で蛙」のお話です。
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慢心することなかれ
第5教区長 戸塚区川上町 倫勝寺住職 馬塲義実
コロナウイルス感染症の拡大によって、日本に限らず、世界の社会状況は大きく変化しました。
感染者数が減ってきているとはいえ、社会生活がもとに戻るまでにはまだまだ長い月日がかかることと思います。
ここ数年、特にコロナ禍になってからは、以前なら思っても見ないような事件や事故が起こるようになりました。
少し前でしたら「自粛警察」とよばれる独りよがりの正義を振りかざす振る舞いがあったり、
いまでもやり場のない怒りや不満を吐き出すためにネット上で特定の個人に対して誹謗中傷を繰り返したりして、
最悪の事態に陥ることも少なくありません。
このような状況に、宗教に携わる者として何かできることは無いか、共に生きる皆様と穏やかな心でいられるために
今後も継続してお手伝いできることはないだろうかと考え、このたび教区の若手僧侶を中心に、
ネット上でみ仏、曹洞宗の学びの場を「Web版生きる力」として開設することとなりました。
今後定期的に更新を重ね、皆さまと一緒にみ佛の道を学んでまいりたいと思います。どうぞよろしくお願いいたします。
さて、私たちが所属する曹洞宗には二つのご本山があります。一つは横浜鶴見の總持寺。そしてもう一つは北陸、福井県にある永平寺です。
私が修行させて頂いたのは大本山永平寺です。
もう40年近く前のことになりますが、そのころお世話になった老師にこんなたとえ話をお聞きしました。
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君は蛙の茹でかたを知っているかな?蛙を上手に茹でるには、コツがいるのだ。
ぐらぐら煮立ったお湯で茹でようと思ってもだめだよ、蛙だって熱いのは嫌だから暴れて鍋から飛び出てくる。
下手すれば鍋をひっくり返して逃げてしまう。
ではどうするのかといえば、鍋には水を入れておくのだよ。そのなかに蛙をそっと放す。
蛙は気持ちよく水の中を泳いでいるだろう。それから火を点け、とろ火で茹で始めるのだ。
少しくらい水の温度が上がっても蛙は気がつかない。それどころか蛙は気持ちよく暖かく感じて、自分が春の田んぼにいるような錯覚を起こしている。
それを見ながら徐々に火を大きくしていくんだ。
鍋の湯が本当に熱くなって、蛙がおかしいなと気づいた時にはもう遅い。
手足は動かなくなって逃げるに逃げられず、あっという間に蛙が茹であがるというわけだ・・・。
「ご老師は蛙、食べたんですか?」とお聞きすると「戦争で南方に行ったからね、食べられるものは何でも食べたよ」とのお返事。
さて、この話、本当は蛙の話じゃない。修行僧の、そして人間の話なのだよ。
人は突然の災害や危難にみまわれても、何とか活路を見出してそれを避けようと努力し、乗り越えようとする。
突然熱湯に入れられた蛙のように、困難に直面した時、私たち人間は思っても見ない力が出たり知恵がわいたりするものだ。
しかし「これくらいなら」とか「まあいいや、誰も見ていないし」などと、毎日の生活を怠惰な気持ちで過ごしたり悪癖を積み重ねたりしていると、
鍋の火が大きくなるのを知らずにいる蛙と同じで、気がついたときにはもう手遅れになってしまっていることが多いものだ。
よいかね、生死事大、無常迅速。日常の一挙手、一投足をこそ、人は真剣に生きなければならない。
悔いなく修行の日々を送るためにも、今この一瞬を「生ききる」ことを心がけねばならない。
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さて、コロナウイルスに関しては、このところ新規感染者が減ってきておりますので、明るい兆しも見え始めているようです。
飲食業界などにお勤めの方はホッとしておられることと思います。
ワクチン接種率の上昇や医療関係者の皆さんの献身的な努力、そして日常の感染対策が浸透している成果でしょう。
しかし、再度感染が拡大しない保証はどこにもありません。
これから年末年始を控えて「茹でガエル」にならぬよう、緩むことなく気を引き締めてまいりたいものです。
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園内東側の水路の上では、皇帝ダリアが満開になっています。
もちろん、山茶花もたくさん咲いています。
どんぐりの木などは黄葉がすすんで、落ち葉が大変なことになっています。
でも池の上のもみじはまだ青いまま。来週は寒気が下りてきそうだとのことですから、紅葉がすすむと思います。
法話収録の19日はほぼ皆既月食の日。月食前の西の空が真っ赤に染まってそれはそれはきれいでした。
夕空が真っ赤に焼けていたのは、ほんの短い時間でした。この瞬間を気付かずにいたら見られなかったかも知れませんね。
教えてくれた家人に感謝です。
今日はここまで。