<涸沢C/S>
朝早く、涸沢c/sを出発した。
9月4日は奥穂高岳アタックの日だ。
涸沢キャンプからは白出しのコルが見えている。
そこから先は梯子を上って行けば,頂上へ至る。
本日、頂上を目指す登山者が
たくさんいた。
登りの途中で、大概のパーティーは我々を抜き去っていった。
中には、我々と同じようなペースの
ご夫婦がいた。
その老夫婦の旦那さんが奥穂高岳は初めてで、奥さんは20代で登ったらしい。
奥さんが『お父さんは、先が短いから、登りにきた。』といった。
私は『まだお若いでしょう。』といった。
旦那さんの年齢が80歳で、
奥さんは75歳らしい。
見た目が二人とも若いし、
足腰はしっかりしているように見えた。
白出しのコルで休憩をしていると、
先程の奥さんが干し柿をくれた。
安曇野の自宅の庭で育てた柿を
干したものらしい。
柿は形がよく、しかも美味しかった。
山頂ではカメラを渡されて、
シャッターを押す事を頼まれた。
私はカメラのファインダーを覗いた。
そこには、穏やかな顔の二人が写っていた。
私は迷わずにシャッターを
二度切った。
その瞬間、涼風が飛騨側から湧き上がった。
素直に、二人には長生きして欲しいと思った。
<涸沢C/S>