【デビュー当時のTHE BEATLES】
909 回目の記事ということで、無理矢理な展開ですがビートルズの
‘One After 909 ’です。(とっさの思いつきですね)
この曲は、ジョンが17歳の時に作ったシンプルなロック・ナンバー
です。公式的には、1970年 4月のポール脱退宣言後に発売されたアル
バム“LET IT BE ”で発表されました。この曲の音源は、1969年 1月
30日の「ルーフ・トップ・コンサート」でレコーディングしたテイク
が採用されています。しかし、遡ること6年前の1963年 3月 5日に、
一度レコーディングされています。その時代に戻ってみましょう。
Paul 時間がないから早くやろうよ。
SMITH ‘One After 909 ’テイク1。
George (ギターの出だしを黙々と練習)
Paul 早く~。
John わかった。やろうぜ。
SMITH テイク1!
George na・・・na・・・(ギター・ソロを口で復唱)
Paul 始めるよ。シーッ! 1,2,3,4。
“LET IT BE ”の、洗練された4ビートのアップ・テンポ・ヴァー
ジョンに比べると、なんとも「のんびり」した雰囲気の8ビートです。
思わず「シブいッ!」と声がかかりそうです。この日既に‘From Me
To You’と‘Thank You Girl’のレコーディングを4人は行っており
集中力が切れかけていたようです。演奏がうまくまとまらず中断して
しまいます。演奏を止めてしまったポールに非難の嵐が・・・。
John あんだよ。おめえ、あにやってんだよ。
Paul ここから歌だと思って・・・。
Ringo 急に止められたら、わけわかんないって。
George 止めちゃダメだよ。ここは‘Bo Bo Bo Bon’ってベースを
弾き続けるんでしょ。
John ・・・ったく、ポールはヨ~。
John 打ち合わせしたとおりやれよな。
Paul わかったヨ。
SMITH テイク2。
MARTIN 落ち着いて演奏しなさい。じゃあ行ってみようか。
Paul ・・・。
George 1,2,3,4。
ん~、テンションが低いですな~。ポールへの集中砲火が終わった
と思ったら、今度はジョージがソロでミス・トーンを出してしまいま
す。
John けっ、最低のソロだぜ。
George ・・・。
John 気持ちが入ってねえんだよな。
Paul ・・・。
MARTIN ジョージのチョーキングのギターは後からでも録音できる
から、今は弾くのを止めてくれるかな。
George 了解。
MARTIN じゃあ、行ってみよう。
SMITH テイク3。
George 1,2,3,4。
いつの間にかジョージがカウントを取っています。ポールときたら
すっかり意気消沈してしまい、黙ってしまいました。案の定、テイク
3も途中でストップ。
John あんだよ。今度は。
Paul ピックが・・・。これじゃうまく弾きないヨ! もうでき
ないッ!
John ピックならケースの中にあるだろ。
Paul ケースがないんだよ。
John ないって、荷物はもうこの中にあるはずだろ。
Paul ・・・そうだけど、ないんだよ!
Ringo だから~、いつも言ってるじゃん、ポール。
Paul わかってるって。でも、ドアのところにケースを置いてき
ちゃんだ。
John だから、あの時「中に入れてやろうか」って声かけたのに
てめぇは黙ってとっとと行っちまっただろうが。
Paul えっ・・・。
John ジョージ、次行くぜ。
MARTIN みんな、落ち着いて演奏しなさい。
もう、しどろもどろのポール。ジョンの好意を反古にしてしまった
自責の念にかられています。こんな状態で、よい演奏ができるはずが
ありません。また・・・。今度はジョンのヴォーカルの出が早かった
ようです。
John おい、ちゃんとやれよ。
Paul ジョンもね。
John ミドルの8小節をスキップするってあれほど言っただろう
がよ~。あ?
Paul ジョージだよ。ソロの中間あたりで・・・。
George 12小節め?
MARTIN そうだよ。
Paul そう。
MARTIN ポールの言っていることが正しいね。
・・・という感じでは演奏がまとまるはずもありません。この後、
この日はテイク5までレコーディングされ、ジョージのギター・ソロ
がオーヴァーダブされました。しかし、残念ながらこの時点では結局
ボツになってしまいました。
9時9分の列車に乗り遅れたのは、どうやらピックの入ったケース
をスタジオに持ってくるのを忘れたポールだったようですね。
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Bootが出た当時、これ以外の2トラックシングルセッションのマスタが処分されて存在しないのに「何故このシングルセッションのみ完全に存在するのか?」ずっと疑問に思ってました、、、でも今になってなんとなくわかったような。。。‘One After 909 ’部分が全くミックスされずに放置されてたので未処理で残った。。。そんなとこかな。。。
この時点(1963年3月)の録音機材まだ2トラックだったのですね。
‘She Loves You’も2トラック。
‘I Want To Hold Your Hand’から4トラック。
この2つのドイツ語ヴァージョンで
‘She Loves You’だけベーシック・トラックを
録りなおしましたが、ずっと不思議に思っていました。
「機材の関係」や「マスター原型なし」など
複雑な理由があったようですね。
録音機材の変遷とレコーディング・プロセスの記録を調べると
いろいろなことが見えてきて、とても面白いと思います。
モノ・ミキシング後マスタ処分。(2テイク共)
‘Please Please Me’シングルセッションテープ
アルバム‘Please Please Me’のモノ&ステレオ・ミキシング後マスタ処分。
‘From Me To You’シングルセッションテープ
直後にシングル用モノ・ミキシング。
‘One After 909 ’未ミキシングの為、「処理待ち」となり現在に至る。
お陰でその後、北米向け及び国内コンパクト用にステレオ・ミキシングされる。
‘She Loves You’シングルセッションテープ
モノ・ミキシング後マスタ処分。(4トラック導入過渡期に本来保存されるべきであったが間違って処分されたと思われる)
アルバム‘Oldies’編集で上記モノ・ミキシングより擬似ステレオ・ミキシング
‘She Loves You’はアルバム収録されなかった為ステレオ・ミキシングのタイミングを逸したという不幸な経緯があったのでしょうね。
自分は必死でステレオヴァージョン探しましたがBootで片CH英語ヴァージョン、片CH独語ベーシック・トラックしかありませんでした。結構このBoot、左右シンクロしてたので独語ベーシック・トラックはモノ・ミキシングをベースにモニターしながら上書き演奏してレコーディングしていたのでしょうね。
ビートルズは知名度と共に‘I Want To Hold Your Hand’から本格的にアーカイブされるようになったのでしょうか。
‘She Loves You’に関しては
曲の途中で音のテクスチャーが変わっているので
「つぎはぎ」処理なのでしょうか。
(本件、このブログ内でもどこかで取り上げています)
オリジナル誤廃棄なのか
原型をとどめたものが残ってなかったのか
けっこう謎の部分が多い曲ですね。