にわか日ハムファンのブログ記念館

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溝は埋まらないものだったのか:神戸、中田監督解任

2009-07-30 08:13:13 | 関西野球インディーズ通信
■ えりちゃん涙! 独立リーグ神戸が中田監督解任を発表(産経・2009年7月29日)
■ 野球 独立リーグ神戸の監督解任…社長言い分と食い違い(毎日・2009年7月29日)
■ 体制変更のご報告(神戸公式・2009年7月29日)

 神戸に肩入れしながら関西独立リーグを見ているものとしては、このような形での監督解任は非常に残念ですし、回避できなかったのかという疑問を禁じ得ません。
 球団側と監督側の話は食い違いもありますが、少なくとも球団のあり方を巡って、両者の考えの中に不一致があったことは確かでしょう。
 しかし、問題は何が一致していなかったのかです。ちょっと長くなりますが、段階を追って考えていきましょう。
 ご存じの通り、独立リーグの経営基盤は脆弱です。特に誕生1年目で、リーグ運営のトラブルに見舞われたばかりの関西独立リーグにとって、経営の安定化は最優先事項です。
 そのためには、球場へ足を運びたくなるような球団(「チーム」と書いてない点に注意してください)づくり、リーグ作りが求められます。当然ですよね。
 では、そんな球団・リーグを作り育てるためには何が必要なのか? 私の考えでは、必要な課題は大きく2つにまとめられます。
 第1に、NPBに入団し得る選手を1人でも多く育成すること。独立リーグの存在意義の1つは、NPB・MLB等、より高次のプロリーグへ選手を送り込むことにあります。
 より多くの選手が、NPBをはじめとするリーグに移籍し、活躍することで、独立リーグの注目度は上がりますし、存在価値も向上します。
 ですから、各チームは選手を徹底的に鍛え上げ、各リーグのスカウトに自信をもって売り込めるようにする必要があります。
 第2に、各球団・リーグは自らの地盤を固める必要があります。具体的に言えば、地域密着のための取り組みとファンサービスです。
 (おそらくアメリカでも事情は同じでしょうが)日本の独立リーグで、NPBの球団のように、大企業に依存できるところはありません。となれば、彼らはよって立つ地盤を地元地域に求めるほかありません。
 地元に暮らす人々や、地元の企業に対して存在をアピールし、彼らに求められる球団であり続けることが、独立リーグが活動し続けるための必要条件なのです。
 もちろん、全国的な知名度が得られれば助かるのは助かります。その点、吉田投手の存在は正直ありがたいと思ってます。
 ですが、独立リーグはNPBと同等の人気を得られる存在ではないですし、経営規模からいっても、地元相手のビジネスを続けるのが賢明な選択でしょう。
 となると、地元イベントへの出席、地元メディアへの露出、スポンサー企業への協力などを、事あるごとに積極的に行っていかなければなりません。
 見過ごされやすい点ですが、これらの取り組みは選手のためでもあります。
 独立リーグの選手が念願かなってNPBに入団できたとして、そこからやるべきことは野球だけではありません。
 ファンに対してどう接していくか、メディアとの関係は、ブラックな誘惑をどう断ち切るか……プロの選手として、野球以外に覚えることはたくさんあります。
 加えて、今の時代にプロとして生き残るためには、野球以外でファンにアピールする部分が求められます。
 ファイターズの主力選手が好例です。賢介、稀哲、金子誠などのテーマカラーや、ダルのルックス、稲葉の爽やかさ、小谷野のヘルメット、稲田の透明性など、それぞれ独自の目立つポイントを持っている。
 今の時代、野球だけできる選手がスターになれるわけではありません。ファンや周囲に対する態度を身につけ、野球以外でも人を惹きつける魅力を持ってこそ、ファンにアピールする選手になれるのです。
 独立リーグの中で、野球の能力を高めることは大事です。しかし、地元の人々と関わりあう中で、プロとして自分がどうあるべきかを考えることも、同じぐらい重要なのです。
 ここまで独立リーグの2つの課題について書いてきました。神戸の話に戻ると、球団側が第2の課題を強く意識していたことは間違いないでしょう。
 となれば、中田監督は第1の課題を優先していて、その食い違いが埋まらなかった……単純に対立の構図を描けば、こうなりそうなものです。
 しかし、私はこの構図は成り立たないと見ています。中田監督も、練習以外になすべきことがあることは、理解していたはずです。
 ファンや地元の後押しがどれだけ重要か理解していない監督が、オープン戦とはいえスタンドまでわざわざあいさつに来るはずはありません。
 そう考えれば、球団と中田監督の意見の違いは、十分埋められるものではなかったのか? 溝を埋める努力を(特に球団側が)どれだけしたのか? という疑問を感じずにはいられません。
 それだけに、中田監督の解任は非常に残念ですし、回避できたはずではなかったのか、という思いは残ります。
 球団側は「フロント側に野球経験者が少ないことも(方針対立の)原因があるかもしれない」としています。
 そして、指導者経験のあるプロ野球OBを念頭に、フロント側と現場間をつなぐ“球団代表格”を置きたいと考えているようです。
 これは確かに賢明な考えだと思います。ただ、(内部事情を知らない者の目から見て)監督を突然解任してしまう前に、なぜそれができなかったのか?
 はたして現状で、快く引き受けてくれる人材を見つけられるのか? 正直なところ、不信感や不安感は残ります。
 ただ、それでも神戸には選手がいます。神戸の野球は続きます。
 そうである限り、私は神戸9クルーズというチームを引き続いて見守っていくつもりです。


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8 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
育成と宣伝のバランス (ざわ)
2009-07-30 13:31:36
 比率はともかく、両方とも重要という意識は双方あったはずですが、両者が妥協できなかった点というところが気になります。
 その点の問題解決がない以上は次期監督以降も同じ轍を踏む可能性は否定できませんし。
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ざわさん (ルパート・ジョーンズ)
2009-07-30 15:55:17
育成を優先するか、宣伝やファンサービスを優先するか、
意見が180度違ってたのなら、監督解任も理解できなくもないんですが、
実際にはそうではなさそうですし、なんとも割り切れない思いです。
当面は村上眞一コーチに代行を要請するらしいですが、
おっしゃるように、今のままだと同じ失敗を繰り返しそうで不安です。
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Unknown (rpo)
2009-07-30 22:06:15
考えさせられる話ダナーと思って読んでいたのに

>>小谷野のヘルメット、稲田の透明性

透明性の使い方があってるような間違ってるようなw

初めてなのに思わず突っ込んでしまいましたよ
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たぶん本当の原因は別のところ (アルビレオ)
2009-07-31 04:01:25
勝手な想像に過ぎないけど、これって「練習と営業とどっちを優先するか」というのは表面的なもので、一番の食い違いはコミュニケーションの問題だと思いますよ。

たとえば
「練習などの時間はしっかり確保した上で、ファンサービスなどにもできる限り力を入れていきましょう」「わかりました、そうしましょう」
でお互い合意して理解しあえたつもり。
ところがいざ実行してみると「練習を中断しての応対は効率が悪いし怪我などにつながる危険もある。こんなことになるとは聞いていない」「できる限り協力するって決めたやんかー」
ってな具合に、言葉の上では一致したつもりでもその言葉に対するイメージが現場とフロントでは違っていたりする。
何度かそういうことが起きるとそれを避けるために細かいことでも後からいちいち確認を取ったりして、それはそれでお互いにストレスを溜めていく。
それでも細かいトラブルはいろいろ起こるだろうし、まともな状態なら気にするほどではないことでも「こっちの言っとること本当に理解してるんかいな」という不信感が育ってしまう。

>フロント側と現場間をつなぐ“球団代表格”を置きたい
とうのも、話し合いの時点でお互いの言葉に「翻訳」をしてあいまいな部分を詰めてくれる人が必要だと感じたのでしょう。

シーズン途中での解任は、経営に余裕がないので人事の見直しをオフまで待つことができなかったし、体制の仕切りなおしを決めた段階で中田監督は構想から外れてしまったのかも。(結果的に村上真一コーチがパイプ役になっていたので、そちらに監督をやってもらいたかったとか)
あと球団代表的ポストを新設するには監督の職務内容を当初より削るために契約をやり直す必要があって、それに中田監督が同意しなかったら契約を解除しないと先へ進めなかったとか。

全部想像ですよ。

中田監督に明確な落ち度があったわけではないので解任しても任期満了までの分のお金は払わなきゃいけないはずで、資金繰りが苦しい中での解任はそれだけ深刻な事態だったんでしょうね。
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rpoさん (ルパート・ジョーンズ)
2009-07-31 05:45:01
透明性という表現が適切かどうかは私も自信がないです[;;0J0]
ま、見えないことでかえって目立ってしまう選手ってことで(ヲイ

これからもツッコミどころ満載でお送りしますので、よろしくお願いします。
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アルビレオさん (ルパート・ジョーンズ)
2009-07-31 06:09:56
細かい事情は想像するしかないにしても、
ミスコミュニケーションは間違いなくあったでしょうね。
お互い分かり合えると思っていたところが、そういかなかったとか。
その点を反省して、連絡役を置くのはいいことだと思うんですが、
引き受ける人は、さぞ大変だろうなぁと……
本来なら、監督やコーチ、選手それぞれとの契約で、
細かいところまで詰めていくのが安全なんですけどね。

しかし、任期終了までの給料、ホントに支払うんだろうか……
事ここに至ってしまうと、それすら火種になりそうで不安です。
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いまごろ気づいたけど (アルビレオ)
2009-08-03 09:02:11
球団側が「監督から解任してくれと言ってきた」というあたり、「監督側の都合で辞任→支払い義務なし」って形に持っていくためのような。

>それぞれとの契約で、細かいところまで詰めていくのが
>安全なんですけどね。

あまり細かく決めてしまうと、逆に融通が利かなくてお互いにとって不都合になる場合もあるんですよね…
プロ経験のない選手にとっては内容が理解しにくい契約書にはんこを押すのは不安になりますし。
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アルビレオさん (ルパート・ジョーンズ)
2009-08-03 21:31:19
報酬支払の義務がなくなれば、神戸球団にとっては朗報でしょうが、
そう(彼らにとって)うまくいくんでしょうかねぇ。
下手をすると、この件はこの件でもめそうで不安です。

>契約書
うーん、細かすぎる契約書を作らずに済むなら、
その方がいいだろうとは私も思うんですよ。
ただ、球団と中田監督との意見の不一致を見ていると、
事前に条件を詰められなかったのか、とは感じてしまうんですよね。
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