兵どもが夢のあと

(C) IDEA FACTORY のKingdom of Chaosに参加するキャラクター、流恋楓の日記。

アスタ・ラ・ビスタ・ベイベー(3)

2012年09月14日 | 日記
…そりゃあ、お前… と言いかけたときに

視界の向こうにビスケットの詰まった袋を抱えた銀髪の天使と、
その姿を心配そう見つめ、何やら諭す風の精霊の姿を捉える

付き合いは短いが、黄泉還ってより
こいつらとの出会いがなければ、きっとここまで辿り着けなかっただろう
俺にとってかけがえのない仲間だ

向こうも気がついたのか、手を振って合図をする


俺もそれに応えるとともに、

お前達と一緒の方が楽しそうだからにきまってるだろーが、言わせんなよな

俺は視線を外してそう吐き出し、続けた

アスタ・ラ・ビスタ・ベイベー(2)

2012年09月13日 | 日記
媒介は持ってきたのかい?

という問い掛けに、俺は目で頭陀袋を開けろと合図した

袋から出たのは、大熊猫のスリッパ
そいつは少し笑ってそれを小脇に抱えると、採魂の大鎌を静かに構えた


……


そして、土を土に、灰を灰に、塵を塵に返し、俺の身体は風になる

背中から噴き出す青い炎の翼が、闇天使としての力を取り戻したことを教えてくれた
これは本来、俺が生まれながらに持っていたもの

死者を縛るムゲンの枷は今、断たれたのだ


ふぅ、いやあ、危なかったな… おい
あとちょっとで、また、冥界に逆戻りってとこだったぜ
もう、あんなムサい獄卒共と、積み木遊びすんのはまっぴらごめんだからな、はは

魂となって捲し立てる俺に、はやくスリッパに入れとばかりにそいつが溜息をつく
俺は生欠伸を一回して、くるりと回ると、大鎌の上に腰を下ろした

うん、大人しくしてくれないと、楓ちゃんお待ちかねの可愛い天使達とも会えないからね

と、そいつは俺に念を押した


本気にしてたのかよ、そんな冗談、と、呆れたように俺が言い放つと、そいつは問い返す


じゃあ、なんだって言うんだい?

アスタ・ラ・ビスタ・ベイベー(1)

2012年09月09日 | 日記
戦の流矢で傷付いた馬に鞭を打って走らす

冥界の王ムゲンから与えられた
天に燃ゆるグリフォンの火の心臓はとうに燃え尽き
この身体は土に還ろうとしている

たずなを握る手に力が入らないのはその所為だろう

もう、あと少し… なんとかもってくれ

腹を蹴り、もう一度馬に鞭を入れる


しかし、次の瞬間、走り通しの馬に限界が来た
馬は痙攣をして姿勢を崩し、俺はその前に二回転して放り投げられて
受け身を取れずに仰向けに地面に叩きつけられる


…!


痛みはもう感じない
ただ、身体中に罅が入り、崩れていく感覚はわかる

まったくぞっとしないぜ
ちっくしょう、ここまで来て…!


俺はせめてと、
届きそうな位置に転がる頭陀袋に気力を振り絞って手を伸ばそうとしたが
次の瞬間にそれはひょいと摘み上げられちった


…!?


遅いじゃないか、楓ちゃん


…と、見上げればそこには、あっけらかんと笑うそいつが立っていたように見えた

「ように」ってのは、俺はもう満足に、見れて、聞けて、喋れているかわかんねーからだ
ただ、そんなように感じたのは間違いなくて…言葉になったかは定かじゃねえがこう返した

はは、わりぃ
ちょっとはしゃぎ過ぎちまったせいで、時間ぎりぎりになっちまった

楽園最後の日(4)

2012年09月06日 | 日記
4,

古の国家群による総力戦
しかし、それは最期の日の序章に過ぎなかった

楽園国家エデンとジグロード傭兵団に続き、
神聖ゼア帝国に牙を剥かれた朝廷の剣であり盾である幕府も当然に動く

続いて、眠れる獅子、魔軍ヴィグリードをはじめとした各国の独立と宣戦布告

なおも変わらず、吠え猛る腐竜共の群れ


そして
魔皇軍ユル・ニィドの復活…

我等は闇の息子、狂気の娘なり
讃えよ 総ゆる邪悪を
声高に言祝ぎ謳え 死と困苦の在るを

あの言祝ぎと共に還って来たのだ、悪の華が、最後のこの瞬間に



時勢は一気に動いた、が

ここから先については俺ごときが語るには荷が重い
この戦いの行く末は、各々の胸の内で決着をつけるべきところだろう

俺は混沌の王国の歴史はその名に相応しい締めくくりを迎えた…
とだけ記して、ここに筆を置こうと思う


願わくは、
楽園の栄光と永遠の安寧を願って
この手記をエデンの戦友へ捧ぐ

楽園最後の日(3)

2012年09月03日 | 日記
3,

再興した楽園国家は寡兵ではあったが
キース王の下、楽園の旗がたなびく軍勢に全身が粟立った

ガキの頃、
伯父貴が引き合わせてくれたキース王はいつだって俺の憧れで…

いつかお仕えをする、その想いを胸に
お袋が闘技場で研鑽した技を受け継ぎ、磨きに磨いた

だけど、途中、
随分と回り道をして
色んなヤツに迷惑を掛けて
奪って、奪われて
野たれ死んで

夢にみて叶えられなかった現実が、今ここにある


キース王を固める諸将と近衛、突撃の号令を待つ歴戦の勇者、
その戦士達を見守る救護部隊と、名立たる観戦武官達

戦場を前にした、皆の嬉しそうな顔と
その場に俺が居合わせることが出来る幸運に
思わず零れた涙を 俺は誰にも見られない様に拭った


そして、キース王は静かに号令を放つ

エデン全軍と、傭兵王に指揮されたジグロードの古強者の
最後の聖戦の火蓋は今ここに切って落とされた