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マスコミが報じないウクライナ危機の真相:NATOの東方不拡大とミンスク合意。プーチンの狙いは何か?日本は中露離間に舵を切れ。(釈量子)【言論チャンネル】

2022年02月14日 23時38分16秒 | リバティ 学園 幸福実現党 関連  

http://hrp-newsfile.jp/2022/4207/

幸福実現党党首 釈量子

緊迫化しているウクライナ情勢をきっかけに、いま米露対立の危機は、冷戦以降、最高に高まっています。

今回は、日本の安全保障にも係わる非常に重要なテーマと考え、マスコミも報じないウクライナ情勢を紐解きながら、その上で日本はどうすべきかについて、3回に分けて論じて参ります。

◆米露対立の危機

ロシアがウクライナとの国境付近に10万人とも12万人とも言われる軍隊を駐留させましたが、アメリカは、「もしウクライナが攻撃された場合には「前例のない」制裁を科す」とロシアに通告し、バイデン大統領の指示で、東欧に3000人規模の軍隊を派遣することを決めました。

日本のメディアは欧米メディアを後追いしてか、もっぱらプーチン氏を「侵略者」のように報道しています。

今回は、プーチン大統領の言い分には正当性があるのかないのか、バイデン氏の判断に乗ってしまうことはどうなのかを考えます。

◆プーチン大統領「軍事作戦を取りたくはない」

まず、事実関係を見ておきます。

昨年10月ごろから、ロシアがウクライナ国境沿いに軍隊を終結していました。

プーチン大統領は、年末恒例の記者会見で、ウクライナを侵攻に関する記者の質問に対して、「向こう(西側)が我々の国境に迫ったのだ!」と激しく否定しました。

プーチン大統領は、「アメリカやイギリスの国境に(ロシアが)迫っているのではない」そして、1990年代以降、相次ぐ「東方拡大」がロシアに脅威を与えてきた」のだと批判したわけです。

プーチン大統領は「ボールはコートのそちら側(NATOの側)にある」「何らかの返答を行うべきだ」と話しています。そしてプーチン大統領は、「軍事作戦を取りたくはない」とも発言しました。

しかし、ホワイトハウスは、ロシアが提示したNATOへの要求への返答を拒否し、プーチン大統領は「ロシアの主要な懸念は無視された」と、強い不満を述べました。

そこで、プーチン大統領の主張を見てみましょう。

(1)プーチンの主張:「NATOの東方不拡大」

◆大戦後、NATO加盟国が東方に拡大

一点目は、プーチン氏の「NATOの東方不拡大」を求める主張です。

NATOとは「北大西洋条約機構」の略称であり、現在、北米や欧州諸国の30カ国が加盟しています。

第二次大戦後、ソ連や東側諸国を仮想敵国として創設された「軍事同盟」であり、加盟国が攻撃されたら、他の加盟国には参戦する義務が発生します。

1949年の創設時、加盟国は12カ国でしたが、米ソ冷戦中には、ギリシャ、トルコ、西ドイツ、スペインが加盟し、16カ国になりました。

1989年にベルリンの壁が崩壊して、1990年に統一ドイツがNATOに加盟します。

その後、東欧の国々が民主化を果たし、1991年の「ワルシャワ条約機構」解体、ソビエト連邦の崩壊もあって、一気に加盟国が増加しました。

これを、「NATOの東方拡大」と言います。

◆「NATOは東方に拡大しない」という約束

これに対して、プーチン氏が「NATOの東方不拡大」を主張しているのには、根拠があります。

冷戦後、東西ドイツが統一されるにあたり、東西両陣営の間で「NATOは東方に拡大しない」という約束をしたというのです。

「にもかかわらず、一方的に反故にされた」と、これをプーチン氏は繰り返し主張しています。ベルリンの壁に変わる、新たな分断線を作っているのはNATOだという話です。

このプーチン氏の主張を裏付けるのが、1990年2月、ソ連のゴルバチョフソ連書記長と、アメリカのベーカー国務長官との会談です。

当時、西ドイツはNATOの加盟国でしたが、東ドイツは加盟していませんでした。

ベーカー国務長官や西ドイツのコール首相は「東西ドイツを併せた『統一ドイツ』がNATO加盟国として止まれるなら、NATO軍は1インチたりとも東方に拡大することはないとゴルバチョフ氏に話しています。

これがプーチン氏の主張の根拠になっています。

◆NATOの言い分

これに対して、NATOの言い分は違います。

2014年4月に「当時の東方とは、東ドイツを意味しているのであって、東欧諸国にNATO加盟国を拡大するかどうかを議論した覚えはない」と発表し、ロシアの主張を否定しました。

現在のアメリカのスタンスは、この公式発表を踏襲しています。

このように、両者の見解が分かれていますが、東西ドイツ統一の偉業を成し遂げるために、ソ連の了承を得るために、ゴルバチョフ氏と「口約束」をした可能性は否定できません。

ゴルバチョフ氏は「約束があった」と言い、プーチン大統領は、ゴルバチョフ氏が、この時の約束を文書化しなかったことを今でも大変後悔しています。

なお、ドイツの『シュピーゲル』誌は、詳細な調査を踏まえ、事実上約束があったとの見解を出しています。

また、1993年エリツィン大統領と、アメリカのクリストファー国務長官会談の際に、クリストファー長官が「東欧諸国のNATO加盟は認めない」と言って、翌年、クリントン大統領が手のひらを返して「NATO拡大」の考えをエリツィンに伝えてきたことがありました。

◆ロシアがウクライナを譲れない理由

エリツィンは「NATO加盟国をロシアの国境まで広げることは重大な間違い」と強く主張し、NATO加盟国との間に緩衝地帯を確保することは「譲れない一線」だとしました。

こういうところも、今に続くロシアの不信感につながっているところです。

ロシアの歴史の中で、ナポレオンやヒトラーがロシアに攻めてきた時、豪雪と凍結をもたらす「冬将軍」が敵国から守ったのは有名な話ですが、勝てたのはウクライナという緩衝地帯があったからです。

ウクライナはNATO加盟国であるポーランドやルーマニアとロシアの間に位置しています。

もしウクライナがNATOに加盟したら、モスクワからわずか870キロのキエフに敵軍が布陣することが可能になり、戦車でも片道10日ほどで到着でき、容易にモスクワを攻撃できるようになります。

◆ウクライナのNATO加盟は「レッドライン」

緩衝地帯と不凍港を持つことは、ロシアの安全保障にとっては死活的なのだということを理解するべきでしょう。

昨年12月、プーチン大統領は「ウクライナにNATOのミサイルが配備されたら、モスクワを数分以内に攻撃できるので、これは容認できない。ウクライナはロシアへの玄関口だ」と話しています。

ロシアは安全保障上、ウクライナのNATO加盟を「レッドライン」と見て、警戒しているわけです。

そもそもソ連が崩壊したので、ロシアはもはやNATOの敵ではありません。それなのになぜロシアを排除した政治軍事同盟が必要なのか?と問うているわけです。

こうした過去の経緯を見ると、プーチン大統領が「NATOの東方不拡大」を主張し、拘束力を持った正式な条約を文書として残したいと固執することは、理解はできます。

(2)プーチンの主張:「ミンスク合意の履行」

◆プーチン論文の主張

プーチン大統領の主張の2点目は、プーチン大統領が2月1日にも強調していますが、2014年の「ロシアによるクリミア併合」の翌年、ウクライナとの間で締結した「ミンスク合意」を履行するよう強く求めています。

「ミンスク停戦合意」とも言われますが、「停戦」にとどまらないということを説明します。

プーチン大統領がウクライナについてどう考えているのか、一番良くわかるのは、昨年7月に発表されたプーチン大統領の論文「ロシア人とウクライナ人の歴史的一体性について」です。

ロシア大統領府公式サイト「プーチン論文」
http://www.kremlin.ru/events/president/news/66181

この中で、「元々、ロシア人とウクライナ人は異なる民族ではなかったが、共産主義だったソ連の民族政策によって、大ロシア人、小ロシア人、白ロシア人(ベラルーシ)からなる三位一体のロシア民族が解体され、ソ連崩壊後に、ロシア人、ウクライナ人、ベラルーシ人という三つの個別のスラブ民族が国家レベルとして固定されたのである」と主張しています。

つまり、プーチンは「ソ連」の前のロシアを念頭に置いているのか、地政学的な安全保障の問題に加え、歴史的民族的さらには宗教的に、同じスラブ民族の「兄弟国家」だった地域を破壊されることに強い抵抗感を持っているわけです。

続けて、「ロシアは1991年から2013年に、天然ガスの値引きだけでも、820億ドル以上の値引きを行って、ウクライナを経済的にも巨額の支援を行ってきた」と述べています。

さらに「ウクライナは欧米によって危険な地政学的ゲームに引き込まれていった。その目的はウクライナをヨーロッパとロシアを隔てる障壁にし、またロシアに対する橋頭保にすることだ」と述べています。

欧州にとっても、ウクライナを市場にしたいことに加え、天然ガスのパイプラインも通っているのでエネルギーの観点からも確保したいわけです。

対するロシアは、ベラルーシやカザフスタンと結ぶ「関税同盟」に、ウクライナを引き込みたいという綱引き状態があったわけです。

プーチン論文の主張は、ロシア国民のみならず、ウクライナ東部やクリミア半島に住むロシア系住民の心に響きました。

◆一枚岩ではないウクライナ

一方で、ウクライナの首都キエフや西部のウクライナ人は、プーチン論文に反感を持ちました。

ウクライナのゼレンスキー大統領は、ロシアとウクライナの関係は真なる兄弟ではなく、「カインとアベルの関係を思わせる」と指摘しています。

旧約聖書では、兄のカインが弟のアベルを殺してしまい、これが人類初の殺人であり、さらに、ヤハウェにアベルの行方を問われたカインは「知りません」と答えて、これが人類初の嘘だったとされています。

このように、ウクライナは1991年のソ連崩壊後、国家として独立しましたが、国内は決して一枚岩ではありません。

◆プーチンの大義

こうした中、2014年初めに、ウクライナでクーデターが起こり、親欧米で反ロシアの政権が誕生したのをきっかけに、ロシアはクリミアの人々を守るためにクリミアを併合に踏み切ったわけです。

同時に、ロシア系住民が数多く住んでいるウクライナ東部のドンバスで、分離独立運動が始まり、ロシアは軍事的に支援し、戦闘状態が続きました。

プーチンにとっては、本来同じスラブ民族のウクライナで、ロシア文化やロシア語を排除する動きは看過できなかったわけです。

この内戦状態を収拾するために、2015年2月に、ドイツやフランス、ウクライナ、ロシアなどが結んだ休戦協定が「ミンスク合意」です。

当時のメルケル首相の働きで激しい戦闘は回避されましたが、小さな紛争は続いています。

問題は、プーチン氏が繰り返し「ミンスク合意」の履行を求めているのに対して、ウクライナは否定的な態度を採っていることです。

実際に、昨年10月には、「ミンソク合意」を破って、ウクライナ軍がウクライナ東部をドローン攻撃しました。

日本では報道もされませんが、「ミンスク合意」は、単なる休戦協定だけではなく、「ドンバス地域の強い自治権」を認めることや、「首長選挙」を行うことなどの、政治的条項が含まれていることです。

プーチン氏は、これを求めているわけです。

プーチン氏の論文からも伺えるように、ロシア文化圏に生きる人々を守ると言う大義のもと、ドンバスの自治権を守ることは「譲れない一線」だと考えています。

こうした経緯を見れば、プーチン氏が、欧米に対して「ミンスク合意」の履行を強く求めるのは、筋が通っているわけです。

こういう立場を理解することが、あるべき落としどころを模索するためには必要です。

◆バイデン外交の問題点

では日本はどうすべきでしょうか。ここで注目したいのは、トランプ大統領との違いです。

ロシアに融和的だと国内で批判されていたトランプ大統領の時代には、ウクライナ危機が起こらずに、バイデン政権になって起きている、ということです。

トランプ大統領は、プーチン大統領と個人的な信頼関係を築きながら、ロシアとあまり敵対しないように配慮していました。

同じことは、北朝鮮にも言えます。金正恩氏と歴史的な会談を行ってから、北朝鮮のミサイルはピタリと止みました。これは、中国を牽制することにもつながっていました。

しかし、バイデン大統領になってから「民主主義国家」対「権威主義国家」の対立軸を打ち出し、中国や北朝鮮に加え、ロシア、そしてイランへの圧力を強めています。

バイデン氏になってから、世界の分断は進み、戦争のリスクが高まっています。

バイデン氏は就任後、ロシアに対しては、大統領選への介入を理由に金融制裁を行ったり、ロシアの外交官を国外退去しました。

さらに、ウクライナとの共同軍事演習を行うなど、米ソ冷戦時代のような外交を展開しています。

そして気が付けば、ロシアをどんどん中国側に追いやってしまっているわけです。日本は、こうした構図を理解する必要があります。

中露はいわば「偽装結婚」であり、ロシアは戦いたくない、ヨーロッパも紛争を抑止したい、ウクライナのゼレンスキー大統領でさえ、バイデンのパニック的な対応に迷惑し、「煽っている」と言っています。

日本が見抜かなければいけないのは、プーチン・ロシアの本質です。

ロシア正教を復活させた信仰者であり、無神論国家中国の習近平氏とは精神性が全く違います。

そして、2月8日にマクロン氏に伝えたようにプーチン大統領は、「ロシアは欧州の一部だ」といって、敵ではないと、仲間入りしたいわけです。

◆日本は日露平和条約を締結すべき

幸福実現党は、日本政府がアメリカに対して、中国に焦点を絞るべきであり、アメリカの「中露二正面作戦」を改めるよう、提案すべきだと思います。

大川隆法党総裁は、1月9日の講話で、バイデン外交の売りである「民主主義国家」対「専制主義国家」の対立軸では限界があり、ロシアを味方に引き入れて信仰ある国々が手をつなげば、無神論国家・中国に勝てる可能性が出てくる、と指摘しています。

プーチン氏は、中国には、極東地域への侵略や、北極圏に影響力を伸ばそうとしていることなどについて今でも警戒をしています。

できれば、日本との関係を強化し、経済的な結びつきや安全保障上の結びつきを強めたいと考え、交渉の余地を残し続けていることに注目すべきでしょう。

日本は大局を見て、軽々に、バイデン外交政策に追随すると、今度は日本も、南西方面で中国と対峙しつつ、北方領土にミサイルを配備しているロシアも相手にせざるを得なくなり、中露「二正面作戦」を取らざるを得なくなってしまいます。

下手をすれば日本が戦場になる可能性もあります。逆に、ロシアと手を組めば、北朝鮮を抑えることも可能となります。

幸福実現党としては、北方領土問題を棚上げしても、ロシアと平和条約を締結すべきだと考えています。それは、「第三次世界大戦」にもつながりかねない構図ができるのを止めるためです。

またロシアをG8に入れるよう動き、西側の仲間にすべきです。日本にできることはそれほどありませんが、これは大きな貢献になります。

日本が、ロシアとの関係を再構築し、中露「分断」の方向に舵を切るべきだと考えます。

釈 量子

執筆者:釈 量子

幸福実現党党首

 
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2022年2月8日収録

 

マスコミが報じないウクライナ危機の真相:NATOの東方不拡大とミンスク合意。プーチンの狙いは何か?日本は中露離間に舵を切れ。(釈量子)【言論チャンネル】

 

 

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