頼むに足りない日本――「日韓同盟」は願い下げ?
http://tsuiki-shugaku.hr-party.jp/index.php?p=&d=blog&c=&type=article&art_id=57&art_quality=10
幸福実現党、ついき秀学党首のブログから転載
昨年11月23日の北朝鮮による韓国・延坪島砲撃を受けて、当ブログ等で
「日韓同盟の必要性」について触れたところ、12月に入ってから米軍の
マレン統合参謀本部議長が日韓間の軍事協力を提起するという動きが
ありました。
昨年の当ブログはそのことに触れて締め括らせていたただきましたが(bit.ly/gx0Bil)、すると年明け早々に、前原外相が韓国メディアとの
インタビューで「日韓同盟を希望する」と述べた、と報道されました(bit.ly/eZsV5C)。
しかし、その後すかさず、外務省がこの外相発言を否定し、韓国メディア
に訂正を申し入れました(s.nikkei.com/g3FDMs)。
これは、単純に韓国メディアの誤解だったのか、それとも前原外相が
本当にそのように発言したのに、後から別の誰かが取り消そうとした
のか、真相は判りません(一部の報道では、前原外相が先月訪米して
クリントン国務長官と会談した際、「将来的には日韓同盟を視野に入
れるべきだ」と長官から持ちかけられたことを受けて、今回の発言が
なされた、と言われています。bit.ly/gdMLLy)。
仮に外相発言が実際になされたものと考えた場合、この発言を後
から無かったことにしたくなる理由は様々に推測できます。
国内的には、日韓“同盟”といえば、集団的自衛権を認めるのかと
いう話になり、左翼政党からの反発を惹起します。対外的には、北
朝鮮、及びその背後の中国を刺激しかねないことを恐れたのかもし
れません。あるいは、歴史的な経緯から来る韓国内からの反発を考
慮した可能性もあります。
いずれにせよ、「日韓同盟」という考え方があり得るということを現職の
外相が打ち出した(と報道された)だけでも、一つの前進であったという
ことはできます。マスコミを含め、大多数の方々は、わが国の同盟
相手国としてはこれまで専らアメリカしか考えたことがないだろうと思わ
れますので、アメリカ以外の国とも軍事的な協力関係が必要かもしれな
いという意識づけにはなったでしょう。
しかし、残念なのは韓国側の反応です。「日韓同盟」はともかく、前原外相
や北沢防衛相が今月訪韓して安全保障分野での協力を呼びかけることに
なっていますが、韓国の方はいまや中国重視外交に傾きつつあり、期待し
たほどの成果が上げられるのか分からない状況です。
以下、1月6日付朝日新聞からの引用です。
韓国、中国重視外交にシフト 日韓安保協力に影響も
2011年1月5日19時11分
【ソウル=牧野愛博】韓国の金星煥(キム・ソンファン)外交
通商相は5日、今年の外交方針として中国をより重視する考えを
示した。北朝鮮への影響力など に配慮した結果だが、相対的に日本
の比重が低下。今月の防衛相や外相の訪韓を通じて、日韓安全保障
協力を進めたい日本の戦略に影響を与えそうだ。
金外相は5日、ソウル市内での演説で、米国に次ぐ主要外交対象
国として日中ロを挙げたうえで「特に中国と戦略的な相互理解を
強化する」と語った。同省は 李明博(イ・ミョンバク)大統領に
報告した今年の外交課題でも同様の方針を示した。同省関係者に
よれば、近く行う組織改革で中国の担当課を倍増し、要員も 増強
する。
韓国政府関係者によれば、昨年に起きた哨戒艦沈没事件や砲撃戦
の際、中国の協力を十分に得られなかった点を考慮した。金外相も
「北の問題に対する中国の責任ある役割を確保していく」と語った。
中国の経済規模の拡大も影響しているという。
韓国は1990年代以降、日米中ロとの外交を「周辺4強外交」
と位置づけ、重視してきた。過去の植民地支配や巨額の経済協力な
どを通じ、米国に次ぐ影響力を与えていた日本の発言力は相対的に
落ち込みつつあるという。
日本は今月、北沢俊美防衛相と前原誠司外相が相次ぎ訪韓する。
自衛隊と韓国軍との間で情報交換や部品・燃料などの相互補充など
の協力を推進する契機としたい考えだ。
だが、韓国政府はすでに、日韓の安全保障協力について、中国を
最大限刺激しない方向で進めたい考えを非公式に日本側に伝えた。
韓国は昨年12月にワシン トンで開かれた日米韓3カ国の外相会談
でも、北朝鮮への制裁に慎重な中国を非難したい日本に難色を示し
ている。韓国政府関係者は日韓安全保障協力について 「過去の問題も
重要だが、対中関係での韓日の認識の差も大きな課題だ」と語った。
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(引用終わり)
この報道によるならば、韓国も既に中国に気を遣うようになっているという
ことです。
確かに昨年12月に、黄海で中国漁船が韓国警備艇に衝突してきた事件
で、韓国政府は中国人乗組員3人を逮捕したものの、最後は不起訴処分
で釈放しています。北朝鮮との緊張関係が高まっている折、対中関係まで
悪化したらまずいという判断が働いたのでしょう。
上の記事では、韓国は、北朝鮮の暴走を抑える役割を期待して、
「中国と戦略的な相互理解を強化する」とのことですが、中国が本当
にそのような役割を果たしてくれるかは大きな疑問で、結局は甘い期待
に終わるのではないかと考えます。
しかし、この件では韓国を責めるよりも、わが国が基本的に頼むに足
りる国として見られていないという事実を直視すべきです。
直接的には、もちろん昨年9月の尖閣諸島沖での中国漁船衝突事件で
の弱腰外交ぶりが響いているでしょうし、そもそもは、自国の拉致被害者
の問題解決を自らの手ではなく、アメリカにすがりつく形でしか進められ
ないような国と深くコミットしても、外交上多くは期待できないという冷徹な
計算もあるのでしょう。
現在のわが国に欠けているのは、毅然たる外交姿勢と、その外交交渉力
を裏付ける物理的強制力、すなわち軍事力です。
国際社会においては法の執行を強制する世界政府のような機関はありま
せん。それぞれの国家が自ら物理的強制力をもって主権を維持している
状態です。ゆえに、良し悪しは別にして、国家間の交渉は、途中に様々な
要素はあれど、最終的にはこの物理的強制力の潜在的な力比べになる面
があります。
これまで経済だけで何とかアジア随一の大国の座を維持してきたわが国
ですが、経済規模で中国に追い抜かれた途端、実効的な軍事力が無い分、
そのプレゼンスの低下は著しいものがあります。自ら軍事に縛りをかけ、
経済や技術、文化など民生面での外交に特化して、「平和国家日本」と自己
満足してきたツケが、今になって表面化しつつあると言えます。
韓国にとっても、北朝鮮という“ならず者”国家を抑えるのに、本来的には
その何倍以上も“ならず者”国家である中国に頼らなければならないという
のは、率直に言って幸福なことではないはずです。
わが国が、日米同盟を基軸としつつ、憲法を改正するなり、憲法解釈を変
更するなりして、主権国家として当然持つべき国際法上の自衛権を確立し、
防衛力をしっかり整備していけば、韓国やインド等の価値観を同じくする
国々から見ても、同盟や連携のできる国、頼むに足る国へと脱皮すること
ができるはずです。
一般的な人間関係のレベルで考えても、自立心の低い人から助けを求め
られても、人々は吸い込まれるのを懸念して手を差し伸べづらく感じますが
、逆に自助努力で頑張ろうとする人に対しては、人々も助けの手を差し伸
べやすいという面があります。
国家間の関係でも、同じようなことが言えるでしょう。安全保障面でアメリカ
にべったり依存して、自らは主体的に動く気の無いわが国と連携や同盟し
ても、地政学的な要素を別にすれば、他国にとって十分なメリットは感じら
れないでしょう。わが国が当たり前の主権国家として自衛権を確立し、防衛
力を整備していればこそ、一緒に組んで事に当たることのできる仲間、同盟
に値する国として認められるはずです。
ともあれ、わが国が同盟や安全保障協力を呼びかけても、相手国から
「願い下げ」と言われるようでは寂しい限りで、逆に先方から「是非に」と
すぐさま応答が来るぐらいにプレゼンスのある国になりたいものです
(*`・ω・)ゞ・