北朝鮮要人訪中:中朝、関係修復図る 米朝首脳会談控え
【北京・河津啓介】北朝鮮の最高指導者級とみられる要人が電撃的に中国を訪問した。北朝鮮は南北、米朝の両首脳会談を前に、冷え込んでいた中国との関係修復に乗り出した可能性がある。一方の中国も、朝鮮半島問題で「蚊帳の外」に置かれることを懸念し、北朝鮮要人の訪中受け入れを急いでいた。南北、米朝の両首脳会談を前に、中朝首脳級会談を実現させ、関係改善への弾みをつけたいという点で思惑が一致したようだ。
中朝関係はかつて朝鮮戦争(1950~53年)を共に戦い、「血盟」とも表現された。だが近年は、北朝鮮による度重なる核実験で関係は悪化。加えて、習近平国家主席が中国の最高指導者として、北朝鮮より先に韓国を訪問したことにより、金正恩(キム・ジョンウン)朝鮮労働党委員長との間で相互不信に陥っていたと指摘されるまでになっていた。
また、国連制裁に中国も同調したことで、北朝鮮経済は大きな打撃を受けたもようだ。経済状況を改善させて体制を安定させたい金委員長としては、中国との関係修復、制裁緩和、経済支援という流れは不可欠だったようだ。
さらに、最近では4月末の南北、5月までの米朝両首脳会談を控えるため、中国の後ろ盾を得て、自国に有利な環境で二つの首脳会談を進めたいという思惑があったのは間違いない。
一方の中国は、華春瑩(か・しゅんえい)外務省副報道局長が27日の定例記者会見で、中朝の歴史的なつながりを指摘したうえで「中国は北朝鮮と共に両国の友好関係の発展に力を尽くしたい」と強調した。
中国国内メディアからも関係修復に向けたシグナルは出ていた。昨年、北朝鮮メディアと批判合戦を繰り広げた中国紙「環球時報」が19日付社説で「北朝鮮は尊重に値する国だ」と指摘。対米関係も見据え、中朝関係の再構築が中国にとって重要課題になったとの趣旨だ。
北朝鮮情勢が緊張した際、中国は対話解決を一貫して主張し、南北、米朝の直接対話を支持・歓迎してきた。ただ、中国国内では北朝鮮の最高指導者が中国より先に米国、韓国の首脳と会談するという前代未聞の事態には大きな不満が上がっていた。
また、対米関係にまつわる状況の変化もある。中国はこれまで米国に配慮する形で北朝鮮への制裁圧力を強めてきた。ただ、最近の北朝鮮と米韓の接近により「中国の影響力が揺らぎ、安全保障上のリスクを抱えかねない」(時殷弘・中国人民大国際関係学院教授)との状況が出てきた。加えて、最近は貿易摩擦の激化により米中関係が複雑化する。このため、中国としては、米国に同調する形での対北朝鮮圧力強化の再検討を迫られている可能性がある。
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