9月7日の読売新聞夕刊に、梨木香歩さんの新刊「沼地のある森を抜けて」(新潮社)が大きく取り上げられていた。初めて公開された著者の写真も載っている。カヌーに乗られている姿が、なんとも凛々しい。
今回のお話は、ぬか床にある日、卵が出現し、生命が誕生するという、なんとも奇怪な作品。初めて自然科学に真正面から取り組まれたのだとか。
「裏庭」を読んだときから、梨木香歩さんの大ファンになって、雑誌に掲載されたものも含めて、ほとんどの作品を読んできた。けれど、今回はかなり毛色が違う。いつのまにか、そんな高みにまで昇られていたのかとまぶしくなる。
インタビューの中には、「生命の根源」「本能」「精神文化」などという言葉が出てきて、梨木さんがものを書く以前に、あらゆることを深く掘り下げて考えておられる姿勢が伝わってくる。どの本を読んでも、独特の感覚が貫かれているのは、その深さや奥行きにあるのかもしれない。
なんだかフラフラと短距離マラソンでもしていたようなわたしは、絶えず長距離を走っている人に、何のために走っているのか、あなたが生まれてきた意味は何なのかと問いただされたような気になった。哲学の本を読みあさっていた頃は、そうしたことが絶えず頭にあったのに、生活に流されていたのか、そういうことがすっかり抜け落ちていた。
だから、作品が希薄。うすっぺらい。物語のもっともっと奥、奥行きがない。そういうのは、日常的に考えていて、はじめて作品ににじみだしてくるものかもしれない。
忘れかけてた大切なことをこの記事に思い出させていただいた気がする。
ずれていた軸が修正された感覚。締め切りまでまだまだ間に合う。がんばろう。
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