中編を投函したあと、まだ疾走した余韻のようなものが残っている。
終わっちゃったなあ。
ああ、だめだめ。そんなにぼおっとしてると、またまたヤツがやってくる! わたしの中の体育系の性格を持つサミーコーチだ。
「すまんのぉ、じゃまするで!」
ほら来た! ヤツが、門扉を大きく開け放ち、やってきた。←そやから、どこやねん!!
洗濯ものをたたんでいたさとみが、ギクッとして、立ち上がる。
「コ、コーチ、あの……、何のご用でしょうか?」
「何のご用でしょうかやないやろーっ!!」
せっかくたたんだ洗濯物をベンチからはらいのけ、サミーが声を荒げる。
「ええか。のんびりしてる暇はないんや。次の試合の日が決まった」
「し、試合ってそんな急に……」
洗濯物を拾いながら、さとみが不安げにつぶやいた。
「急にもくそもあるかい! 試合は15日、相手は日産学園や」
「にっ、さ、ん……」
さとみの手から、バサッと洗濯物が落ちる。苦々しい試合が思い出された。日産学園とは、過去に何度か試合をしている。だが、1999年に一度勝ったきりで、あとは連敗している。
「ムリです!」
さとみがキッパリと言い放った。
「相手が強過ぎます。どこをどう攻めればいいのか、まったくわからないんです!」
サミーコーチが、ギロッとさとみをにらみつける。
「戦う前から、弱腰でどうするんじゃ!! ここに、過去3年の入選作品と選評がある。
http://www.nissan-global.com/JP/PHILANTHROPY/FAIRY/
まずは、これを読み込んで、入選作のタイトルくらいは写経しろ!! 目と心と体で、相手チームを知り尽くすんや!!」
「ちーっす!!」
弱りかけてたさとみの魂に、また灯がともる。
「よしっ、そしたら次は、100本ノックや!」
「100本ノックゥ?」
「ああ、わしがお題を出す。それを3つ組み合わせて、童話を作るんや」
「お、お題って、そんな古くさ……」
さとみが戸惑ってるのもかまわず、サミーコーチはお題を吹っかけてきた。
「いくぞ! 牛乳、ペットボトル、たぬき。どや!これで童話を作れ!!」
「そ、そんな、ムチャな……」
「ムチャもくそもない! 次いくぞ! たわし、明太子、そよ風。ほら、できたか!!」
「コ、コーチィィィィィ!!」
悲鳴に近いさとみの声がリビングにひびく。厳しい特訓は、夜がふけるまで続いた。しかし、さとみの胸には、(こんな方法しかないのかしら…)という思いが強く押し寄せていた。そして、
(この日記、いつからお笑い路線になったのかしら……)という思いも・・・。
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