《この記事は2006年に投稿したものを再投稿したものです》
韓国ドラマは視聴率にとてもシビアです。
ネチズン(コンピューターネットワークを使いこなし電子空間の中で活動する人々。ネットワーク上のシチズン(市民)という意味)により放送回数が増減したり、内容まで変わることが多々あります。
それらを踏まえて1999年同日同時刻にスタートしたドラマ。
それが「愛の群像(原題:私達は本当に愛したのだろうか)」と「青春の罠」(シム・ウナ、イ・ジョンウォン、チョン・グァンリョル主演)です。
前者はペ・ヨンジュン主演で日本でも有名。私も大好きな作品です。どちらも細かな違いこそあれ、主人公が自分の野心の為に女性を手段とするところがよく似ています。
「愛の群像」の脚本はノ・ヒギョン。当時新世代女流作家として『鬼才』と言われ、主演に人気俳優ペ・ヨンジュンを起用するということで注目を集めたそうです。
一方の「青春の罠」はキム・スヒョン脚本。『言語の魔術師』と言われるほど独特な美しいセリフを書くベテラン女流作家で、二人の番組がぶつかることはプライドをかけた対決として韓国でおおいに騒がれたのだとか・・・。
更にもうひとつ書かせていただくと「愛の群像」でギルジンを演じたイ・ジェリョンと「青春の罠」でヨンジュを演じたユ・ホジョン(「ローズマリー」で有名)は夫婦。キャスティングが二転三転する中で決まったこの事態に当人達はしばらく気づかず
「あ!俺達競争する番組に出ちゃうよ」と後で語ったのだそうです。
ちょっと皮肉ですよね。
そんな諸事情を踏まえた上で、今回はこの「青春の罠」に焦点をあててみたいと思います。
貧困から抜け出すためドンウ(イ・ジョンウォン)は、長年夫婦のような関係で子供までもうけ、実家に仕送りまでさせていたシム・ウナ(ユニ役)を捨て、突然裕福な娘ヨンジュ(ユ・ホジョン)と結婚すると宣言します。
泣く泣くドンウの要求を受け入れるユニ。しかしここで思わぬ事件が・・・。
まだ幼い娘ヘリムが事故死してしまうのです。危篤の知らせを無視し、お葬式にも顔を出さずにヨンジュと逢瀬を重ねていたドンウ。
ユニは娘を失った喪失感と絶望で復讐の鬼と化し、言い訳にやってきたドンウに別人のような形相で
「あなたを壊す」と言い放ちます。(このセリフは「私の名前はキム・サムスン」でもパロディになってましたね)
このシーンは鳥肌ものです。ドンウは初めて彼女に恐怖を覚え始めます。
同時にユニは以前から自分に好意を寄せていたヨングク(チョン・グァンリョル)を利用しようと接近。ヨングクはよりによってドンウの恋人ヨンジュの兄です。
彼はユニの心の迷いに気づき、事情を問いただします。良心がとがめ、ドンウの名前を伏せて全てを話すユニ。それを聞いたヨングクは
「僕を利用しなさい。(喜んで)利用されましょう」
と言います。
この二つのセリフはあまりにも有名。実際に見たときは「これか!」と変な感動を覚えてしまいました(^_^;)。
他にもこのドラマ、他では滅多に見ない特異な設定があります。ヨングク達兄妹はホステス出身のイ女史の実子。しかし彼女は財力は握るものの肝心な正妻の座に着くことはできず、いつも恨み言ばかりいって暮らしています。
ヨングクは子供を産めなかった正妻のハン女子の家に頻繁に出入りし、彼女を「お母さん」と呼んでいます。痴呆症の祖母の世話をし、一方では放蕩を重ね、バツイチです。強気な発言とは裏腹に父の会社を継ぐことに怖気ずき、二の足を踏んでいます。
何度もドンウに身を引いてくれと頼まれ、自分の醜さ、あくどさを嫌悪しつつ結局ヨングクを愛し始めるユニ。彼女の結婚はヨングクの妹のヨンジュより優先され、ドンウは全てを諦めざるを得なくなります──。
「あなたの放った矢はドンウを刺し貫いて、私の胸にも突き刺さった」
全てを知ってもなおドンウを諦められないヨンジュの、ユニに向けての血を吐くようなセリフです。
自責の念にかられ、ユニはヨングクに「あなたの靴になります」と言います。
結局このドラマ、「愛の群像」に圧勝し、歴代視聴率18位53.1%を獲得。
SBS演技大賞も受賞する結果となりました。
「愛の群像」を愛してやまない私にとっては複雑なドラマでしたが、やはり見て納得・・・。こんな鋭いセリフを言ってみたいと思う一方、とてもとっさに口に出来るような言葉じゃない と何度感じたことか…。
機会がありましたらぜひご鑑賞を・・・。とっても“大人な”ドラマですよ。