第12章 人口の爆発的増加(※7)
世界人口が爆発的増加をみせる中で、日本が日本人口に汲々としていても、食糧自給率だけとってみても断然世界に依存しているようではパイの取り分がやがてはなくなり、皮肉にもようやく芽生えた増加人口に食べる物さえないという局面にさえ置かれざるを得ない危惧が拭い去れない。
世界が平和裏に動いていくだろうことを誰も保証できない昨今である。
世界人口は2022年において80億人に達した。翌2023年にはインドが中国を抜いて世界で最も人口が多い国になると見込まれている。
世界人口の推定推移は、2030年に約85億人、2050年に97億人、2080年代中に約104億人でピークに達し、2100年までそのレベルに留まると予測されている。2050年までと区切ると、増加する人口の半数はサハラ以南アフリカの国々で、残りの半数は特定の8カ国に集中すると見られているが、この8カ国の内訳は、コンゴ民主共和国、エジプト、エチオピア、インド、ナイジェリア、パキスタン、フィリピン、タンザニアとなる。
中国の人口は2022年時点で14億2589万人で、今後、2030年に14億1561万人、2040年に13億7756万人、2050年に13億1264万人と減少が続いていく見込みなので、中国当局は人口の減少食い止めと増加を先進国以上に敏感に受け止めており、とりわけ生産年齢層増加の為の少子化対策や高齢化対策に本腰を入れ出している。こういった施策によって将来人口の実数は推計値を置いてゆくかもしれない。
インドは2063年に16億9698万人を記録したあとに減少していくとみられている。インドの人口構成は半分以上が25歳未満で、今後さらなる経済成長が見込まれている。国土面積は329万K㎡で世界7番目であり日本の8.7倍。GDP(名目)は3兆1763億ドルで世界6位(IMFの2021年統計、日本は3位)、GDP成長率は8.7%(2021年度/世界銀行発表)と高水準だが、国民一人当たりのGDPに目を向けると、145位と途上国レベルの低水準に留まっている。主要な貿易相手国は米国、UAE、中国で、日本は10位以下。軍事予算は約651億ドル、兵力でいうと146万人で、核保有国でもある。特筆すべきは、IT大国としての存在感だ。エンジニア数は200万人超で、それは米国、中国に次いで世界3位(2020年時点)にあり、工学系の学生が毎年150万人も卒業し、英語を話せる国民が1億人以上いるといわれている。
日本はこれら人口大国に呑み込まれるかというと、対インド戦争でも起こらない限りその杞憂はないどころか、そうしたインドの実情をマーケットとして虎視眈々とうかがう日本企業がこれまで同様あり倍増していくものと思われる。
また、インドの内政をみると、若年層の雇用対策など、医療インフラの整備も不十分な中、人口増加にも戸惑いの影が漂う。
特筆すべきは、インド人のマインドには伝統的価値観として大きな家族を持つこと、また子や孫が高齢者の世話をすることを重要視する趣意があり、日本の核家族化以前のような状況にあることから、日本が少子化対策でインドに見習う点はどこにもないことがうかがえる。又、‘21年の15~24歳の失業率は約28%というデータもあり、貧困層は約2億2890万人とされ、路上生活者は300万人に上るとの推計もあるように、人口増はむしろ経済や医療を圧迫する懸念もある。
大きければ大きいほど内訳個々も比例して大きくなるというわけだから、マイナス面も大きくなる次第なのであろう。
資料) インドの現況と将来
2023年3月2日、中国の経済情報メディア・第一財経は、経済成長を続けるインドが4年後に日本を抜いて世界3位の経済大国になる予測を立てていることを報じた。
記事は、昨年のインドのGDP成長率が6.7%に達し、世界経済が苦しむ中でインドが新型コロナの苦しみから抜け出した2021年から急成長を始め、22年にはその勢いがさらに加速したと紹介。多くの国際機関が23年の見通しも一層明るいとの見方を示しているとした。そして、インド国内では早くも世界第3の経済大国となるタイミングを考え始めており、インド中央銀行の分析では年6%の経済成長率を維持すれば2025〜26年にはドイツを抜き、27年には日本を抜いて世界第3の経済大国になるとの予測を示したと伝えている。
また、急速な経済成長にインド政府も強い自信を見せており、モディ首相が昨年8月15日の独立記念日演説で「われわれが生きている間、すなわち25年以内にインドを先進国に変えなければならない」と語ったことを紹介した。
さらに、多くの発展途上国が経済を輸出に依存しているのに対し、インドは若い世代を中心とする人口構造に支えられた活発な内需が経済成長を支えており、個人消費額がGDPの60%を占めていると指摘。国連の予測によればインドの人口は今年4月にも中国を抜いて世界一になる見込みで、平均年齢28.7歳、15〜64歳の生産年齢人口比率が63.6%というインドにとって人口増は経済成長を続ける上で有利に働くとした。その一方で、インド・ジンダルグローバル大学の黄迎虹(ホアン・インホン)教授が「人口増をボーナスに変えるには、良好な教育と産業、そして社会における十分な尊厳と自由が必要だ」との認識を示したことを伝えている。
記事はその上で、インド政府が現在持続的な高成長に向けて経済構造改革を進めており、モディ首相が製造業の対GDP比率を15%から25%に引き上げ、製造業で1億人分の新たな雇用を創出するとともに、世界の貿易総額に占めるインド製品の輸出額の割合を1.7%から3.4%に倍増させる目標を掲げていると紹介。19年には「インドインダストリー2.0」計画を打ち出し、バッテリー、メカトロニクス、自動車、製薬、電気通信、太陽光など製造業10分野の発展に力を注ぐ姿勢を示したほか、22年には7600億ルピー(約1兆2600億円)を投じて半導体、ディスプレイの設計、製造分野で世界的な競争力を身につけるための奨励計画も発表したとしている。
そして最後に「インドは世界における製造、供給の新たな中心地になるとしている。今はまだその推進段階だが、いつの日か国際社会がインド製造業の実力、潜在力を軽視できなくなる日がやってくるだろう」と結んだ。(翻訳・編集/川尻)