第2章
「こんにちは。ちぇっ!僕、藤谷は調布から布田駅そばを通り布多公園を抜けて自転車でここへ来てるんですけどね、ああ雨の日は電車で来てるよ、濡れんのでぇ嫌いなんだ、ちぇっ!自公はあいも変わらず一枚岩ですよね。自民が何かしくじれば公明、幽霊宗教が文楽みたくのこのこ出て来やがって尻ぬぐいしやがる、してやったりと見たもんだ自民のメンツたちにゃあ、この組み合わせが老夫婦のようになかなか崩せないですよ。僕は、立憲民主党を、こう見えても応援してたんだ、そうしたら票田の労組、連合に右に左に振り回されてる姿ばかりが目につくわいな、僕が立民の何に好意を抱いてたかって?野党第一党でリベラルと言っちゃあやっぱりそこを抜きに語れなくない?ところが二大政党制の一翼を担う筈のそれは言論が柔弱で何をバックボーンにしてるのか、一般市民には何も浸透しねえ、僕にしたところで、あれは鈍くなってきているが、思想に関しては敏感だ、その僕をしてなんにも感じられねぇってことは随分じゃあないですか、えぇっ?、確かに立民はホモレズの集団かもしれないが、僕にはここの代表の言葉を借りりゃあ、どうでもええ、ってとこだ、立民が少数者や弱者の代弁者というなら、共産の方がよっぽどましだ、ただし共産のアメリカからの自立っていうのはあくまでも安保だけを指してるんですよ、かと言って日本がこれまで戦争せずにこれたのは第9条があったからだなんて、めしいみたいなうつつをぬかしてやがらぁな核の傘下にあったがため、核を持たずお化粧はきれいで大人しかったが今まではアメリカ覇権の影のなか“こっそり飯”を食らってこれただけなんですよ、今まではね」彼と面と向かって着席していた田崎にここまでまくし立て、けれど田崎にはなにかしら静謐さを感じたというか、それが大仰なら木漏れ日を浴びているような誠実さを受けたのだが、藤谷は間髪入れずにこう締め括った。「あなたの名前は?」田崎もあてられてこう切り返した。「私はノンポリです」そして、「自己紹介し合いましょう。私は田崎と申します。芸術家です。あなたは藤谷さんでよろしかったでしょうか?」