読む、書くの雑多な日々、気まぐれな日常

好きなこと、雑多な日々、小説などを色々と書いていきます

アイドルのペット番組ということで(ユリ)カメラマンは、あの人でした

2021-02-26 20:45:16 | オリジナル小説

 ユリちゃん、うちの番組、良かったらでてくれないかなと言われて驚いたのも無理はない、最近ペットや子供の番組が増えているし、人気もあるのは知っていた、だが、自分にそんな話がくるとは思ってもみなかったのだ。
 
 「ありがとうございます、でも、母の家で飼っているんです、それに」
 
 「最近、保護犬とか多いだろう、アイドルや芸能人って純血、血糖に拘る人って多いけど、勿論そうじゃない人もいるけど、野良犬を引き取ったって聞
いたからね」
 
 ユリは迷った、つい最近、吹き替えの仕事を始めたせいか、色々な人から声をかけられるようになったのだ、最近は洋画の吹き替えを、それこそ、ほんの一言の役だが、引き受けた。。
 
 「初めてだというけど、経験を積んだら、もっと上手になるんじゃないかと思うんだ」
 
 自分の父親ぐらいの年齢の声優に言われたのがきっかけだった、あの人がそういうならと声をかけてくれた人がいてユリは驚いた、声の仕事は以前から憧れていた、少し前から歌ってみないかと声をかけられて、レッスンを始めた事も関係しているのだろうか。
 でもペット動物関係の番組はと悩んでいる自分にだったら自宅で犬と一緒に写真を撮るだけでもと言われてしまった。
 
 最初は番組で取り上げる予定だったが、自分ではなく母が飼っているのだからとユリは断った、だったら、雑誌で紹介するだけでも自宅で写真を撮るという形ならと半ばごり押しのように懇願されて、最後にはユリも同意した。
  これからの仕事の幅も広がるし、写真を数枚、撮るだけならいいんじゃないとマネージャーに言われてユリは母親に連絡をした、娘の今後の仕事の為にもと母親は了承してくれた、母が♂だと言うことを事前に説明して撮影の日が近づいた。
  
 
 「井上昌己(いのうえまさき)って、確か、LIMA産の写真集を手がけた人でしょ」
  
  撮影の前日、マネージャーから話を聞いて驚いた。
  
  「そうなのよ、最近になって本格的にカメラマンの仕事を始めるみたいで、今、色々な分野でこだわりなく仕事をやってるみたいなの」
  
  直接の面識、会った事はない、だが、二週間ほど前に発売された写真集は発売前から噂になっていたくらいだ、アイドルのLIMAを知らないという人も井上昌己(いのうえまさき)の名前で購入したという人もいるらしい。
  そんな人が、何故と思ってしまったのも無理はない。
  
  
  当日、朝一でマネージャーとカメラマンの井上、アシスタントの男性二人が自宅へやってきた。
  
  「あ、あの大丈夫ですか」
  
  若いアイドルの自宅、ペットの犬というので可愛らしい小型犬を想像していたのかもしれない、家の中でごろりと寝転んでいる二匹の犬を見て若い青年二人は驚いた、というより、怖がっているように見える。
  
  
  「この犬、ドーベルマンじゃないか、耳と尻尾が垂れてるから、あれって思ったけど」
  「純血って事か、でも野良だって」
  「最近は多いんだよ、大型犬は飼ってみたら大変だって、保健所や山に捨てたりするのが」
  
  若い二人の会話にユリは驚いた、犬の種類など詳しくはなかったからだ、映画やドラマでドーベルマンを見たことがあった、だが、耳がピンと立っていて、尻尾も短かかった、今、自分の目の前にいる犬は耳も尻尾も長く垂れているのだ。
  
  井上はシャッターを切った、犬たちは最初は気にしていた様子だが、慣れてきたのか、気にならなくなったようだ、ユリの隣で座っている姿を何枚か撮る、動物相手なので長時間の撮影は迷惑だろう。
  
  「これで終わりにしようか」
  
  「そうですね」
  
  「家の中じゃなくて、庭で撮影とかしなくていいですか」
  
  アシスタントの言葉に、そうだなと思いユリさんと井上は声をかけた、そのとき、二匹の犬が突然、立ち上がり、部屋を飛び出した。
  
  「えっ、シン、ノブ」
  
  慌てたユリを見て母親の恭二(きょうじ)が笑った。
  
  「美夜ちゃんじゃないかしら」
  
  
  

 「すみません、これ、本屋に行こうとしたら途中でリヤカーを見つけて、この間の夕飯のお礼です、おお、勿論、君たちの分もあるぞー」
  
  わっしわっしと白い髪の女性が二匹の犬の頭を撫でる、玄関でユリの母親と話している様子に声をかけたのは井上だ。
  
  「どうして、君が」
  
  「あ、あの、誰」
  
  ああ、そうか、あの時は髪も伸び放題、髭も伸び放題だった、分からなくても無理はない、LIMAと一緒にいたカメラマンだと井上は自己紹介した。
  


 「友人の娘さんで二匹の散歩を頼んでいるんです、アルバイトですね」
 
 恭二の言葉に井上は、そうですかと頷いた。
 
 「さっきの女性も一緒に写真が撮れたらよかったですね、井上さん」
 
 「スタジオで撮ったら、いい写真が撮れるんじゃないですか、ユリは黒髪だから、女性二人に犬が二匹って映えると思うんですけど」
 
 アシスタントの言葉に井上はそうだなと呟いた、だが、沢木、市川が許すだろうかと思いながら、ふと視線が犬に、そしてユリに向けられた。

 

 

 「カメラマン、井上って」
  
 「そうなのよ、娘のユリと一緒に写真を撮りたいっていうんだけど、いや、勿論、断ったわよ、ユリはともかく、あの子はアイドルでも芸能人でもない
んだし」
  
  えらい、よく断ったと電話の向こうから聞こえてくる声に恭二は内心、ほっとした、良子は男の時からそうだったが、怒らせると怖いのだ。
  
  「ただね、ユリがね、彼女に見学に来て欲しいって」
  
  「何、それ」
  
  「別件よ、驚かせたいって、吹き替えの現場をね」
  
  「井上に関係ないならいいけど」
  
  「過保護すぎない」
  
  「何とでいってくれて構わないわ、娘は溺愛がモットーよ」
  
  まあ、娘には甘いのは自分もだけど、そんな事を思いながら恭二はくすりと笑った。
  


後悔は、いつも遅すぎる、浮気した男の代償は、妻の笑顔だった

2021-02-15 13:00:00 | オリジナル小説

 「ねえっ、あなた ○○さんの旦那さん、最近、見かけたことある」

 妻から聞かれたのは夕食後のことだ、挨拶を交わす程度で親しいという訳ではない、いきなりだったので驚いた。

 「どうしたんだ、いや、最近見かけないな、そういえば」

 「浮気してるって、近所の人が言ってたのよ」

 「まさか、嘘だろ」

 浮気という言葉に内心ぎくりとする、まさか、ばれてないよなと思ってしまう、だが、妻は、あっけらかんとした調子で、近所の人が噂してたのよと言葉を続けた。
 話題を変えようと、俺は噂だろうと少しきつめに表情を変えることなく、確証もなしに、そんな事を言うんじゃないと妻に言った。

 「うーん、でも、皆知ってるみたい」

 佐野原(さのはら)の奥さんが話してたからね、その言葉におしゃべり好きの暇な奥様ってやつはと内心、嫌な気分になってしまった。
 しかし、近所の旦那が浮気、それを薄々、感づいている人間がいて話のネタにされているというのは正直、いい気分ではない、気をつけようと思ったのは浮気をしているのがほかならぬ自分だからだ。


 翌日、俺は会社に行く途中、噂の人物に会ったからだ、驚いたのは右足にサポーターを巻いていることだ。

 「どうしたんです」

 「駅の階段で脚を滑らせてしまってね、たいしたことはないんですよ」

 骨折はしていない、筋を痛めただけだからという、でも、この人確か車を持っていたはずじゃなかったか、電車なんか使うんだと思ってしまった。


 今日、○○さんに会ったよ、脚を怪我したみたいで、大変だなあというと妻は、ふーんっと素っ気ない返事を返してきた。

 「それ、自業自得ってやつじゃない」

 気になる言い方だ、しかも、妻の表情は冷たいというか、笑っているようだ。

 「嫌な態度だな」

 「だって、浮気だよ、駅の階段で脚を滑らしたって言ってるんでしょ、皆、分かっているわよ、嘘だって」

 俺は内心、むっとして、妻を睨みつけた、すると突き落とされたのよ、という言葉が返ってきた。
 
 俺の顔を見ながら奥さんを蔑ろにするからバチが当たったのよ、まるで自分は、いや、周りは知っているのよと言いたげな口ぶりだ。

 馬鹿馬鹿しい、当てずっぽうな、それこそ井戸端会議の女達が妄想を膨らまして、そんな事を言っているんだと思った。

 ところが、その後も続いた、脚を怪我したと思ったら、その数日後、○○の夫は顔に傷を負っていたのだ、偶然、出会ったとき、俺の顔をどこか罰が悪そうに見る相手に俺はどんな言葉をかければいいのか、迷った。

 「どうしたんです」

 きまりを悪そうに俺の顔を見る男は浮気の結果ですよと、ぼつりと呟いた。

 「不満なんてありません、ただ、少しだけ、相手から声をかけられて有頂天になったというか、馬鹿ですね、離婚ですよ」

 「えっ、確か、お子さんが」

 妻が引き取ります、自分は一人ですと呟く相手に思わず女性はと尋ねてしまった、浮気相手の女性はと聞いてしまったのだが、後悔した。
 笑われましたよと言われて俺は、えっとなった。

 「妻に捨てられた男なんてと、言われました」

 笑われたんです、何故でしょうねと言われて言葉に詰まる、力なく歩いて行く男の後ろ姿を見送りながら、俺はなんても言えない気分になった。


 その日、旦那さんに会ったよ、離婚するそうだよと妻に話すと何がと聞かれた。

 ○○さん、とこの夫婦、離婚するらしい、だが、返事は、ふーんと、それだけだ、まるで関心がないといわんばかりだ。
 妻に離婚を突きつけられて浮気相手の女性からも笑われて捨てられたと言うと、それでと妻は続きを促した。

 「貴方は何が言いたいの、他人の家庭の事が、そんなに気になるの」

 気にしていたのは、おまえ、近所のおばさん連中じゃないのかと言うと笑われた。

 「良かったじゃない、怪我と離婚程度で済んで」

 何だ、その言い方は、自分の妻なのに、この時ばかりは腹が立った。

 「浮気、するからでしょ」

 (まさか、おまえ)

 自分が浮気している事に気づいているのか、だが、それを聞いてしまったら駄目だ。

 「子供もいるのに奥さんを裏切って、ねえっ、もしかして、あなた」

 「馬鹿な事をいうんじゃない」

 えっ、何、馬鹿な事って、言われてはっとした。

 それから三日ほどが過ぎた。

 

 亡くなったみたいと言われて俺は聞き返した。

 離婚された男の人よと言われて、俺は驚いた。

 


 「○○さんのご主人、駅の階段で転んで」

 「打ち所が悪かったみたいで、意識が」

 それで、どうなったんですと俺は近所の奥さんに尋ねた。

 元、奥さんも旦那さんの家族も引き取りを拒否して、そのまま。


 「ところで、貴方の奥さん、あの駅をよく、利用するのよね」


 俺はその言葉に、えっと言葉を飲み込んだ、すると知らなかったのと奥さん達が自分を見ているに気づいた。

 (本当に知らなかったの)

 「まあ、昔から知らぬは亭主ばかりなりっていうしね」

 「本当ね」

 「仲良かったみたいだし」


 誰が、誰と仲かいいって、だが、聞く事ができない。


 俺は決心した、浮気相手と別れることを、だが。


 「別れましょう」


 その日、夕食が住むと妻から離婚届を突きつけられた、俺は拒否した、嫌だと。


 「俺よりも、おまえの方が浮気していたんじゃないのか、○○の亭主と」

 「何、言ってるの」

 自分が浮気しておいて、その言い分はないわね、妻の台詞にかっとなり、思わず両手を伸ばした。

 


 「ええ、悲鳴を聞いて、驚いて主人と一緒に見に行ったんです、ただ事じゃないって」

 「奥さんの首を両手で絞め殺そうとしていたんです」
 
 「以前から変だったんですよ、あたし達のおしゃべりに割り込んできて、浮気がどうとか」

 「奥さんに注意したんです、旦那さんのこと」


 俺は男の腕を振りほどいて、車に乗ると浮気相手の元に、だが、途中で。

 

 眠っていたのか、俺は目を開けると妻がにっこりと笑いかけてくる、よかった、ほっとしながら、ここはどこだと聞こうとして声が出ないことに気づいた、いや、それだけじゃない、起き上がろうとしても手が、体が、動かないのだ。

 「事故に遭ったのよ、覚えてないの」

 車でといわれて思い出した、浮気相手のところに行こうとしたのだ、だが、体が動かない、いや、それだけではない、感覚がないのだ。


 「ねえっ、こんな時だけど離婚、いいでしょう」

 俺の体が麻痺して、だが、リハビリを続ければいずれは治るだろう、だろうって、どういうことだ。

 「浮気していた貴方の面倒なんて」

 無理よと妻は笑った、いや、俺の両親もだ、あんなに尽くしてくれる嫁を裏切ってと反対に罵られた。

 違う、浮気していたのは俺だけじゃないんだと言いたくても声が出ない、筆談をして知らせようとしたが、駄目だった。


 「元、旦那さんですか、随分と、その想像というか、あるんですよ、自分が浮気をしているのは妻もしているからだと言って、ストレスのせいもあるか
もしれませんね」

 医者の言葉に俺は絶望した、だが、声がでない。


 「浮気なんてするからよ」

 ああ、そうだ、俺が馬鹿だった、だが、後悔して声を上げて泣くこともできなかった。
  


連続投稿は難しいわ

2021-02-03 22:44:55 | オリジナル小説

小説家になろうにも登録しているけど、連載、続き物にするなら連続投稿が望ましいという意見を見て、正直難しいと思ってしまったわ。
書き上げてしまった、完成した小説を少しずつUpしていくならできるんだろうけどの、途中で絶対、誤字脱字、変換間違いとか、色々気になるだろうし、そもそも短編、長距離はモチベーションを保つのが難しいのよ。
だから今回、初の連載、昨日Upしたんだけど、なろうからは削除した。
pixiv、ハーメルン、ブログで、異世界転生、未来世界の連載を書くなら、なろうでUpしようと思ったわ。
投稿サイトで、どのジャンルが人気なのか、知るのも大事だしね。


写真集を出す事になったLIMAリマ(アイドル)と彼女の撮影を受けた写真家

2021-01-26 21:04:22 | オリジナル小説

 その日、良子さんから携帯、部屋で使うデスクトップパソコンをもらったゲーム、ツイッター、ブログ、フェイスブック、SNSとかをやって見ると楽しいわよといわれて、参考書、雑誌とにらめっこして数日が過ぎた。
 難しい、わからない、諦めモードに入ったけどサポートセンター、掲示板などで聞いたりして、一通りの事がなんとかできたときは嬉しくなった。
 顔の知らない人間に皆、親切なんだと思いつつ、本、漫画、テレビドラマの感想とかをブログやnoteに書いたりして、夢中になっていると一日なんてあっというまだ。
 肩がバリバリ、固まって、ホットヨガ、ゆるゆるに肩甲骨を剥がすやり方をネットで調べて試して、そうでないときは本屋に行ったり。
 最初、良子さんはカードを渡してくれたけど、これは辞退したが、万が一の為といわれて悩んでしまった。
 
 「あなたのお母さん、亡くなる寸前、大金を手にしたのよ、詳しい事は」
 
 ごにょごにょと濁す、なんだか怪しいと思っていると宝くじと思ってくれたらいい、うーむ、訳ありのお金なんだろうかと思ってしまった、こういう場
合はスルーするに限ると思った。
 
 


 井上昌己(いのうえまさき)は写真家だ、といっても現在は、仕事を休んでいるといってもいい。
 撮りたいと思うもの、者が、なくなったのだ、だから断ると相手は残念だと言わんばかりの顔になる、すまないなと謝るしかない、だが、今回は違う、昔、色々と仕事の斡旋をしてくれた友人たっての頼みだと簡単に断るわけにはいかなかった。
 写真集を出したいと言ってるアイドルがいる頼まれてくれないかと言われて、最初は引き受けるつもりはなかったが、何度も顔を出して、そのたびに好物の和菓子の差し入れをされると、仕方ないという気持ちになってしまうのだ。
 
 「アイドルって女の子か、おまえ、女優、いや、女嫌いだろ」
 
 「そんなことない、ただ、その気になれないんだよ」
  
 「まだ、引きずってるのか」
 
 返事に困って、わからんと呟いた。
 
 「見てみたいもんだよ」
 
 すると、井上は手帳を取り出した。
 
 「この間、引っ越しの整理をしていたら出てきたんだよ」
 
 見せたのは写真だ、最近は古いやつもパソコンのソフトで綺麗に再現できたりする。
 
 「何だ、もう少しはっきりと撮れなかったのか」
 
 距離があったし、その時のカメラは古いやつだったからな。
 
 「頭の中に焼き付けてあるから大丈夫だ」
 
 「何だそれ、外人なのか、真っ白な髪なんて」
 
 「知らん、髪はウィッグだと思うんだか、ブリーチかな」
 
 「そう、なのか」
 

 久しぶりのオフ、休日、いつもならだらだらとベッドの中で過ごすのだが、今日は違うのよと大きく伸びをすると起き上がった、さあ、出掛けるわよと、帽子、度なしの眼鏡を、服装はシンプルにジャケット、スカート、スニーカーは万が一の場合に備えてだ、芸能人、アイドルだと知られて追いかけられたこともあるからだ。
 本屋に行こうと思ったのは偵察だ、もうすぐ自分の写真集が出る、広告とか貼られているだろうか、マネージャー、事務所の人たちは大丈夫、売れるよなんて言ってくれる、予約も好調だって言ってくれる、だが、アイドルなんて人気商売だ。
 女の命は花のように短いって、あれと同じだとLIMA(リマ)は思っていた。
 写真集の予約が好調なのは自分の人気ではない、写真家、あの人が撮るからだ。
 昔の写真家ということで話題性があったのか、気難しい性格で、今回、自分の撮影を引き受けてくれたのは一体、どういう心境なのか、業界でもかなり噂になったらしい。
 理由を突き止めようとしたレポーターもいたらしいが、実際のところは謎だ。
 現役だったときは凄く人気があったらしい、だが、突然、引退したのだ、しかも人気絶頂というときに。
 
 アイドル、芸能人の写真集コーナーに行くと自分より可愛い、美人、かっこいいなんてことは大勢いる。
 仕事をやめたいと思ったことがある、それでも皆から注目を浴びていることは気持ちがいいし、嬉しい、矛盾していると思いながら店に入ると、広告が貼られていた。
 嬉しいなんて思う、やっぱり自分は、この仕事が好きなんだ、それに今度、新しい仕事、アニメの吹き替えもやることになっている。
 原作を読んでおくのも勉強だよね、ライトノベルのコーナーに行く。
 
 びっくりして足を止めてしまった、本棚の前に立っていた人物が、あまりにも不似合いな感じかしたからだ、真っ白な髪の女性が棚を熱心に見ていると店員さんが女性に声をかける。

 「お客様、このシリーズ、ただいま品切れになっていまして、取り寄せも未定なんです」
 
 その言葉を聞いて女性は明らかに、がっくりとした感じだ、取り寄せが未定って人気作なのか、気になって通り過ぎる時にチラリと本棚を見上げてびっくりした、自分が今度、吹き替えをするアニメのノベルだったのだ。
 気になって、もう一度通り過ぎようとして女性の顔を見ようとしたのだが、そのとき、偶然、相手がこちらを見た、内心ドキリとする、何でもないふりをして通り過ぎた後、本棚の陰に隠れて鞄からスマホを取り出した。
 
 昔、男性に絡まれたときの写真、画像を確認する。
 あのとき、自分を助けようとおまわりさんと大声を出した女性、だが、その女性は男性に殴られて倒れてしまった。
 偶然だが、そのときの事は写真に撮られていた、普通ならネットで拡散されても不思議はない、ところが、何故か、そうはならなかった。
 最近は、ちょっとした事件でも厳しくなってきた、炎上系のユーチューバーが事件を起こしたり、夫婦喧嘩が暴行、殺人まがいの事件に発展したことも関係しているのだろう、ネット社会、警察は厳しくなっているときく。
 怪我をした本人でなくても家族や親族が通信社に申し立てをすればアップロードされる寸前でコンピューター、オペレーターが判断して画像などは削除されるらしい、だが、これは特別にプロバイダーから弁護士経由で入手した写真だ。
 あの女性は入院先からいなくなってしまった、退院、家に帰ったのか、それとも別の病院に転院したのかと思ったが、詳しい事は何故か、教えてもらえなかった。
 写真の女性は薄い茶色がかった髪色だ、でも、顔は似ている気がする、あれから随分と経っている、化粧で顔なんてどうでも変わる。
 スマホをガン見して、もう一度、確認と思ったが女性がいない、慌てて店の中を探すと、レジにいた。
 
 (これじゃ、ストーカーじゃない)
 
 でも、気になるのよと内心、自分に言い訳しながら、LIMAは見つからないように追いかけた。

 
 仕事は終わった、約束の時間まであと少しだ、時計を見ながら早めに行った方がいいだろうと思ったのは沢木、あいつの性格を知っているからだ。
 時間通りに行動できない人間なんて失礼だと先に帰ってしまうかもしれない、だが、出掛けようとしたとき、部下に呼び止められた。
 
 「先ほど電話がかかってきまして、ご友人の」
 
 何だって、こんな時に、断ろうと思ったが、相手の名前を聞いて耳を疑った、あいつが何故、こんな時に思わずにはいられなかった。
 住所も連絡先も知らない、いや、調べればわかるか、だが、向こうから会いたいなんて連絡が来るとは思わなかった、一体何の用だ。
 
 「すまんが、留守、いや、具合が悪いと誤魔化してくれ、商談なんだ」
 
 部下は、にっこりと笑う、察してくれたようでほっとした。
 
 


人生はどこでどうなるかわからない 貴族恋愛 前編

2021-01-21 11:18:19 | オリジナル小説

 貴族同士の結婚に愛情というモノはないと思っていた、何かの利害関係があってこそだと思っていのだ、だから、自分に嫁いでくるという女性、その存在に対しても最初から、いい印象などはなかった。
 
 妻となる女性はジュスティーナ・フランヴァルは五歳も年上ということで最初からカインは好印象を持ってはいなかった、それだけではない、会ってみて容姿も美人、一目を引くほどでもない平凡な顔立ちだったので、口には出さなかったが、内心、騙されたという気持ちだった。
 
 初夜も感慨深いモノではなく、あっさりとしたものだった、自分は彼女よりも若く精力もある、だから愛人を持っても不思議ではない、貴族なのだ。
 
 隠す必要はないと思い、子供を作らない事にしようと申し出た、怒るだろうかと思ったが、あっさりと承知する彼女に、ほっとするよりも内心、拍子抜けした。
 いや、それだけではない、これからはお互い自由に過ごしましょうと彼女の方から申し出たのだ、カインにとって、これは都合がよかった。
 
 一年が過ぎた頃、カインは病気になった、しかも性病、街の娼婦との交際が原因だろうと医者は顔を曇らせた、しばらくの間、遊びは控えるべきですとカインに告げた。
 
 困った、というのも正式な跡継ぎを作る為、ある貴族令嬢と婚姻の話を持ちかけていたからだ、愛人ではなく、生まれてきた子供を正式な跡取りにしたいというなら話は変わってくる。
 
 現在の妻はどうするのか、別れたとしても領地や資産の分配がされれば取り分が減る。
 正式な跡取りといっても十分な暮らしができるのか知りたいなどと言われて、すぐには返事ができなかった、そんなカインを見て相手の両親は娘と関係を持つ前で良かったと、判断を下した。
 
 相手側の両親から正式な断りが入ると翌日には貴族の間で噂が広まっていた。
 
 

 後悔したところで遅い、いつもなら相手の娼婦も馴染みのクルチザンヌ、高級娼婦を相手に遊ぶのだが、たまには違った女の味見がしたいと街で行きずりの私娼を買ったのだ。
 
 自分の上で、くねくねと体を動かして嬌声を上げる破廉恥ともいえる姿は顔をしかめるモノがあったが、満足感もひとしおだった、あれが、まずかったのだと思っても今更だ、取り返しがつかない。
 
 相手を責めて、責任を取らせたいところだが、国が後ろ盾のクルチザンヌや国娼と比べて、その日暮らしの娼婦に金などあるわけがない。
 
 それどころが、そんな女を相手にしたという事が知られたら貴族、王族の笑いモノになるだけではない、噂が広まれば街を歩けなくなる。
  


 「治るんだろうな」
 
 切羽詰まっていたカインに、医者はこともなげに言った。
 
 性交は禁止、薬を欠かさず飲むこと、その言葉にカインは苦い顔をした、子供の頃から女性に囲まれて、ちやほやされていたのだ、いつ完治すると聞いても医者ははっきりとした答えを出さない、こういう病気は個人の体力だけでなく、感染させた相手の症状によっても違いがある、相手の事を聞かれても答える事などできないカインは行きずりの街の私娼だと小声で答えた。
 
 医者は困ったなと思ったが、それを顔には出さなかった。

 最初のうちカインは医者の言いつけを守っていた、だが、数日、半月、一ヶ月もすると我慢できなくなり、隠れて夜の街へと出歩くようになった。
 
 ひどくなられましたなと呆れたような医者の言葉と鏡の中の自分の顔にカインは初めて恐怖を抱いた。
 最初の頃はわずかに顔が赤くなる程度だった、だが、それから青いブツブツ、吹き出物がではじめたのだ、時折、痒みも感じてかきむしってしまうが、それをすると細菌が皮膚の中に入り、もっとひどくなると言われて怖くなった。
 
 「なんとかならないのか」
 
 「飲み薬ですな、皮膚を移植する手術により治す事もできますが、今のままでは無理でしょう」
 
 薬は高価で取引にも条件があり、貴族でもなかなか手に入れる事ができないという、それだけではない、皮膚の移植というのは拒否反応が出て失敗する確率が高いというのだ。
 
 「確か、あなたの奥方様は医療方面の方々と繋がりがありましたな」
 
 「ジュスティーナが、初めて聞いたぞ」
 
 「特殊療養所、ご存じなかったのですか」
 
 夫婦なのにと不思議そうな目を向けられてカインは思わず目をそらした。
 
 妻に頼む、だが、それしか方法がないと医者に言われて、仕方ないと妻の住む館を訪れた、随分と久しぶりにだ。
 
 お互いに顔を合わすのも気分が良くないだろうと結婚して、しばらくしてから始まった別居、だが、尋ねてみても妻はいなかった。
 
 召使いの話によるとカインの父親のところだという、お見舞いですと言われて驚いた、父は具合が悪かったのかと尋ねると以前はと曖昧な返事だ。
 
 父親が病気にかかっていたと聞いてカインは驚いた、何人もの医者から治療が難しい、それだけではない、高額な医療費がかかる地と言われて息子の自分には迷惑をかけたくないと父親は内緒にしていたらしい。
 
 だが、それを医療関係者から聞きつけたジュスティーナが夫の父親を助けるのは妻として当然だと自分の撮っている治療院に入院、治療を受けさせたというのだ。
 
 久しぶりに会う妻は自分を迎え入れてくれるのか、助けてくれるかとカインは不安を感じながら訪れた、父親の住む家はこじんまりとした、まるで、そ
う平民、市井の人間の住むような家だった。
 
 「父上、本当に、父上ですか?」
 
 自分が結婚してから、家庭を持ったのだからと殆ど会う事がなく、疎遠になったといってもおかしくはなかった。
 
 だが、久しぶりに会う父親は想像よりも元気で若々しい、病気だったというのは嘘ではないかと思うほどだ。
 
 「久しぶりだな、カイン」
 
 自分を迎えてくれた父親は喜んでいた、だが。

 「おまえの事は聞いている、病気の事も、よく、ここに来れたものだ」

 その言葉にカインは父親の自分に対する怒りを感じた。

 「ジュスティーナは、いないんですか」

 仕事だといわれてカインは驚いた、結婚前は医療関係の仕事に就いていたらしい。

 「私の病気、治療の為に再び、仕事を始めたんだ、その為に財産の殆どを使い切ったといってもいい、だから私は領地も爵位も、あと半月で貴族ではな
くなる」

 初めて聞く話ばかりだ、驚いて言葉が出ないカインに父親は彼女の住む屋敷が売利に出されていることを知っているかと聞かされてカインは首を振っ
た。

 「治療を頼むつもりか」

 「夫婦、ですから」

 一人息子の自分に子供の頃から優しかった父親の顔を、この時、カインは、まともに見ることができなかった。

 「自分の女遊びが原因だろう、自業自得とは思わないのか」

 「貴族同士の結婚です、彼女だって承知の上で自分と結婚したんです、ですが、今は少しでも早く」
 
 その夜、久しぶりに会う妻の別人のような姿にカインは驚いた、結婚した当初は着飾る訳でもなく、化粧も、ただおしろいと紅をつけているだけだった。
 
 それが、今目の前にいる彼女はどうだ、本当に自分の妻なのかというほど垢抜けて綺麗になっていたのだ、もしかして、男でもできたのか。
 
 自分が病気になり、館に引きこもったまま、出掛ける事もせず陰鬱な日々を送っているというのに、自分の妻は垢抜けて綺麗になって。
 
 男ができたに違いないと思った。