邪馬壹国への道標「魏志倭人伝」魏使は福津へ上陸したの報告

2019年3月31日に行った『邪馬壹国への道標「魏志倭人伝」魏使は福津へ上陸した（第7回シンポジウム）』の報告です。
50名の会場で参加者は30名程。アンケートを見ると、お仕事の合間などで一部のみ参加いただいた方も居られました。お忙しい中ありがとうございました。
お答えいただけた分(25名分）からの集計で、どこから来られた方が多かったかは福津市9名・宗像市5名・北九州市3名・行橋市2名他でやはり福津市で在住の方が多いです。チラシ配布期間が一月も無かった割には多くの方に参加いただけたと思います。配布にご協力いただけました各団体＆施設（藍の家、あんずの里、カメリアホール、カメリアステージ、新原奴山古墳群案内所、津屋崎千軒なごみ、夕陽館、いせきんぐ宗像、海の道むなかた館、ホースプラン、宗像市文化財課）の皆様、本当にありがとうございました。
感想としては、「興味深い話だった」「目が覚めた」「宗像が末盧国の信憑性・根拠に納得できた」「古代中国が方位測定や測量技術が確立されていたことに驚いた」「また福津でやってほしい」「またカメリアホールでお願いします」「福永晋三先生とコラボしてほしい」と、記入頂けた分は概ね好意的感想を持っていただけた感じで大成功だったのかなと思いました。
年齢層は37～81歳で、60代12名、70代5名、50代5名、80代、40代、30代各1で、概ね他の勉強会の場合と似た感じの構成でした。若い世代にももう少し関心を持って頂けるような仕掛けも考えないとですね。今後は事後の動画だけではなくリアルタイムネット配信なんかも活用する方向で考えましょうかね。

動画に関しては、こちらのyoutube 再生リスト　2019カメリアホール 魏使は福津へ上陸した」から見れます。

末蘆国は間違いなく旧宗像郡 三村隆範


距離を測って 旧宗像郡へ　土佐野治茂


豊前国風土記から伊都国・不弥国を考える　井下田清智


古勝浦湾と古墳群　今なお残る海外交易の足跡　高橋誠也

ただ、この私の分については、前半は2018年のいせきんぐ歴史講座の内容をつまみ食いしたような感じですのでかなり説明不足になっております。後半部分についても福津市特に旧津屋崎町が大陸との交易の重要拠点であったことから、宗像地方が末盧国との説明なんですが、時間配分の問題もありかなり消化不良になってしまいました。
あと、すべて通して画質が悪い…。
私の分の資料に付きましてはここを選んでいただければパワーポイントでDLできますので、関心のある方はご自由にご使用ください。途中で出てくる永嶋文書はこちらに記事を書いております。

いせきんぐ宗像歴史講座2018その２魏志倭人伝をひも解く（スライドショー版）


末盧国宗像説の宗像地域全般についての解説は
いせきんぐ宗像歴史講座2018その6　古代のハイウェイ海の道は宗像が玄関(スライドショー版）


以下は、講演で話しきれなかった分の補足と言った内容です。

2019.06.02 「末盧国―宗像説」 高橋誠也, 福永晋三

2019年6月2日に田川市青少年文化会館で講演した分です。画質的にもこちらを見ていただいた方が良いかもです。


壱岐原の辻遺跡から田熊石畑遺跡まで1000里(約75km)で、壱岐から宗像を目指す場合途中に小呂島があります。福岡市周辺の方なんかは、小呂島は北で津屋崎(宗像)は東といった感覚をお持ちの方が多く（逆に宗像の人は福岡市はほぼ真西という感覚の方が多い）ので小呂島を経由するとすごく北に遠回りと思われる方が多いのですが、壱岐から津屋崎や神湊を目指す場合は真東に進むとほぼ中間の、壱岐から30kmほどの位置に小呂島は位置します。
宗像氏が秀吉により断絶され宗像と大陸との交易が途絶えるまでは宗像大社領であり、断絶後から無人島となり、後に黒田家が福岡入りした後1652年に遠見番所が置かれ漁民を移住させ、その他派遣された役人等が住民となったとのことで現在の島民が古来より住んでいた人々ではありませんが、島の氏神である七社神社は宗像神が祭られています。
壱岐～呼子でも約28km、唐津までだと40kmほどありますので、たまに質疑応答で出る「使者は早く陸地に上がりたいだろうから宗像の方までわざわざ行かないだろう」と言うのもおかしな話と思います。現在でも津屋崎から壱岐は見えますので、空気の澄んだ古代であれば、より高い山のある宗像は壱岐から視認はできたでしょう。
新原奴山古墳群からも小呂島、条件が良ければ壱岐も同方向に見えますので宗像側からは監視台的な役割や、壱岐・小呂島方面から向かってくる船に対し狼煙などで合図を出し誘導するのに適した場所の一つとなります。他には東郷公園のある渡の大峰山や現在のあんずの里運動公園なんかも良い場所ですね。

大峰山から見た壱岐


「現在の航路と同じ様なルートが安全性が高いのでは？重要だったんなら今も航路があるはず」と言われることがありますが、昔は壱岐と宗像の縁が深かったとは言え、大型船の建造や航海が制限された江戸時代を挟んでいますので、現在の九州本土と壱岐の主要航路は博多港発と唐津が主流になっています。昔は一番航路長が短い呼子からのフェリーもありましたが利用客減少もあり唐津発のフェリーと統合されました。現在の航路の安全性は高いのかもしれませんが、人や物の流動によって発着点は変わりますので「現在の定期航路からはずれている＝危険だったり時間がかかる」ではありません。冷静に考えればわかるのでしょうけど「自分の考えと違う＝相手が間違い」と考える方の場合はなかなか気付けないようです。
鐘崎の漁師では壱岐の勝本や下関、場合によってはもっと遠い港まで魚を持って行きますので、宗像～壱岐の航路が無いという事はありません。あくまでも定期旅客航路は無いというだけです。こう書くと「現代のエンジン付きの船と昔のは違う」とか言い出したりもするんですが、過去にも同様の航路があれば理解はしやすいかなと思い調べたところ、元寇の弘安の役の時の蒙古高麗軍の進路が小呂島ルートにかなり近いということでした。壱岐勝本～小呂島沖～津屋崎沖～志賀島といった感じで侵攻してきて、そのうち3,200人が津屋崎に上陸し打ち取られたとの記録があります。新原の百塔はその時の日本側犠牲者を弔ったもので今川河口付近（光の道終点付近）にある南無阿弥陀仏の碑は元軍および水難犠牲者を弔ったものとの伝承があります。
ただ、否定したいだけの方の場合は鎌倉時代と弥生時代の船は違うとかきりがありませんｗｗ。そもそも弥生時代の航路の話をしているのに現代の航路に無いのはおかしいって話がおかしいと思うんですけどね。今無い＝存在しないではないんですけどね。むしろ現代の船が選ぶ航路だから昔からこうだったはずって方がおかしいですわな。例えば「この本が示す東海道は国道1号と違う場所を通ってるからこの歴史書は間違ってる！」というような発言者と同じです。


弥生時代終盤期の予想海面高、現在より海面を5m上げた地図に和名類聚抄の宗像の郷、神社や歴史資産等を配置した地図です。赤い線は筑前国続風土記で触れられている上方への大道で、太宰府官道だったともいわれていたルートです。（現在は国道3号線や旧唐津街道に近い感じだったのではないか？との説が有力）芦屋～樽見峠～田島～大阪越え～勝浦～現在の対馬見通り～手光といった感じのようです。周辺には唐坊跡、舟つなぎ石、新原奴山古墳群などがあります。唐坊は昔の唐人町とか外国人街と思われるとわかりやすいかと思います。舟つなぎ石は年毛神社の南西にあり、少なくとも江戸時代初期まではこの辺りまで勝浦潟と言うか勝浦湾を舟で入ってきていたことがわかります。
また、年毛神社は海の中道（後述）の途中にあるのに真水が出ていたそうです。この勝浦湾を中心として海外も含む海上交通が発展しており、その要がこの地域でありその地理的特性や経験が後の津屋崎千軒の繁栄につながったのでしょう。湾を埋立て塩田としたことで一時期は筑前の塩の9割は津屋崎の塩だった時期もあったとか。塩が多く取れればそれを運ぶ舟運も発展していきますし。


青生東谿の国郡全図には、香椎沖というか志賀島沖辺りに松浦潟と記載されています。もう少し東にあれば「これは勝浦潟のことだ！」と言えるのにと思っていたのですが、貝原益軒先生の続筑前国風土記を読んでいたら…


勝浦潟は名所也。近年俗説に糟屋郡那多濵及び和白の濵を勝浦潟と云へど…とあります。同様に海の中道も近世里俗に那多濵を…。要は「最近奈多や和白の濵を勝浦潟、海の中道と言うけどこれは津屋崎の方なんだよ、奈多や和白だと古い歌の情景と合わないから使わないように」という事です。福岡ではなく江戸在住であった青生東谿さんは、近世俗説の通りにあの位置に松浦潟と書いてしまったということなんでしょうね。左下段渡の「無題詩集より此地民屋皆枕海曲」は、この辺りの家は海に沿って枕を並べるように建っているということです。魏志倭人伝の「濱山海居」山海に沿って住むと似た感じの表現ですよね。
牧大明神、昔の馬の牧地は、高田の牧を構成する重要な馬牧場が渡半島にあったとの記録と合致します。大陸から馬を移入した時、まずは海の中道の西端であるこの渡半島に放ちある程度慣れてから他地方に送っていたそうです。牧場自体は江戸初期頃までは残っていたようで朝鮮征伐時に毛利家臣団が渡・楯崎の馬牧場を見学した記録が残っています。馬にとって最初に踏む日本の地がこの津屋崎だったのです。


このあたりには昔、「万津浦」という地域があったと記述のある永嶋文書については「こちらを」見ていただいた方が早いです。



こちらを見ていただいた方が早いのですが、魏志倭人伝の記述が正しいのであれば、邪馬台国宇佐説と言うか豊前説であれば女王の都まで万二千里が実移動長であれば成立。帯方郡から女王国までの直線距離のことであれば阿波説が最有力、直線距離でも1・2割くらいの誤差はあるかもなら畿内説もまぁ成立となります。現在九州説の主力である筑紫、筑後であればまったく合わない。ただし、本居宣長先生の熊襲の類が邪馬台国と言い張り魏使をだました。魏志はきちんと測らず言われるがままに記述した。なら成立。
人口（戸数）問題についてはこちらを見ていただくと面白いかもです。

古代ハイウェイ海の道　玄関は宗像

「宗像と魏志倭人伝　その１」
「その２　末蘆国って宗像じゃないの？」
「その３永嶋文書」
「宗像と魏志倭人伝　その4　座談会しました」
邪馬台国の玄関末蘆国は宗像（宗像と魏志倭人伝その５　2018年３月シンポジウム）
邪馬台国の玄関末盧国は宗像 第6回シンポジウム動画あり
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