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寄生獣 セイの格率 感想。「悪魔というのを調べたが、一番それに近い生物は、人間だと思うぞ」「泉くん、君、泉新一くん、だよね?」

【ネタバレ】
2014年秋から2015年冬アニメの感想の続き、冬に終わったアニメの感想の、一応、最後です。
思ったより時間がかかってしまった・・・既に終わった春アニメもあるというのに。


◎「寄生獣 セイの格率」(きせいじゅう せいのかくりつ)(全24話)

総合評価5点(5点満点)。

1990年代前半までに連載された名作漫画「寄生獣」が原作だそうで。
バトルも気持ちの動きも良かったのですが、気持ちの動きが良かっただけに、後半はバトルが少し多い気がしましたけれど、好みの問題かも知れません。

主として次のことについて考える、良くできたシリアス系アニメです。
・ミギーの「悪魔というのを調べたが、一番それに近い生物は、人間だと思うぞ。人間はあらゆる種類の生物を殺し食っているが、私の仲間達が食うのはほんの1~2種類だ。質素なものさ。」(2話前半)。

これは、よくある話です。なお、どの人間にも善悪があり、善がある故に悪が際立つという面も、人間にはあります。

・村野里美の「泉くん、きみ、泉新一くん、、、だよね?」(2話前半(少し疑って、少し不安げな言い方)・後半(少し楽しげで、疑っている様子はない言い方)ほか、何回も。)。

人間とは何か、ミギーに寄生された新一は人間か、どこまで人間か、どこまで人間ではないのか。これは、以前のアニメの感想で何回か書いてきました。
同時に、どういう新一が里美にとっての新一なのか、里美が愛する新一なのか、という自己中心的な問いでもあります。

・田村玲子の「(寄生生物と人間は)合わせて一つ。」「我々と人間は一つの家族だ。我々は人間の子供なのだ。」「我々はか弱い。それのみでは生きてゆけない、ただの生命体だ。だから、あまりイジメるな。」(18話前半)。

共生できるのかどうか、そもそも人間は人間以外の何よりも偉いと思っているけれど他と共生する気があるのか。

・広川剛志の「こと殺しに関しては、地球上で人間の右に出る者はない。しかし君達(一応、「警官」(実は軍人の様子))がいま手にしている道具(銃)はもっと別の、さらに重要な目的のために使わねばならん。生物界のバランスを守るためにね。それこそが君達本来の仕事、つまり、間引きだよ。もうしばらくしたら人間全体が気付くはずだ。人間の数を直ぐにも減らさねばならんということに。殺人よりも、ゴミの垂れ流しの方がはるかに重罪だということに。
そして、我々という存在の重要さに気付き、保護さえするようになるはずだ。君らは自らの天敵を、もっと大事にしなければならんのだよ。そして、この天敵こそが、美しい大自然のピラミッドにピッタリと納まる。人間の一つ上にな!。それでやっとバランスが回復する。
地球上の誰かがふと思ったのだ。みんなの命を守らねば、と。」
「環境保護も、全ては人間を目安としたイビツなものばかりだ!。なぜそれを認めようとはせん!。人間一種の繁栄よりも生物全体を考える!、そうしてこそ万物の霊長だ!。正義のためとほざく貴様ら人間、これ以上の不正義がどこにあるか!。
人間に寄生し、生物全体のバランスを保つ役割を担う我々から比べれば!、人間どもこそ地球を蝕む寄生虫!、いや、寄生獣か。」
(21話前半)。

人間自身が作り出して人間自身も他の動植物も困っている、なのに、何十年にもわたって有効な対応が未だに取れていない人口問題や、更に昔から十分な対応が未だに取れていない環境問題ですね。それらを生み出す一因は、貧困問題や格差問題でもありますけれど。

まあ、「間引き」と言われても、戦争はそれに該当するのかも知れませんが、「間引き」と言われてもなあ。発展途上国が貧困や格差から抜けるためにはある程度の経済発展が必要で、経済発展のためにはある程度の環境破壊が伴いますし。食料の増産は、まだ不足ですし。人間の欲望にはキリが無さそうなので、先進国も更なる裕福な暮らしを求めて環境破壊を続けていますし。


○ 最終24話は、それまでに提示されたことを整理しています。

・全員ではないのでしょうけれど、パラサイトが人間と同じ食事で生きるようになってきている様子であること。

新一とミギーは同じ人間を見ても違う姿に見えているように、人間同士でも同じモノを見ても同じには見えていない、「お互いを理解しあえるのは、ほとんど点なんだよ。同じ構造を持つはずの人間同士でさえ、魂を交換できたとしたら、それぞれ想像を絶する世界が見え、聞こえるはずだ。」とミギーが言ったこと。

「(パラサイトと人間は)違う生き物同士、時に利用しあい、時に殺しあう。でも、分かりあうことは無理だ。いや、相手を自分の物差しで把握した気になっちゃダメなんだ。ほかの生き物の気持ちを分かった気になるのは、人間の自惚れだと思う。ほかの生き物は誰一人 人間の友達じゃないのかもしれない。でも、例え得体はしれなくても、尊敬すべき同居人には違いない。」、
「(パラサイトは)狭い意味じゃ敵だったけど、広い意味では仲間だったんだよな。みんな、ここで生まれてきたんだろ。そして、何かに寄り添い生きた。」
と新一が思ったこと。

・その後、浦上が里美の拉致事件を起こし、浦上をとおして人間が一番悪魔らしいと暗示があったこと。

「俺達は、みんなここで生まれて、ほんのちっぽけな、点での理解を繰り返し、積み重ねていく。何かに寄り添い、やがて、命が終わるまで。」と新一が思って終了。


○ ここでキャラ紹介。
泉新一(cv島﨑信長)、

新一の脳ではなく右手に間違って寄生したパラサイトのミギー(cv平野綾)、

パラサイトの波長に少し敏感で、新一と付き合うようになる村野里美(cv花澤香菜)、

パラサイトに気付く能力があり、新一にも恋愛感情を持つようになったが故に巻き込まれてパラサイトに殺された君嶋加奈(cv沢城みゆき)、

里美の幼馴染の立川裕子(cv安野希世乃)、

新一の高校の教師として赴任してきて、人間とパラサイトの在り方に関心があり、パラサイトなのにパラサイト同士の赤ちゃん(人間)を産み育て(育て方は、知らないし感情がないので変。)、18話では少しは母としての感情が芽生えたのか赤ちゃんを守って警察に殺される田宮良子(教師)/田村玲子(教師を辞めたあと)(cv田中敦子)、

人間の市長でパラサイトに協力し、人間の在り方に疑問を持つTV演説をして軍人らしき「警官」に殺される広川剛志(cv水島裕)、

広川の仲間で凄く強いパラサイトであり、新一と戦って負ける後藤(cv井上和彦)、

パラサイトに気付く強い能力がある、死刑間違いなしの連続殺人犯の浦上(cv吉野裕行)、など。


○ 1話からざっと振り返ってみます。

自分でも正体がよく分からない、人間などに寄生する謎の寄生生物、パラサイト。言葉も何も分からないで人間に寄生したのに本やネットにより一晩で話せるようになるとは、学習能力が高過ぎ。

2話、脳に寄生して乗っ取るはずが間違って右手に寄生したミギーでしたが、「名前とやらに興味がないだけだ。」と言うミギーは、名前なんかどうでもよくて、寄生して共食いにより自分が生きていくことしかインプットされていない/考えていないパラサイトを上手く表していて恐ろしい感じ。
名前というのは、自分と他人を区別するためであったり、それとの関連で自分のアイデンティティのために必要な場合もあるのですが、ミギーにとって自分以外で特別なのは寄生先である新一だけであって他はどうでも良いということでもあります(ミギーは、ラストに向けて少し変わっていく。)。

人や動物を共食いするパラサイトは見かけも考えも怖い感じですが、全話をとおして、前半は全体としてコメディも忘れず、程よく調和しています。後半はバトル多めのほぼシリアスですが、飽きることもなく。

1話では犬、2話では人間に寄生したパラサイトをあっという間に殺しましたが、ミギーは強すぎじゃね?。
それ以上に後藤は強く、辛くも勝ちましたが(23話)、そこは少し出来過ぎな感じでしたが。


○ 2話。それはそれとして、体育館にて新一に「泉くん、きみ、泉新一くん、、、だよね?」と真顔で確認していた里美というのは、2話前半では少し疑って、少し不安げな言い方、2話後半では少し楽しげで、疑っている様子はない言い方。その後も言い方を変えて(時には少しだけ言い回しを変えて。)、何度も新一に聞いたり、独り言を言ったり。
11話後半では、新一だと信じられないという言い方になっていますし。

18話前半ラスト、死に際の田村玲子から赤ちゃんを受けとった新一が母を思い出して涙し、それを見て「泉くん、新一くん、帰ってきたの。」と言って涙する里美。

新一だと思って聞いている聞き方から、少し疑っている聞き方、とても疑っている聞き方、新一ではないと思っての聞き方、愛、疑い、不安、これらの花澤さんの使い分けも聞きどころです。

合わせて、同じ言葉なのに状況や背景や意図(明示的にせよ隠しているにせよ。)、そして微妙な言い回しで大きく意味が変わることを示し、同じ言葉の多義性と、同じ言葉で意味が異なることの怖さを示したかったのでしょう。
で、一般論として、同じ言葉を同じ人が言ってもこれだけ意味が変わるのですから、同じ言葉を異なる人が言ったら更に意味が異なりうるということです。少し、現実の政治や言論の世界における現在の言葉使いを思い出しました。


○ 2話。右手に「悪魔」とつぶやく新一に対してミギーが「悪魔というのを調べたが、一番それに近い生物は、人間だと思うぞ。人間はあらゆる種類の生物を殺し食っているが、私の仲間達が食うのはほんの1~2種類だ。質素なものさ。」と言い、「そんな理屈、聞きたくもないよ。」と受け入れられない新一。

でも村野とのデートも終わりに近づいた頃、猫をいじめる少年を追い払って、「悪魔に一番近い生物は、人間、なのかもしれない。」と思う新一。
その後、新一の右手を取って違和感を感じた里美が新一の左手を握り直したというのは何なのだろうと思いましたが、つまり、里美の行動は里美が好きな新一を探しているということであり、新一の右手には違和感を感じたものの左手には里美が好きな新一がいるということでしょうから、そこの自己中心的なところは何なのだろうと思いました。

まだ高校生ですから、相手の悪いところも自分が知らないところも含めて全体として好きというところには至っていない里美ということでしょうけれど。


最後に、微笑んで里美「泉くん、君、泉新一くん、、だよね?」、微笑んで新一「ああ、もちろん。」。


○ 5話。新一の母が寄生され、父が寄生された母に殺されそうになり、その現実を受け入れられない新一がためらっている間にパラサイト母に新一が刺され。

6話。死にそうになったので、ミギーが心臓に寄生し直して生き延びた新一。メガネ不要になったり人外の身体能力になるとともに、もともと寄生されて変わってきていた性格もかなり変わり。


○ 13話ラスト、夜の公園にて、里美に言おうとして言えない新一、とめるミギー、自分を信用してくれないことにガッカリする里美。パラサイトのことがなければ、ありふれた青春カップルの痴話喧嘩という1ページでしかないのですけどね。

ここで、里美はパラサイト関係だとは思っています。
そうなると、特に最終24話で結局は新一に話させなかったし聞かなかった里美の言動とは合わないように見えますが、ここでは新一がパラサイトに寄生されているとまでは思っていなかったけれど、最終話までには寄生されていると思い至って、聞かない方がお互いのためと判断したということでしょう。ただ、実際は、お互いのためというよりは里美自身のためという要素の方が大きいと思いますけれど。



○ 23話、ミギーと協力しつつ、あれだけ強い後藤を倒したのは少し都合が良かったですが、そこは主人公だからということで。

完全に倒したと思ったらそうではなくて、引き返してきたミギーと新一。ミギーが同類の後藤にとどめを刺すと人間でいうところの殺人になるからどうするかは新一にまかせると言ったのは、ミギーが人間に少しは近づいているということでしょうが、一度はやめてから引き返してとどめを刺した新一というのは、後藤は人間ではないから人間以外のすべてを殺して構わないということであって、ある意味、とても「人間らしい」判断でした。

ただ、13話後半では「人を殺すなんて、ダメだ。例え、どんな理由があっても。」とミギーに必死に言っていた新一でしたが、2話で辞書で「悪魔」を調べたミギーが言っていたように、人間が一番悪魔らしいということに戻るわけです。
最終24話では、里美を殺そうとした浦上を殺そうとは思っていない様子の新一でしたけれど(ミギーが永遠に会えないかもしれないとしてミギーの意思で表に出てこなくなったから(最終24話前半)、新一は以前より肉体的に弱くなっているということとは関係ないと思います。)。


○ 最終24話。浦上が里美を人質にして問いただしたところ、自分がパラサイトに寄生されていることを言おうとした新一に言わせないように大声で口を挟んだ里美というのは分かっているということですが、言わせないし、その後に新一に確認しているとも思えませんし新一も言っていないでしょうし、この関係というのは何なのだか。

新一のモノローグでは、里美になら話してもいいかと思っていました。

一方、里見が聞かないのは、少なくとも新一のためではないです。里美が好きになった時の新一ままのイメージでいたいということでしょうし、そうでない新一というのを明確に確認してしまったら好きでいられないかも知れないという、自分の愛の自信の無さの表れでもありそうです。

そうだとすると、他のパラサイトが再び動き出したら、2人の愛には大きな試練が訪れるでしょう。でも、それを乗り越えないと結婚しても離婚するでしょう。離婚せずとも大きな不安を抱えたままで2人は生きることとなり、自分を誤魔化しての夫婦生活になりますから、あまり幸せではないでしょう。少なくとも、幸せと思える期間はかなり少ないでしょう。
えっ、それが普通の夫婦ですって?。・・・・・・・・・・周囲の既婚者を見ても、否定はできませんが。

しかし、一緒に死線をくぐり抜け、21話で一夜を共にし、高校も卒業するなど付き合いもある程度長くなってきたのですから、里美にとってもその程度の仲とも思えないのですが・・・・・里美の過去に語られていない何かがあったのかも知れません。

てな感じの2人の気持ちの動きを数話の番外編で見てみたい気も(笑)。


○ サブタイトルは、(残念ながら22話と23話を除いて、)有名な本の題名ですが、、、2話分の適切なサブタイトルは思い浮かばないので、仕方ないか。






【shin】

コメント一覧

shin
http://yaplog.jp/shin99shin/
>ざっくさん
なるほど、難しいですね。
何日か学校を休んでいるとの発言が無ければ、あそこは倒れてたその日に起きたように見えますし。
ざっく
http://yaplog.jp/rockgamer/
進一が母親に化けたパラサイトに刺されて数日間廊下に倒れてた時の進一が起き上がる時、原作は血が固まって床からほっぺたを引き剥がすとパリパリと音がしてたのに、アニメは音もせずスッと立ち上がったのが、アニメ作ったやつら、分かってねーなーと思いましたけどね。
あそこ、すごい重要な演出だったのに。
shin
http://yaplog.jp/shin99shin/
>ざっくさん
原作はかなり前ですから、パソコンとか、イロイロと置き換えたのでしょうね。
舞台が現在のシリアス系アニメでリーゼントを出したら、ギャグになりそう(笑)。
ざっく
http://yaplog.jp/rockgamer/
押入の奥にしまってあった単行本を引っ張り出して、もっかい読んでしまいました。
進一の顔も里美の顔も、その他キャラクターの顔が原作とわりと違うのが気になったくらいで、話はわりと原作に忠実だったかなーと。
進一にからんでくる不良とか、原作はリーゼントだったけど、今はそんな不良いないから、今風にしたのはしょうがないですよね。
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