「猫物語(白)」5話感想。「灰色の大人になりたい」「お父さん、お母さん、私に部屋をください」「ただいま」。黒髪から白黒髪になった羽川
2013-08-07 00:07:00
「つばさタイガー其ノ伍」
「君がため、産み落とされたバケモノだ。」とのキャッチコピーだそうで。
まさにそんな感じ。
良いアニメでした。
次は総集編ですが、羽川か猫が解説かナレーションくらいはしてくれるのでしょうか。
でないと見る意味が・・・というか放送する意味がないです。
◎ これまでの各話の感想でも結構ツッコミを入れていますが、全体として見れば、顔の絵が安定しなかったというか少しヌケていた顔が目立った気はするものの、演出も話も良く、物語シリーズはやっぱりいいね、中でも羽川の話は特にいいね、と思います。
ただ、特に5話後半の羽川と阿良々木のシーン、文字で見せる部分が多く、早いので読み切れず、巻き戻しながら見るというのは、興を思いっきりそぎました。
そうでなければ感動できたのでしょうに、感動できませんでした。良いシーンなのに勿体ないです。
◎ さて、原作は読んでいないので、最終話を踏まえてこれまで書いた各話の感想を読み直しましたが、少しばかりどうかなと思う記述はありましたが、概ね、外れたことは書いていないかな、という感じ。但し、次の2点、本物と偽物の話と、嫉妬の理由の話は少し補足です。
他のも含め、この解釈は違うのでは、というのがあれば、遠慮なく御指摘下さい。
○ 3話前半で戦場ヶ原が、5話後半で虎が、羽川のことを白くて本物である旨言っています。
3話の感想で羽川は偽物だと思っていたと私は書きましたが、同じ事象を本物と表現するか偽物と表現するかの違い、定義の違いということのようです。
黒い部分を猫や虎として切り離して白い部分ばかりを残した羽川のような人間は(多重人格のようなもの。)、人間として嘘っぽく、作り物っぽいです。だから羽川は偽物だ、と思ったのが私。
猫や虎として羽川の黒い部分を切り分けて白い部分ばかりになった羽川は完璧な白さに近いから本物だ、黒い部分=欠点があるのは完璧=本物からは遠い、と考えたのが物語シリーズ。
定義の違いなので深入りしませんが、「猫物語(白)」は、そのように本物であるはずの羽川が否定されて偽物になることによって幸せに近づく物語なわけで、そんな羽川の本物を本物と呼んで良かったのか、という感じは残ります。
人間に本物と偽物があるとすれば、白い状態の人間を本物と呼ぶことは自然なので、物語シリーズはそれで良いと思いますが。
○ 2学期初日に両親が一緒に同じ朝食をとっていたことが、2人だけでいまさら家族に戻ろうとしていると羽川が思って、物凄く嫉妬して虎を産んだというのも、その程度で、という気は少ししますが、そこは置いておいて。
まあ、1話前半で、羽川が自分の朝食を作る前に、同じ朝食が2つ映された理由が分かったことですし。
5話後半で虎は、戦場ヶ原家のあるボロアパートを焼こうとしたわけですが、阿良々木と付き合っている戦場ヶ原自身への羽川の嫉妬かと4話で私は思っていたのですが、5話での嫉妬の原因の説明からすると、虎を産んだ理由は仲の良い家族への嫉妬ということでしょう。
恋の嫉妬ではないと思った方が、1話で最初に羽川家を虎が焼いた理由も説明しやすいです(本当は戦場ヶ原家を焼きたいのに、練習みたいなものかアリバイつくりのためとしてまずは羽川家を焼いたとも解せるので、恋の嫉妬でもそれほど無理がある解釈ではない。)。
また、2番目に例の廃墟を焼いた理由は恋の嫉妬の方が理解しやすいですが、家族への嫉妬と解せないわけではないですし。
◎ 5話後半、猫が虎にかなうはずがないと分かっていても、炎を出して猫を焼こうとする虎にしがみつき、頑張る猫。
5話冒頭、羽川は猫への手紙で、
「あなたしか頼れる相手がいません。だから、生まれて始めて誰かに言います。助けて。助けてください。私を助けてください。」
と、初めて他人(「他人」として良いのかは後述。)に助けを求めました。猫は虎にかなうはずがないと思っていたものの、羽川はそうは思っていなかったということでしょう。
ここで阿良々木に助けを求めなかったのは居所が分からなかったということもあるでしょうけれど、阿良々木の部屋なのですから阿良々木宛のメモを残せば良いのではという気も。
阿良々木がそれを見る保証はありませんが、羽川が他人に助けを求めたことにはなるので。
自分の問題だから羽川が自分で解決しようとしたということで、そこは不自然ではありませんが、猫が虎に跳ね飛ばされてほぼ決着がつき、猫も羽川も(外見は猫でも意識は羽川に戻った。)、「無理だった、無茶だった、無駄だった。」と諦めています。
ここでどうして諦めたのか?少なくとも、最後までファイティングポーズをとって戦おうとしなかったのか?
ここで諦めたことが、今後も現実に直面する自分に諦めて猫や虎のような怪異を再び産み出さないか、今後の羽川が本当に大丈夫なのか、少し心配なところです。
○ 仮に諦めたのは良しとしたとしても、それならば、ここでどうして「阿良々木君、助けて。」と叫ばなかったのか?
言わなくても絶体絶命のピンチなのですから阿良々木は助けに来るでしょうけれど、他人に助けを求められないという点も、羽川の問題に起因する現象の1つです。
羽川は猫と虎を自分の妹と呼びましたが、羽川の分身のようなものであり、猫は羽川ではないけれど羽川自身のようなものであり、他人とは言い切れない存在です。
それって結局、羽川は他人に助けを求めることができなかった、と言っても良い状態です。
そこもまた、羽川が本当に大丈夫になったのか、少し心配なところです。
○ 5話後半で、外見は猫で中身は羽川のときに虎と対峙しながら「私はあなた達と一緒に、汚れたい。」と言ったり、「黒も白も併せて呑める。灰色の大人になりたい。」と思っていますし、次に記述のシーンからしても、心配のし過ぎかも知れませんが。。。。。
◎ 阿良々木は格好良く登場してあっという間に虎退治をしましたが、不意を突いたとはいえ、強すぎ&格好良すぎ。
男でも惚れちゃうだろっ。
○ 猫や虎の黒い部分も引き受けたら今までの羽川ではなくなるけれど良いかと聞く羽川に、「変わってもお前だ。」「嫌なやつになったら嫌ってやる。」とか阿良々木が言うところ。
嫌われるのが嫌だから変われないのが現実世界(特に10代。)ですが、2人には信頼関係があるはずだし、それくらいで崩れるような信頼関係ではないだろ、と言っているかのような阿良々木の言いぶりも格好良すぎ。
そんな阿良々木に外見は猫で中身は羽川の羽川(※)が、
「私は、阿良々木君が大好きだよ。結婚を前提に、私と付き合ってくれないかな。」
と言って、
「スッゲー嬉しい。」
と言われたものの好きな娘がいるからと言われてやっぱりフラれ、泣きながら猫と虎を吸収し、髪が白黒で外見と中身は羽川になり、号泣する羽川。
(※これは今後の羽川を左右する極めて大事な言葉ですから、外見が猫だと、羽川ではなくて猫が言ったかのように見えてしまいます。ここも、羽川が本当に大丈夫になったのか、ほんの少しだけ心配なところです。
この段階で猫を吸収し、外見も羽川(黒髪か、少し白髪交じり。)になっていても良かったのでは、その後にフラれてから虎を吸収して白黒の髪になれば良かったのでは、とも思いましたが。
しかし、ここまでの羽川は覚悟を決めて虎(=自分自身)に立ち向かいましたが、途中で諦めたように、自らはこれといったことを成し遂げていないので、告白という自力で成し遂げる過程くらいはないと虎はおろか猫すらも吸収できる段階に達することができなかったということで理解できるので、アニメのとおりで良いのでしょう。
よって、号泣シーンとこの後の両親とのシーンが、羽川の成長を示すにはより重要であろうと。)
ここは、「やっと言えた。」と羽川が思っているように、やっと言えたのであり、やっと人前で泣けたのであり、羽川の成長が伺えるシーンです。それでも、阿良々木は羽川の事情を知っている友達ですから、言いやすかったでしょうし泣きやすかったのでしょう。
○ その後、高校の門の前で、「お父さん、お母さん、私に部屋をください。」と言って両親に頭を下げる羽川(5話のベストショット)。
血のつながらない両親にお願いして自分の部屋を初めて持つことになった羽川。両親とはずっと不仲ですから、お父さんお母さんと思ったことも言ったことも無さそうですから、怪異の事情も知らないはず。そんな両親と話し、両親にお願いをするところは、羽川の成長がより伺えるシーンです。
(号泣する白黒髪の羽川か、阿良々木に頭を撫でられて嬉し過ぎて「全焼」している表情の羽川(外見は猫。)が世間的には妥当なのでしょうし、 「猫物語(白)」を始めとして物語シリーズで羽川を描いてきたことの帰結を尤も集約して表しているラストの「ただいま」のシーンも良いですが、私が選ぶ5話のベストショットはこれです。
それは、「ただいま」はこのシーンの帰結として導き出されますし、逆に、このシーンのようなことにならないと「ただいま」には結びつかないですし、家族との関係が羽川の問題の根本原因だったのですから。)
両親や友達にある程度の我儘を言うようになれば人間としてもっと良いのですけれど、それはまだ先のことでしょう。高校を卒業したら2年位は世界を旅する予定の羽川ですが(「化物語」9話後半)、そこから帰ってきてから、なのでしょう。
(しかし、髪が白黒なのは怪異のせいですが、それを毎朝黒く染めないといけないというのも怪異のせいでしょうけれど、毎日染めたら髪が傷むでしょうに。黒ではなく、白に染めたら、白黒には戻らないのかなあ、どうなんだろう?それでも白黒に戻らないと、理屈には合いませんけれど。
羽川の髪が傷んでハゲないことを祈るばかりです。
あ~~でも、ツルッパゲの羽川も可愛いかも。可愛くなければカツラをかぶればいいのだから、見てみたい!)
○ さて、自宅が新築されるまでの間、両親と住む借家(なのに1戸建というのも凄いですが。)の自分の部屋に入るとき、
「私が私でない瞬間なんて、ないんだ。ならば明日は、どんな私なのだろう。」
と思いつつ、生まれて初めて、しかも微笑んで言う羽川。
「ただいま」
5話前半で羽川の手紙への返事としてブラック羽川こと猫が「ただいま」と書き残したことと合わせ、羽川の中に羽川の黒い部分を受け止めて意識化した羽川、黒い部分を受け止め続ける覚悟をした羽川がいるわけで。
それこそが良い面もあれば悪い面もある本当の羽川であり人間だと(私は)思いますが、そんな羽川が、猫や虎を内包している羽川自身及び羽川自身が内包している猫や虎に対しても言った「ただいま」です。
家に入るときに「ただいま」ではなかったところに両親とのワダカマリはまだまだ残っていることが伺えますが、羽川自身の中の諸々にはかなり折り合いを付けたので、多分、大丈夫なのでしょう、羽川翼は。
◎ 以前のものへのリンク。
→「猫物語(白)」1話感想。「羽川翼という私の物語を、しかし私は語ることができない」。人は勝手に助かると阿良々木は言うけれど、羽川は?
→「猫物語(白)」2話感想。「料理って、味が無くても美味しいじゃない」「嫌いなものがあるっていうのは、好きなものがあるのと同じくらい大切なことじゃない」
→「猫物語(白)」3話感想。「私は味気の無さを受け入れていて、闇に鈍く、野生として、落第。」それより、ここで羽川のパンツに触れたい
→「猫物語(白)」4話感想。「人は嫌なことがあったら、どんどん逃げていいんだけれど、目をそらしているだけじゃ、逃げたことにはならないんだよ。」ようやく自分に向き合う覚悟を決めた羽川
→猫物語(黒)の感想。ブラック羽川、優等生の本音と建前
→物語シリーズのカテゴリー
【shin】
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