【9】
昨日話したとおり、新しい団地に引っ越したばかりの頃は頻繁に金縛りに遭っていた。遭う前には決まって「パシッ」というラップ音が聞こえた。『あっ、来た』と思っていると、体が動かなくなるのだ。こういう状況が週2度ほどやってきた。
しかし、体が慣れてきたのか、気配のほうが飽きたのか、時間が経つにつれて、その周期はどんどん長くなっていき、5年過ぎた頃にはほとんど遭うことがなくなった。
【10】
昭和の終わり頃にはほとんど金縛りに遭わなくなっていたのだが、平成に入ってから間もなく、再び金縛りに襲われるようになった。
きっかけは知人からもらった犬の置物だった。その置物は金属製でズッシリと重く、高さは20センチほど、黒っぽい銀色をしていた。犬というよりも狼に近い容貌だった。それを家に持って帰っている途中に、階段を踏み外しそうになったり、車と接触しそうになったりで、何となく嫌な感じがしていた。
ぼくが金縛りに遭ったのは、その日の夜からで、三日三晩襲われた。『犬の置物のせいだ』と思ったぼくは、それを新聞紙に包んで、押し入れの奥にしまい込んだ。それからしばらく金縛りに遭わなかった。
【11】
ぼくが空を飛べるようになったのは、犬の置物をしまい込んでからしばらくたってからのことだ。飲み会で夜遅く帰ったぼくは、着替えもせずに布団の中に潜り込んだ。
一時間ほど眠っただろうか、軽く目が覚めた時だった。久しぶりに「パシッ」というラップ音を聞いた。『もしかして金縛り?』と思った瞬間、体がフワッと浮いたのだ。体はドンドン上に浮んでいく。『このまま行くと天井に当たってしまう』と思っていると、体はゆっくりと降りていった。するとまたしても「パシッ」というラップ音、『二度目が来る』、しかしこの日はそれで終った。
その後、こういうことが何度も起こることになる。
昨日話したとおり、新しい団地に引っ越したばかりの頃は頻繁に金縛りに遭っていた。遭う前には決まって「パシッ」というラップ音が聞こえた。『あっ、来た』と思っていると、体が動かなくなるのだ。こういう状況が週2度ほどやってきた。
しかし、体が慣れてきたのか、気配のほうが飽きたのか、時間が経つにつれて、その周期はどんどん長くなっていき、5年過ぎた頃にはほとんど遭うことがなくなった。
【10】
昭和の終わり頃にはほとんど金縛りに遭わなくなっていたのだが、平成に入ってから間もなく、再び金縛りに襲われるようになった。
きっかけは知人からもらった犬の置物だった。その置物は金属製でズッシリと重く、高さは20センチほど、黒っぽい銀色をしていた。犬というよりも狼に近い容貌だった。それを家に持って帰っている途中に、階段を踏み外しそうになったり、車と接触しそうになったりで、何となく嫌な感じがしていた。
ぼくが金縛りに遭ったのは、その日の夜からで、三日三晩襲われた。『犬の置物のせいだ』と思ったぼくは、それを新聞紙に包んで、押し入れの奥にしまい込んだ。それからしばらく金縛りに遭わなかった。
【11】
ぼくが空を飛べるようになったのは、犬の置物をしまい込んでからしばらくたってからのことだ。飲み会で夜遅く帰ったぼくは、着替えもせずに布団の中に潜り込んだ。
一時間ほど眠っただろうか、軽く目が覚めた時だった。久しぶりに「パシッ」というラップ音を聞いた。『もしかして金縛り?』と思った瞬間、体がフワッと浮いたのだ。体はドンドン上に浮んでいく。『このまま行くと天井に当たってしまう』と思っていると、体はゆっくりと降りていった。するとまたしても「パシッ」というラップ音、『二度目が来る』、しかしこの日はそれで終った。
その後、こういうことが何度も起こることになる。