さて、「嫌煙権」という言葉が世の中にお目見えした頃の話だ。
当時ぼくはJRで通勤していた。電車内での喫煙は、まだ普通に行われていて、世間もやかましくは言ってなかった。
ある日の会社帰り、ぼくは時間待ちしている電車に乗った。発車時刻までまだ時間がある。乗っている人もまばらだったので、ぼくはタバコを吸い始めた。
半分くらい吸い終えた時だった。けっこう離れた席に座っていた20代くらいの女性がぼくのところにやってきて、
「すいません。タバコをやめてもらえませんか」と言った。
「ああ、嫌煙権ですか?」とぼくが聞くと、その女性は
「いや、そんなんじゃないんですけど、私タバコの煙がダメなんです」と言った。
「わかりました」とぼくは言い、タバコの火を消した。
しばらくして、発車時刻も迫り、だんだん人が多くなってきた。すると、どこからともなくタバコの臭いがしてきた。誰が吸っているのかと思い、顔を上げて見回すと、ぼくに意見してきた嫌煙権女のすぐそばで、強面のおっさんがタバコを吸っている。
彼女どうするかなと思って見ていると、意見するでもなく、黙って本を読んでいる。
「おいおい、タバコの煙がダメだったんじゃないのか」
ぼくのタバコの煙はだめで、おっさんの煙ならいいとでもいうのだろうか。確かに相手は強面だが、彼女は人を選ぶのだろうか。
「自分を貫けないようなら、人に意見などするな」
ぼくはその時思ったものだった。
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