《試練》――現在史研究のために

日本の新左翼運動をどう総括するのか、今後の方向をどう定めるのか

集団的自衛権の行使容認は、侵略戦争を繰り返すもの

2014-06-21 01:35:20 | 日本の政治・軍事―日本の動きⅠ
集団的自衛権の行使容認は、侵略戦争を繰り返すもの

 集団自衛権問題の究明のために、(1)5月の集団的自衛権の行使容認をめぐる動き、(2)「安全保障法整備に関する与党協議会」をめぐる動き、(3)自衛隊の動向、(4)世論調査に関する資料を整理し、読み解きを行った。

(1)集団的自衛権の行使容認をめぐる動き(5月)

◇(14.5.1) 石破茂自民党幹事長が米国のシンポジウムで講演、「アジア太平洋地域の抑止力強化のため、行使を一部可能にしたい」「米国がとるべき戦略とも符合する」(4月30日)
⇒自民党は「限定的行使」を強調し始めている。

【集団的自衛権で政府素案】

◇(14.5.2) 集団的自衛権の行使容認に向け、5月下旬に与党に示す「政府方針」の素案。素案のポイント――①国家が存立を全うするために必要な自衛権は認められる。②自衛権行使は必要最小限度にとどまる。③自国が攻撃を受けていなくても、密接な関係にある国が攻撃された場合など自衛権が行使できる状況がある。④他国への攻撃に対して自衛権を行使するのは、日本の安全に重大な影響がある場合などに限る。⑤攻撃を受けた国からの要請や国会の同意なども行使の条件とする。⑥日本を取り巻く安全保障環境の悪化を踏まえれば、抑止力を高める必要がある。⑦1991年の政府答弁書を引用。⑧文案では公明党や創価学会の反発を和らげるために「集団的自衛権」という表現を使うのを避けた。
⇒3月29日の朝日新聞が政府素案の記事を出している。どういう関係か。この素案では③で集団的自衛権という表現を使わずにやっている。

【社説:集団的自衛権をめぐるジレンマの解消を】

◇(14.5.3) 社説:政府見解の見直しを進めるにあたり三つのジレンマがある。①「安倍首相のジレンマ」、安倍が前面に出てくるほど抵抗が大きくなる。このジレンマの解消は公明党の説得にかかっている。警察権と自衛権、集団的と個別的のそれぞれのグレーゾ-ンをどう整理するか。②「政権公約のジレンマ」、12年の衆院選で自民党は国家安全基本法を制定し、集団的自衛権の行使に道を開くと打ち出した。考え方をはっきりさせた上で個別法を。③「改憲のジレンマ」、解釈改憲でしのげば国論を二分してまで、となる。武力行使を伴う多国籍軍参加のようにここからは明文改憲をしないとできないように分ける。
⇒逆手にとって批判する。三つのジレンマがあるなら。そこを徹底してついていく。公明党との論議での「警察権や個別自衛権で対処」はそれで対処するで終わったらだめである。日本が警察権や自衛権を主張しようとも戦闘行為を行えば、戦闘・戦争へと拡大していくのは不可避である。ではどうするかの問題。

【首相「憲法解釈の変更検討」、集団的自衛権容認に意欲】

◇(14.5.16) 有識者懇は報告書を安倍首相に提出。記者会見で「一国のみで平和を守ることはできない」「政府として(集団的自衛権の解釈変更の)検討を進めるとともに与党協議に入りたい」(15日)。記者会見で①「限定的に集団的自衛権を行使することは許される。必要最小限度の武力行使は許されるという考えについて研究を進めたい」、②二つの例(避難する日本人を輸送する米艦船の防護と駆けつけ警護)をあげて。PKOで死亡した高田晴行警視、国連ボランティアで死亡した中田厚仁の例。③自衛隊に領海警備の任務を付け加えるなどの法改正に取り組む。④「憲法が(報告書が提言した)活動のすべてを許しているとは考えていない」「自衛隊が武力行使を目的として湾岸戦争やイラク戦争などの戦闘に参加することは決してない」 ⑤「抑止力が高まることにより戦争に巻き込まれなくなる」
⇒報告書については別途、全文を批判する。安倍の記者会見について。必要最小限度と形だけの制限はつけているが武力行使は許されるという考え方を研究するという。何も隠すことなく、日本は戦争のできる国になることを研究するというのだ。集団的自衛権の解釈変更の狙いをあけすけに安倍の口から語った。自衛権の視点から「必要最小限度の武力行使」を問題にしているのではない。

【安保法制懇】

◇(14.5.16) 報告書、①武力行使を禁止しているのは日本が当事者である国際紛争に限ると解釈すべきだ。②個別か集団的か、形式的に線を引くのは適当ではなく、集団的自衛権の行使を可能にすべきだ。
⇒日本が当事者でない国際紛争に武力を行使してよい、という。これは法解釈にもならない問題である。過去の反省から何も学ばない。

【コラム「何をどこまで担うか」】

◇(14.5.16) 論旨、①日本が攻撃されない限り武力を行使しない、米国や友好国が助けを求めてきても応戦しないの原則が通用したのは米国の圧倒的な力のおかげ。しかし米国は世界の治安を守る理由も余裕もない。②どの国も一国平和主義では自衛できない。③どうするか。米国と一緒に他国に防衛力を広げ、アジア太平洋に安全保障網を作り、そこに中国を加える努力を続ける。集団的自衛権はその道具である。④それを本当に使うかどうかは別次元の話。行使に厳しい歯止めが必要。それでも危険な任務に自衛隊を出すかどうかは指導者の判断にゆだねる。
⇒日経のこのコラム記事は集団的自衛権行使容認の論拠である。
 日本は憲法9条の下で米国の戦争に協力してきた。決して憲法9条を守り抜いたわけではない。朝鮮戦争の時は後方支援基地として日本は使われた。ベトナム戦争では沖縄米軍基地からB52が北ベトナムの爆撃に出撃した。日本は紛れもなく憲法9条を掲げながらベトナム戦争に参戦した。イラク戦争には掃海艇を派兵した。アフガニスタン侵略戦争には参戦国の艦船への給油を担った。憲法9条は決して一切の戦争行為を阻止できたわけではない。現実は解釈改憲を強行し、米国の戦争に手を貸してきた。憲法9条はその存在だけで参戦を阻止できたわけではない。その歴史は、吉田茂の自衛権も明確に否定した解釈から、個別自衛権なるものを認め自衛隊の存在を合法とし、いわばギリギリのところで首の皮1枚を残し日本が戦争へ公然と参戦することを阻止してきた。集団的自衛権の行使容認の解釈変更はその最後の首の皮1枚も切り離し、日本が戦争のできる国になるのだ。
 この憲法9条の危うさを自覚しなければならない。戦争への道を阻止するためには憲法9条を錦の御旗として掲げれば阻止できるわけではない。戦争を許さない闘いが必要なのだ。
 ここでいう「アジア太平洋に安全保障網」とは大東亜共栄圏とどこが違うのか。「そこに中国を加える努力」とは現実的に軍事力以外に何を持って実現できるのか。「米国と一緒に他国に防衛力を広げる」――これが侵略戦争の理屈なのだ。その道具が集団的自衛権だという。 集団的自衛権が道具として使われる政治は過去の侵略戦争の繰り返しである。
 「危険な任務に自衛隊を出すかどうかは首相の決断」などありえない。首相が決断すれば戦争ができるなどありえない。

【石破、「多国籍軍に将来参加も」】

◇(14.5.18) 自民党幹事長・石破「何年かたって国民の意識が変わったときに、国連軍や多国籍軍に日本だけは参加しませんというのは変わるかもしれない」(17日、読売テレビ番組)
⇒日経は公明党が「駆けつけ警護」に「武力行使と一体にならない範囲で検討」いう態度をついて与党協議を進めるためと解説している。石破が自分の次期政権での課題に乗せるための策動でもある。

【創価学会「行使容認、改憲経て」】

◇(14.5.19) 創価学会のコメント「集団的自衛権を限定的にせよ行使する場合には、本来、憲法改正手続きを経るべきである」(17日、広報部)。「基本的な考え方はこれまで積み上げられてきた憲法9条の政府見解を支持している」 

【集団的自衛権、具体例を重視、自縛の恐れ】

◇(14.5.20) ①安倍は2種類のパネルで「勝負」、安倍は具体的例を示し一定の制限をかける「限定的容認論」。欧米は友好国のためにどこにでも戦闘部隊を派遣する「包括的容認論」、②憲法解釈と法整備の方法として二つの考え方。→.具体的な事例を示し、それに限定して行使を容認する「個別容認論」。公明党との落としどころもいくつかの具体的例に限って容認。安保法制懇の報告書は「近隣有事での米艦防護」「海峡での機雷除去」の具体例を挙げたのは「憲法解釈や法制度の整理の必要性を明らかにするための具体例としてあげたのであり、これらの事例のみを合憲・可能とすべきとの趣旨ではない」。 .自衛隊法に「日本と密接な関係にある国が武力攻撃を受け、日本の安全に重大な影響を及ぼす可能性がある場合、自衛隊が出動できる」と規定する。具体例は明記せず、政府見解を国会答弁などで説明する。結論は「抜けない伝家の宝刀」になる。
⇒日経が全面的に集団的自衛権行使容認に向かってキャンペーンを張っている。安倍の具体的例を挙げての限定容認と公明党との落としどころの具体的事例に限っての個別容認論に正面から反対している。法制懇の意見を引用し、支持しており、法制懇報告書批判は重要。しかし、集団的自衛権の包括的容認論を批判の主対象とすると限定容認に現実的な落としどころで足をすくわれる。どちらも侵略戦争の行使容認であることの基本的批判をしっかりやりきり、その上で与党協議の現実的落としどころ・限定容認を粉砕しなければならない。

【米知日派、「閣議決定、今国会中に」】

◇(14.5.21) キャンベル前国務次官補、アーミテージ元国務副長官、マイケル・グリーン元国家安全保障会議NSCアジア上級部長らが「6月22日の国会会期末までに閣議決定が望ましい」と訪米中の自民党・河井、みんなの党・中西に語った。
⇒与党協議をぶち壊せといっているのと同じ。安倍にとっては非現実的。しかし、米帝はガイドラインの改定が集団的自衛権抜きには意味がないと突きつけている。


(2)「安全保障法整備に関する与党協議会」をめぐる動き

【集団的自衛権、20日から自公協議】

◇(14.5.19) 「グレーゾーン事態」の対処を先行協議。協議する主な内容、 ①集団的自衛権―公海上で攻撃を受けた米艦船の防護、戦闘下での機雷除去、避難する日本人を運ぶ米艦の防護。②集団安全保障―PKOでの駆けつけ警護、PKOでの他国部隊の後方支援。③グレーゾーン事態―離島を占拠した武装漁民への対応、領海から退去しない外国潜水艦への対応。
⇒創価学会が集団的自衛権行使容認に反対のコメントを出している。グレーゾーン事態への対応批判。①日本をめぐって起こる事件全部を「事態」=戦争の観点から掌握しようとする試み。つまりすべての動きを軍事の視点から掌握、管理しようとするものであり、戦争国家体制の確立攻撃。軍事が優先する政治体制に。②唐突な事例を引っ張り出し恐怖感をあおるもの。武装漁民、滞留潜水艦などが現実に起こるのか。ありえない。武装漁民も滞留潜水艦も戦争行為そのものですでに戦争が始まっている段階での想定。

◇(14.5.20) 公明党代表・山口「“日本の安全に重大な影響”は抽象的で曖昧だ」「(警護対象を)日本のNGOと国連部隊とを一律に考えていいのか」「施設部隊の装備しかもたない自衛隊がどれだけ役に立つののか」
⇒危うい論議である。抽象的曖昧は具体的な事例を持って破られ、“戦闘力を持った自衛隊の派遣を”で簡単に打ち破れかねない。

◇ (14.5.20) 初会合(20日)①自民・高村「憲法解釈でできないものがあるとすれば、解釈を変更する」、公明・北側「論理的整合性」。「グレーゾ-ン事態」への対応を先行して協議、②協議では「武力行使と一体化するような後方支援はできない」との原則を確認し,その上で何が一体化になるのかを具体的に検討する。公明党は、米軍などへの後方支援業務の拡大検討、周辺事態法(戦闘をしていない後方地域で米軍への水や燃料、食事の提供、人員や物資の輸送は可能)を改正し、一定の条件の下で武器・弾薬の提供を可能にすることを検討。狙いは集団的自衛権行使容認の封じ込め。公明は武器・弾薬の提供が憲法の禁じる「他国軍の武力行使と一体化」と判断されたら後方支援の拡大には同意しない。自民党は「自衛隊の米軍協力は集団的自衛権の行使容認によって実現」方針。③「集団的自衛権を含め全体像について自公の了解を得た上で閣議決定する」(石破)、日米防衛協力の指針に間に合うように与党合意を急ぐ構え。④次回は27日。
⇒自民党の「憲法解釈でできないものがあれば解釈を変える」論は激しい。具体的事例を取り上げての議論の恐ろしさ。戦争のできる体制までどんどん憲法解釈を変えていくということ。公明党の「封じ込め論」は危うい。武器・弾薬の提供は従来の憲法解釈の変更であれば「応じない」としているが、判断基準が憲法解釈の変更なので抽象的である。具体的に戦争は絶対に繰り返さないという立場からでないと折れてしまう。集団的自衛権の行使容認で日米防衛協力の改定は自民党の本丸である。

◇(14.5.22) 公明党北側、自衛隊による米軍の後方支援業務の対象を広げる議論を優先。

【安保法制、15事例】

◇(14.5.24) 政府(安保法制を担当する兼原信克・高見沢将林両官房副長官)は安保法制の見直しに向け、現行法制では十分に対処できない可能性がある15の事例を与党幹部に非公式に提示した。27日に正式提示。
 15事例、《グレーゾーン事態》①離島を占拠した武装集団への対処。②公海上で武装勢力に襲われている民間船舶に自衛隊が遭遇した場合の対応。③平時に近隣国が弾道ミサイルの発射準備に入った際の米艦船防護。《PKO集団安全保障》④侵略行為に対抗するための国際協力としての支援。⑤PKOで共に活動している他国部隊などへの「駆けつけ警護」。⑥PKOで任務を遂行するための武器使用基準の緩和。⑦領域国の同意に基づいた邦人救出。《集団的自衛権》⑧邦人を乗せた米輸送艦の防護。⑨武力攻撃を受けている米艦の防護。⑩米国に向けわが国上空を横切る弾道ミサイルの迎撃。⑪有事に近隣国が弾道ミサイルの発射準備に入った時の米艦防護。⑫米本土が武力攻撃を受けわが國近隣で作戦を行うときの米艦船防護。⑬戦闘下の海上交通路シーレーンでの機雷除去。⑭タンカーなど民間船舶が攻撃を受けた際の国際共同護衛活動への参加。⑮日本が日本近隣で有事が発生した際の船舶の検査。
 米艦防護を2例から5例に(③、⑧、⑨、⑪、⑫)。外国潜水艦が領海内で退去要請に応じない例は専門能力を持つ自衛隊が全面に立たざるをえないので「一触即発」を連想させるので載せない。
⇒具体的事例を挙げて具体的に問題を検討することが分かりやすいといっているが、参戦行動がはっきりする事例もある。

【自衛隊出動手順、簡素に】

◇14.5.31) ①「治安出動」や「海上警備行動」をめぐり、出動の可否の判断をあらかじめ閣議決定しておき、首相に一任する制度を検討する。6月3日の安全保障法制整備に関する与党協議会でグレーゾーン事態への政府の対処方針のひとつとして示す。②PKOなどの後方支援活動をめぐっては、非戦闘地域に限っていた要件を見直し、一部の支援は危険を伴っても自衛隊の活動が可能となる道を探る。
⇒集団的自衛権の行使容認とあたかも取り引きするような形をとりながら、エスカレートさせている。首相が閣僚の一任を取り付けておいて治安出動や海上警備行動への自衛隊の出動を首相の一存で行えるようにする。首相の権限の強化であり、独裁的権限を首相に持たせようとしている。PKOも同じ。PKOの一部の行動を戦闘地域でも自衛隊にやらせるという。戦闘地域でやる軍隊の行動はどれも戦闘行為であり、「戦争」と呼ぶものではないか。

◇(14.6.3) 米軍や国連の多国籍軍などへの補給や輸送を提供する自衛隊の後方支援活動の要件を緩和する。(3日の安保法制与党協議会に提案) 1.現行の内閣法制局は「他国の武力行使との一体化」にあたるかどうかを判断するための4条件(①支援活動の場所と戦闘地域との距離、②支援活動の具体的内容、③支援相手との関係の密接性、④支援相手の活動状況)。2.周辺事態法や過去の特措法では①現に戦闘が行われてらず、②自衛隊の活動期間を通じて戦闘行為がおこなわれていないと認められる地域を「非戦闘地域」と規定して自衛隊による水や医薬品などの広報支援活動を可能にした。3.今回はこうした地理的な条件にこだわらずに後方支援の範囲を拡大する。4.現在の週1回から開催頻度を上げる。
石破幹事長は「閣議決定は今国会中を目指す」。(2日)
⇒後方支援のできる地域を「非戦闘地域」に限定してきたが、この「非戦闘地域にはさまざま議論」(5月末、安倍首相が衆院予算委答弁)があるとして、この概念を「なくして」、後方支援活動を広げる。内閣法制局も地理的概念で武力行使との一体化を判断するとしてきており、ここでも解釈改憲に踏み込む。後方支援は軍事行動であり、それをごまかすための地理的概念も取っ払ってしまう。自衛隊が海外で戦争をすることを宣言する内容になる。

◇(14.6.4) 政府は後方支援範囲を大幅に広げる見直し案を提示(3日、安保法整備与党協議)、「戦闘地域」でも活動が可能という内容。後方支援の新しい基準は①支援する他国部隊が戦闘を行っている、②提供する物品・役務が戦闘行為に直接使われる、③支援場所が戦闘現場、④支援内容が戦闘行為と密接に関係する―4基準すべてに該当しない限りは原則、後方支援ができる。政府は他国の武力行使と一体化する活動を認めないとの解釈を維持、その上で「戦闘地域」と「非戦闘地域」など曖昧な概念で線を引いて「一体か否か」を判断してきた従来の基準を見直す。
⇒戦闘地域と非戦闘地域の概念が曖昧。これは9条の下でイラク戦争に自衛隊を派兵するために小泉が編み出したもの。曖昧にすることが狙いだから曖昧なのは当たり前。つまり後方支援活動は紛れもない戦闘行動だからこれが「戦闘行動ではない」とごまかすために戦場に小泉が勝手に線引きし、自衛隊が存在しているところが「非戦闘地域」とした。今回はこれを戦闘現場でない限り後方支援が可能とした。論理は同じこと。戦闘地域は鮮明だから、戦闘地域でない限りすべてが非戦闘地域でそこでの後方支援はできるとした。違うのは四つの条件のうち一つでも該当しなければよいという。たとえば①が起こってないから可能になり、次に①が始まったけど②がないから可能というように戦闘現場で戦闘している部隊への後方支援が可能になる。「“武力行使と一体化する活動を認めない”を維持する」はまったくのペテン。できるはずがない。基本的に自衛隊を戦闘現場に投入する決断である。

◇(14.6.5) 「自衛隊出動しやすく」。「グレーゾーン事態」について自衛隊がすばやく出動できるように手続きを簡単にする方針(6日、与党協議会)。 想定されているいくつかの事態についてはあらかじめ閣議決定で自衛隊出動の権限を首相に与え、速やかに自衛隊が出動できるようにする。法改正の必要がなく公明党も内々に受け入れる姿勢を示している。

◇(14.6.7) 「グレーゾーン」一部合意 (6日、安全保障法整備に関する協議会)。1.「グレーゾーン事態」への対処のうち、自衛隊の海上警備行動などの出動手続きなどの運用見直しで合意。武装集団の離島上陸や民間船舶が襲われる現場に遭遇するを想定し、首相判断で出動できる。治安出動も。使用できる武器の拡大は見送り。政府説明―ミサイル発射警戒中の米艦防護は自衛隊法の改正で対応。共同で任務を遂行している他国の艦船を一つの部隊とみなし互いに攻撃から守る「ユニット・セルフ・ディフエンス」の考え方を説明。10日の協議から集団的自衛権の論議に。
⇒事前の閣議決定という制約はあっても勝手に首相の決断で戦争がはじめられる。自衛隊の治安出動も首相の判断ひとつで可能になる。事前の閣議決定などは「迅速な判断が必要」の一言で吹っ飛んでしまう。グレーゾーン事態なるものは、何か曖昧な事態がおき、それが全面的な戦争に発展するのを防ぐためのものというのではない。離島への武装集団の上陸などはある日突然起こるものではない。武装集団なるものを持ってくることで恐怖をあおり、あたかも備えが必要であるかのごとく宣伝する。武装集団、民間人が数人あるいは多数が離島に上陸することはあっても、武装した集団が上陸する事態があるとすればそれは間違いなく国にあたるものが後ろ盾に存在する。どんなに民間人を装っても国家の関与なくしてありえない。それはグレーゾーン事態などではなく、戦争の始まりである。離島への武装集団が上陸した場合、自衛隊が出動して何らかの平和的な解決があるわけではない。戦争が始まるのだ。自衛隊の出動はそういう意味だ。安倍政権はそこをごまかしている。
 グレーゾーン事態であれなんであれ、自衛隊が出動することは戦争への突入なのだ。国際紛争の解決の手段として武力を行使しないという憲法9条はあってなきもの。自衛隊の出動が戦争の開始であること、国際紛争の解決の手段として武力を行使することが侵略戦争の歴史を繰り返す決断であることをはっきりさせなければならない。それが首相の決断一つで可能だというのだ。
 こんなことが自公の間の議論だけであたかも世論を代表するかのごとく進められている。反対運動の立ち遅れを革命党が存在しないからだという言い訳で逃げてはならない。

◇(14.6.7) 4要件を撤回し新たな条件提示。 1.政府は後方支援活動について4要件(3日協議会に提案)を撤回し、新たに3条件を提示。①支援対象や他国部隊が戦闘行為を行っている現場では活動しない。②活動現場で戦闘行為が行われた場合は活動を休止。③戦闘現場でも人道的な捜索・救助活動は例外とする。この場合、戦闘が行われていない地域での武器・弾薬の輸送は可能、日本の領域での医療活動は可能。自衛隊が後方支援活動中に戦闘が発生して捜索・救助活動は可能。公明党副代表・北側一雄は「柔軟に考えてもいい」。「駆けつけ警護」と「領域国の同意に基づく邦人救出」の分野での議論が進んだ。政府は「相手国政府が領域を実効支配していることを国家安全保障会議NSCが判断した場合」、その政府以外の武装集団に自衛隊が武器を使っても問題ないと解釈する。自民党・高村「われわれが要求したらいつでも(与党合意後に予定している閣議決定の文案を)出せるように準備してほしい」。
⇒とんでもないことだ。3日の政府提案の4要件は誰が見ても自衛隊が戦闘現場で活動することになることは明らかだ。戦争に踏み込むことだ。4要件全部が満たされていなければ後方支援活動はできるというのだ。たとえば戦闘行動がいったん中止していれば戦闘現場で後方支援活動はできるし、戦闘行動が行われている現場では後方支援活動はできないというが、自衛隊が直接提供する物品・役務が戦闘に直接使われなければ戦闘現場で自衛隊は活動できる。支援場所が戦闘現場でなければあらゆる後方支援活動が可能になる。弾薬や武器の提供はもちろんのこと、あらゆる戦争支援行動が可能になる。だから後方支援活動は戦闘行動そのものといわれている。支援内容が戦闘行為と密接に関係しなければ戦闘現場で自衛隊が活動することが可能になるのだ。あからさまに自衛隊の戦争への参加になる。これではあまりにもあけすけとして、それを撤回し、3条件を提示した。
 あらかじめ自衛隊の戦争への参戦へのすべてのハードルをはずしたものを提示、うまくいけばしめたもので、反対が出れば少し条件をつけてみせる自民党の常套手段だ。
 3条件を検討してみると、安倍がこの後方支援活動の議論で何を狙っているのかがはっきりする。それはとにかく自衛隊を戦闘現場に出すことだ。自衛隊に実戦を経験させることである。人を殺したことのない軍隊は役に立たないといわれているように、自衛隊が実際に人を殺せる軍隊にするために、後方支援活動はあたかも実戦とは関係ないかの立場をとりながら、自衛隊に実戦を経験させることである。だから3条件でも2番目に「活動現場で戦闘」が起こったら「撤収」などではない、「活動の休止」であり、その戦闘現場にとどまるのだ。しかも「人道的捜索・救援活動」は戦闘現場でもできるというのだ。戦闘行動とは、戦争とは武器を使用することだけではない。それにいたるすべての準備、戦闘での部隊の救出や負傷者(死者も含む)の救出全体が戦闘行動であり、戦争なのだ。戦闘現場での捜索・救出は「人道的」であろうとなかろうと戦争行為そのものである。
 公明党は「柔軟に考える」と言っている。だからこそ、高村は閣議決定の文案を出せと要求した。議論が尽くされていないことなど当然だ。憲法9条を改悪することなく解釈改憲で戦争ができる国にすることなどもってのほかだ。何とか阻止しなければならない。

◇(14.6.8) 集団的自衛権、会期内に。政府が与党に提示する安全保障法制に関する閣議決定の文案に集団的自衛権の行使を認める内容を明記する(7日)。内容は、①3分野(集団的自衛権、集団安全保障・PKOでの貢献拡大、グレーゾーン事態)で法整備を進める、②冒頭で日本を取り巻く安全保障環境の悪化、3分野での法整備が必要と明記。③抽象的な方針で政府方針を示す。安倍は集団的自衛権の行使容認の閣議決定を今国会中に閣議決定することを指示。
⇒「政府素案」では集団的自衛権という文言を入れずに文章の表現で集団的自衛権行使を容認した。閣議決定文案では「集団的自衛権の行使のための法整備」と明記する。しかし抽象的表現にするという。ここを明らかにしなければならない。自衛権の行使とはそれが集団的であろうとも個別的であろうとも戦争をすること、戦争のできる国家になることだ。安倍がわかりやすいように図解してといいながら戦場から避難する親子を描いたり、一方では文章表現を抽象的にしてみたりするのは集団的(個別的)自衛権の行使とは戦争のできる国になることであり、侵略戦争の歴史を繰り返すことが明らかになることを避けるためだ。

【民主党有志、安保基本法案提出へ】

◇(14.6.3) 長島昭久ら保守系有志は集団的自衛権の行使を限定的に認める「国家安全保障基本法案」の骨子をまとめた。前原誠司らと今国会への議員提出を目指す。一方、菅直人、赤松広隆ら旧社民党出身議員らが5日に集会、行使を認めないように執行部に申し入れ。
⇒もともとは自民党が狙っていた方針だった。民主党は改憲手続が今国会で成立するのになぜ憲法9条改悪しないのか論と一つのメタルの裏表の意見。きっぱりと集団的(個別的であろうと)自衛権の行使容認を否定すること以外にない。

◇(14.6.8) 橋下徹日本維新の会共同代表「われわれの参院の議席数で過半数。集団的自衛権が前に進むのなら政治家冥利につきる」、石原慎太郎「自民党と公明党が袂を分かつきっかけになりたい」。

(3)自衛隊をめぐる動き

【陸自、18年度までに統括司令部】

◇(14.5.2) 防衛省は陸自を機動的に運用するために。18年度までに全国五つの方面隊などを統括する「陸上総隊」を設ける。海自や空自と同様に指揮系統を一元化し、全国規模で部隊を運用する際になどに調整しやすくする。陸自には五つの方面隊と防衛相直轄の中央即応集団などもある。

【3自衛隊、初の離島奪還演習】

◇(14.5.23) 鹿児島県奄美群島の無人島、江仁屋離島で陸自西部方面普通科連隊(佐世保市)が海自艦艇(輸送艦「しもきた」)からボートで上陸する離島奪還訓練を実施。期間は10~27日、陸自500人、海自800人、空自10人で統合軍の離島奪還訓練は国内で初めて。潜水艦警戒の護衛艦「くらま」、空警戒のイージス艦「あしがら」、掃海母艦「ぶんご」が参加。

【中国軍機が異常接近】

◇(14.5.25) 24日午前11時と正午頃、海自の画像情報収集機OP3C、空自の電子測定機YS11EBが中国のSU27戦闘機2機に異常接近(50mと30m)を受けた。自衛隊機は中ロ演習を監視中。

【自衛隊、行動基準見直しへ】

◇(14.5.25) 防衛相は自衛隊の武器使用のルールなどを定めた部隊行動基準ROEを見直す。与党協議での法施行後、自衛隊員が新任務に対応できるように与党協議の結論に先んじてROEを見直す。自衛権の発動に基づく自衛隊の実力行使は外国による組織的・計画的攻撃への反撃に限られる。グレーゾーン事態には警察権に基づく治安出動と海上警備行動が想定されるが、武器が使えるのは原則、相手に危害を加える場合、警察官職務執行法を準用した正当防衛と危険を避けるため、第三者の権利を侵害する緊急避難などに限られる。ROE基準では「威嚇」「警告射撃」「危害射撃」の3段階の基本ルールなどが規定。
⇒部隊行動基準ROEは自衛隊員が人を殺すことに躊躇なく踏み込めるための手続きでしかない。

(4)世論調査

【憲法「維持」と「改正」並ぶ】

◇(14.5.3) 日経とテレビ東京の調査(4月18日から20日)。憲法について「現在のままでよい」「改正すべき」がともに44%となる。現状維持は過去最高、改憲支持は過去最低。これまで改憲支持が上回っていたが初めて並んだ。昨年は改憲56%で過去最高、維持は28%で過去最低。
⇒「改憲」と「維持」とが昨年と今年は真反対で並んだ。重要な動向を示す。

14年6月9日
博多のアイアンバタフライ

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