《試練》――現在史研究のために

日本の新左翼運動をどう総括するのか、今後の方向をどう定めるのか

今も続くイスラエルによるパレスチナ占領・封鎖・虐殺――私たちの課題は何か

2014-05-30 16:55:54 | 中東・北アフリカの政治経済―世界の動きⅥ
今も続くイスラエルによるパレスチナ占領・封鎖・虐殺
――私たちの課題は何か


1.PLOとハマスの和解と統一政権合意について

 4月23日、PLOとハマスは7年間の政治的分裂に終止符を打つと発表した。私たちには電撃の発表だった。これまで統一の試みは2度で、統一の話し合いは幾度となく聞かされ続け、その都度、その試みは残念ながら破綻した。今回も同じことの繰り返しなのかと冷めた気持ちでニュースに接したが、西サハラ解放戦線・ポリサリオを支援してきたスペイン在住の友人が「今度こそは」という思いを届けてくれたこともあり、注目している。
 今回の和解合意の背景には現在のパレスチナの厳しい現実がある。イスラエルによる占領・封鎖・虐殺の現状の中で、パレスチナ人は現在と未来に一筋の希望の光さえも見出すことができない。連日のごとく、パレスチナ人であることを理由にイスラエル軍により若者が射殺されている。ガザには偵察機が飛び交い、F16戦闘機からのミサイル攻撃はピンポイントであろうと住宅への攻撃であろうと容赦なく襲いかかってくる。ガザ地区はイスラエルによる封鎖によって真綿で絞め殺されてしまい背骨も折れた。落盤事故で地中に閉じ込められ1本のパイプから食料が届けられるというチリの炭鉱落盤事故と似ている。違うのは、落盤事故は地上から必死に救助の食料や医療品などが届けられたが、イスラエルはガザが死にそうになるとわずかばかりの食料と衣料品と物資の検問所通過を認めるだけだ。それに加えて、ガザには容赦なく太陽が照りつけるということだ。西岸のイスラエルよる入植地拡大と移動の禁止も同じだ。まったく仕事がない。パレスチナ社会の崩壊はパレスチナ人の人間としての崩壊も生み出している。このパレスチナの絶望的な現実が和解合意と統一政権への背中を押した事はまちがいない。
 またオバマが昨年7月に9ヶ月と期限を区切って再開した和平交渉が頓挫したことも要因のひとつである。イスラエルは、和平交渉が始まろうがお構いなしに西岸地区への入植地を拡大し続けた。ケリー米国務長官の「和平の枠組み」などはイスラエルの入植活動が続く限り問題にもならない。和平交渉の行き詰まりはパレスチナ問題からどんな幻想をも剥ぎ取ってしまう。和平交渉のテーブルを設定しておきながら、イスラエルは西岸地区への入植を拡大し、約30万人のベドウインを彼らが先祖代々住み続けていた土地から戦車とブルドーザーで追い払っている。この現実を放置したまま、アッバスら自治政府が何を言っても、パレスシナ人からは見向きもされない。これまでの和解と統一が行き詰った時もあたかも打開策であるかのように取り扱われてきた。この政党の崩れもパレスチナ人の絶望を深める。
 さらにエジプトのモルシ政権がクデターで打倒され、シシ軍事政権によるハマス政権へのすさまじい強権的態度やガザ地区のわずかばかりの「経済活動」を生み出していたラファ国境のトンネルの完全な破壊も和解と統一政権への動きの要因のひとつである。
 以上のように和解と統一政権への動きは希望にあふれた未来へ向かっての歩みなどではなく、占領と封鎖と虐殺という重苦しくパレスチナの現実にのしかかかる絶望が生み出したものかもしれない、

2.パレスチナ問題とはどのような現実なのか

 私の友人でパレスチナ・ガザ地区に家族を持つ女性が福岡市に住んでいる。今はイスラエル政府によってガザへの立ち入りを拒否され、もう8年近くガザの家族に会えていない。彼女は毎日、日本時間の深夜1時(パレスチナと日本の時差は夏時間で6時間、冬は7時間だから、ガザでは昼の1時か2時頃)に電話をしている。この電話だけが唯一の家族のつながりであり、安否を確認できる手段である。会話はもちろんガザ訛りのアラビア語である。呼び出し音がなり、「アロー(もし、もし)」と一番年下の男の子の声が聞こえた時に、彼女は今日も生きていてくれたと安心する。2012年の11月のイスラエルのガザ大空爆の時は、何度呼び出し音を鳴らしてもつながらず、何度電話してもつながらず、彼女は生きた心地がしなかったという。家族は空爆を逃れて近所の家に避難していたという。イスラエルの空爆を逃れる場所などはガザにはどこにもないのに、分かってはいるが、ほんの少しでも安全な場所へ逃げる。
 彼女の家族は何度もイスラエルのミサイル攻撃で間一髪のところで命拾いをしている。一度はイスラエルの攻撃が激しくなったので、父親がロバの馬車で子どもたちを学校に迎えに行った時、すぐ近くにミサイルが落ち、ロバは即死、父親と子どもたちは粉塵まみれになって命からがら逃げ惑ったことがある。また父親と長男がセルビス(乗り合いタクシー)で移動している時、前を走っていたバイクがピンポイントでイスラエルのミサイル攻撃を受け、バイクは大破、バイクの男性は即死、その破片がセルビスをも大破させ、父親と長男の全身に破片が突き刺さったこともある。
 たまに彼女が日本時間の昼間に家族に電話するところに居合わせたことがある。「アカルト ガダ?」「エッシュ アカルト?」「ニムト クワイエス?」が彼女の口癖らしい。「お昼ご飯食べた?」「何、食べた?」「よく眠れた?」である。父親は失業している。ガザには仕事が無い。家族の生活費は日本からの送金でまかなう。育ち盛りの4人の男の子の食費は大変だ。その食欲は「俺が食べられそうだ」という父親の冗談にも笑えない。イスラエルの偵察機はいつもガザ上空を飛び、ミサイルは2、3日空けることなくガザを攻撃する。子どもたちはその爆音におびえ、眠れない不安な夜を父親の手足にしがみついてすごしたこともある。
 ガザはイスラエルに封鎖され、唯一の物資輸送路だったエジプトとの国境の地下トンネルもシシ軍事政権が水を流し込んだり、爆破したりで破壊し、わずか数本のトンネルが残るのみだ。生活必需品や医薬品は完全に底をついている。発電用の燃料も底をつき、停電は日常茶飯事だ。お互いに生きていることを確認する携帯電話の充電もままならない。停電は日本からの送金もストップさせる。

 彼女は講演などでパレスチナの話をする。イスラエルの大攻撃が一段落するとパレスチナは忘れられてしまう。ミサイルで殺されていない家族に露骨に失望の色を見せる人もいる。パレスチナに生まれただけで、ガザで生まれただけで、占領され、封鎖され、殺されるパレスチナナの現実を考えて欲しいという。ガザは占領と封鎖、虐殺でガザ社会のみならず人間性も破壊されている。(藤永香織著『ハヤーティ・パレスチナ――夢をつなぐカフェ』新風舎発行を読んでみてください。)

 第二次世界大戦後の世界体制を支えたのはアメリカ帝国主義の世界支配体制である。それは帝国主義と当時のスターリン主義により朝鮮半島が南北に分断された民族と国家の現実であり、また中東支配の要としてのパレスチナの地からパレスチナ人を追放し、占領、封鎖したイスラエル建国である。パレスチナ問題は、戦後の米帝による世界支配体制の要のひとつである。
 現代に生きる私たちにとってパレスナ問題は私たち自身の問題である。

3.和解合意とそれ以降の動き

 4月23日に発表された共同声明では、①5週間以内の統一政府の樹立(統一政府の長には大統領アッバスか2006年統一政府の元副首相でハマスのサセル・アッルディン・アッジャエルが予定と報道)、②パレスチナ大統領がきたる選挙の日程を設定する(大統領アッバスは大統領選挙、パレスチナ議会選挙、パレスチナ評議会選挙の日程に関し大統領令を出す、高官談話で大統領選挙は6ヶ月以内)、③PLOとハマスはカイロ合意とドーハ宣言で合意された和解原則を遵守する~などで合意している。また、両党派はそれぞれ双方の政治囚を釈放することも合意した。

 PLOとハマスの合意はパレスチナの解放にとって絶対に必要なことである。パレスチナのあらゆる勢力が力を統合することなくしてその事業の成就はない。
 イスラエルと米帝がパレスチナ政治勢力の統一を恐れるのも根拠がある。ハマスがイスラエル国家を承認しないからだ。PLOとハマスの統一政権樹立のためには、ハマスのイスラエル国家を絶対に承認しない立場をどうするかがある。事実、いろんな情報が飛び交い(4月24日にはファタハの高官がラジオインタビューでハマスとの和解は2国家間解決とイスラエル国家の承認を前提としていると語った。26日にはワシントンポスト紙もハマスがイスラエル承認を除外しないと発言と報道など)、4月27日にはハニヤ首相(ガザ地区)の補佐官が正式にハマスはイスラエルを承認しないことを確認した。当然である。和平交渉は最低、1948年のイスラエル建国以前に戻すことから始めなければならない。ユダヤ人との共存をパレスチナ人は否定しないし、現に長い歴史、共存してきた。ハマスがイスラエルを承認する時は1948年以前に立ち返って(難民ももとにもどる)和平交渉が行われる時である。パレスチナの政権統合はいろんな勢力が様々な主張をすることができることが重要だ。政治路線はその後のパレスチナ人による選挙等の政治選択や行動で決められるものである。
 イスラエル建国を認めないハマスは06年の選挙で勝利した。しかし米帝とイスラエルと国際社会はパレスチナ人自身が選んだハマス政権を「テロ組織」として排除し、ガザ地区と西岸への分断を人為的に作り出した。今でもマスコミが「ガザを実効支配するハマス」と表現するのは、パレスチナ人自身の政治的決定権を認めないふざけた表現である。
 ハニヤ首相(ガザ地区)補佐官は「政治的事例を扱うのが統一政府の役割ではない。パレスチナ組織の統一、選挙の準備、そしてガザの再構築がやるべきことだ」と述べた。統一政権は選挙管理内閣であることをはっきりさせ、その上で一秒でもガザの現状をそのままに放置することは許せない、ガザの困難(食料・医療・電力など文字通りの生活の基盤が破壊されつくしていること)を一刻も早く回復・再構築すべきと訴えている。
 パレスチナの諸党派ではDFLPとイスラム聖戦は統一政権はできるだけ早く実現させるべきだと声明している(4月26日)。
 統一政権への流れが始まった。ハニヤ首相(ガザ地区)広報官は来週からガザ・西岸双方で発行されている新聞が双方で発行されると発表した(4月25日)。ガザと西岸の双方で囚人の釈放が始まった(5月5日)
 しかし、統一政権への行程が順調に進むはずもない。PFLPは和解交渉の最終文書で「特定の条件の下でイスラエルとの和平交渉再開を含んでいる」として4月27日のPLO中央委員会の閉会式で議場から退場した。「特定の条件」が何なのかは明らかではない。
 和解合意から5週目を迎えた5月27日に暫定統一政府の内閣人事で大筋合意し、自治政府のハムダラ首相が新内閣を率い、内相も兼任、アッバス議長が週内にも閣僚人事を正式発表すると報道されている。和解合意は進んでいる。

 イスラエルと米国の対応はどうか。このPLOとハマスの合意発表を受けて、イスラエル首相ネタニヤフは、夕方に予定されていた和解交渉をキャンセルした。また、ギラド・エルダン大臣は「万一西岸でハマスが参加する選挙をパレスチナ自治政府(PA)が実施するつもりならば、イスラエルはそれを許さない。かつてハマスを選挙に参加させたオルメルト政府の犯した誤りを繰り返さない」と述べた(4月24日)。米帝とイスラエルは和平交渉の頓挫がPLOを和解合意へ追いやってしまったことを苦々しく思っている。

 5月12日に来日したイスラエルのネタニヤフ首相が毎日新聞のインタビューで、現状維持について「望ましくない」とする一方、パレスチナ人とユダヤ人がイスラエルで共生する「単一国家」も「希望していない」と明言し、「(他に)選択肢がないか連立政権内外で協議している」と述べた。この会見から、あたかもイスラエルがヨルダン川西岸から「一方的に撤退」するかのようまニュアンスの記事も流されている。しかし一方的なイスラエルの撤退とはパレスチナの平和とは縁もゆかりもない。ガザからのイスラエルの「一方的撤退」以降にますます激しくなったのガザの占領・封鎖・虐殺の現実が西岸にも拡大されることになるのだ。西岸の入植地をイスラエルに取り込み(エルサレム以南とヨルダン渓谷をイスラエルが併合することもありうる)、ガザと西岸地区はイスラエル軍と分離壁によって封鎖され、現在はまがりなりにも外国人は西岸地区には入れるが、それさえも禁止され、西岸地区がガザ化される。「一方的撤退」は言葉のあやで、撤退=占領の継続・封鎖であることをはっきりさせなければならない。

4.日本とパレスチナの関係

●パレスチナ・イスラエルについての無知を自覚すること

 日本とパレスチナの関係、日本とイスラエルの関係については意外と知られていない。そういう私自身も「こんなところで」と思ったことがある。10年以上も前になるのか、福岡市の地元のラジオ放送局がプロ野球のダイエーホークスの初優勝を応援するキャンペーンをやっていた。その内容はダイエーホークスを応援し、初優勝すれば福岡ドームの近くの公園に集まってフォークダンス「マイムマイム」を踊り明かそうというのである。私は「マイムマイム」を知らなかった。だけどダイエーホークスが優勝すればいいな!の気持ちの隅で、なんとなく気にはなっていた。その後、パレスチナと出会い、パレスチナ関連の本を読んで「マイム」がヘブライ語で「水」を意味し、パレスチナの貴重な水をイスラエルが強奪したことにつながる歌だと知った。ダイエーホークスはその年、初優勝した。私は踊りには行かなかった。また、パット・ブーンの歌う映画「栄光への脱出」の主題歌も昔よく歌った。これもイスラエル建国を称える歌だと知ったのもそんなに昔のことではない。

●安倍政権の集団的自衛権行使容認は侵略戦争のため

 5月12日にイスラエルの首相ネタニヤフが来日した。首相・安倍晋三と会談し安全保障分野の緊密な協力を進めることで一致した。この会談でネタニヤフは、イランと北朝鮮という「イスラエルと日本の共通の敵による脅威」を強調し、2つの「ならず者国家」に対抗するために日本とイスラエルの積極的な協力を進めることを提唱したという。安倍が「積極的平和主義」で応じたのはいうまでもない。

 安倍政権は「積極的平和主義」を唱え、その内実は集団的自衛権の解釈変更による行使容認である。集団的自衛権の行使はそれが個別であろうが集団であろうが、日本が再び侵略戦争のできる国になることである。自衛の名であれ、密接な関係の国の要請であれ、侵略戦争へ再び突き進む国になるのだ。そんな戦後史の一大転換が時の政権の憲法解釈の変更で実行されるというのだ。国会で自公が多数を占めるから、あたかも集団的自衛権の行使容認が与党内での協議で決まるかのように報道される。集団的自衛権を巡る対決土俵を国会の外に引っ張り出さなくてはならない。
 与党協議で集団的自衛権、国連での集団安保体制、グレーゾーン事態の三つの領域での論議が進められ、公明党が集団的自衛権の決着を来年の統一地方選挙後に引き延ばすためにグレーゾーン事態や国連でのPKOでの規制の緩和との取引で事が決まるかのように報道されている。集団的自衛権もPKOもグレーゾーン事態も、全て日本が戦争のできる国への転換である。安倍政権が挙げた15の事例はどれをとっても、日本の対応は戦争への踏み込みを前提にしている。例えば武装漁民が釣魚台(「尖閣諸島」)に上陸した場合に、という設定があるが、中国の漁民が自ら武装し尖閣諸島に上陸することなどありえない。仮に武装漁民なる集団が出現する時は、それは中国政府がしたてるものであり、中国もその行動の先に全面的な戦争を設定している。逆に日本も中国との全面的な戦争に踏み込むことを読み込んだ上での具体的な事例なのである。つまりこの15の事例はどれをとっても日本が全面的な戦争に踏み込んでいくための体制作りなのである。子どもを抱えた母親の姿にだまされてはならない。
 日本の自衛隊と米軍との間で検討された尖閣有事の作戦計画(13年夏の策定)では、事が起こればグアム基地からB52の出撃、佐世保の米軍の強襲輸送艦に沖縄の海兵隊を乗せて出動すると策定している。B52が尖閣諸島を爆撃するのではない。B52は中国本土の爆撃である。日米は中国との全面戦争を軍事作戦として作成している。
 集団的自衛権野行使容認が年末の日米防衛協定、いわゆる安保ガイドラインの改定で具体化される。沖縄米軍基地はその最前線基地として強化される。集団的自衛権の行使容認・PKO活動の規制緩和・グレーゾーン事態の議論の前提には、この対中国の全面戦争も辞さない日米同盟の本質があるのだ。この全面戦争も辞さない日米同盟の本質を暴露し、粉砕することが求められている。

●日本とイスラエルが安保協力の新段階に

 この安倍政権の集団的自衛権の踏み込みが日本とイスラエルの関係を規定している。同時に進めた「武器輸出3原則(新名称は防衛装備移転3原則)」の議論もF35戦闘機の部品供給をめぐって始まった。イスラエルはF35の購入を決めている。ガザの空爆にF16と共に出撃し、パレスチナ人を虐殺するのだ。武器輸出3原則に明確に違反する。しかし3原則の名称を変更し、条件・内容を変えれば日本からF35の部品の供給は可能になった。今までイスラエルとアラブに「いい顔」をしてきた「こうもり日本」は通用しない。日本は安全保障分野でイスラエルとの協力を確認した。安倍とネタニヤフが手を握った。なだれを打つようにそれは進む。
 国家安全保障会議の共同開催の合意は、イスラエルからパレスチやアラブ民族を軍事的に押さえ込んできたノウハウを共有し、パレスチナ人虐殺のノウハウを共有するのだろう。また合意した自衛隊幹部のイスラエル訪問はパレスチナを占領・封鎖・虐殺するイスラエル軍から自衛隊が学んでくるものが再びアジアでの侵略戦争に「生かされる」ことになる。そんなことを断じて許してはならない。

●パレスチナ人民への具体的な支援を

 安倍政権は今年の3月に日本政府が主催する「第2回パレスチナ支援東アジア協力促進会合」をインドネシアで開催した。日本からパレスチナへの新たに200億円の支援金拠出を表明し、今後5年間で1000人のパレスチナ人をインドネシアなど4カ国に派遣し、農業や観光について学ぶ研修システムを構築するとも表明した。また安部政権は「イスラム開発銀行」(サウジに本部)に信託基金を設け、湾岸産油国からの資金を募り、パレスチナの経済支援に乗り出すことを表明した(14年4月)。14年度内に信託基金50億円の設置作業を開始し、ガザ地区に太陽光発電の設備導入するという。さらに5月12日に首相・安倍晋三はヨルダン渓谷開発の「平和と繁栄の回廊」構想の継続も表明している。
 これらの日本のパレスチナへの経済支援は本当に必要としているパレスチナ人には届かない。全てがイスラエルのコントロールの元に置かれ、イスラエルの懐が暖かくなるだけだ。ガザのパレスチナ人が日本のODAで農業指導員の資格をとったとしても、その資格を生かす農業がガザにはないのだ。海外で農業や観光の研修を受けてもそれを生かす産業がパレスチナにはない。パレスチナの占領・封鎖・虐殺の現実を無視した経済支援はイスラエル支援と同義であることを忘れてはならない。
 
 日本とイスラエル、日本とパレスチナの関係は根太く結びついている。私たちはパレスチナ人の犠牲の上に成り立つ戦後体制を享受している。何とかそれを断ちきり、集団的自衛権の行使容認に突き進む安倍政権を打倒する闘いをパレスチナ人民との連帯の下に推し進めていかなければならない。
 私たちに何ができるのか。西岸地区の大入植地「マアレ・アドミーム」の一画にある工業団地で生産されている清涼飲料水製造器「ソーダ・ストリーム」の不買運動を進めている「ストップ!ソーダストリーム」キャンペーンの運動もある。できることから始めよう。

2014年5月28日
博多のアイアンバタフライ

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