夕夏、帰ろう。
夕夏の彼氏が教室に迎えにきた。二人は幼馴染…ケンカして泣いて、仲直りして笑い合う…そんな普通を何度も繰り返して、いつしかお互いが大切な存在と気付いて付き合うことに。
ルカは〜?『わたしは遠慮しておくよ。本屋さんに寄りたいから二人で仲良く帰りなよ♪』
『そっか。また明日ね!あのルカの顔を見れるのは誰なのかしら…フフ』
「夕夏、なんかご機嫌だね!?イイことあった?」
『内緒。その時がきたら…ね♪』
夕陽が作った長い影と一緒に、ふたり並んで帰っていく。教室の窓に映る二人を見送り、
ー恋ってどうやって気付くのかな…その気持ちはみんな同じなのかなー
この気持ちはあの影の所為だね!と少しだけ降り注いだ哀愁を振り払うように『うん!』と席から勢いよく立ち上がる。教室の後ろの扉を開けると、廊下の冷たい風と教室の温かい空気が混じりながら、流歌の髪を揺らす。
鞄を両手で持ちスカートを揺らしながら、それでも周りからは凛として見える所作で、ゆっくり螺旋階段を降りていく。
下校時間の街はいつもと変わらず賑やかで、少しだけ落ち着かない。雑踏を潜り抜けた先、幹線道路に面した本屋が見えてくると、いつの間にか足早になっていた。なぜか雑踏から逃げるように。
ふぅ、すっかり遅くなっちゃった。本屋ってどうしてこう時間が過ぎるのが早いのかなぁ。
そう言いながらも手にはとある詩集を持ち、るんるんと帰りの汽車に揺られていたが、ふと夜の窓に映る自分を見つめ『恋か…』とふいに呟くのだった。