ココロの欠片 “ LOVE Late SKY & OVER THE SKY ”

普通の日記
とか
なんか詩的なモノを書いていこーかと。

空と二人の 3

2023年10月01日 | 空と二人の

夕夏、帰ろう。

夕夏の彼氏が教室に迎えにきた。二人は幼馴染…ケンカして泣いて、仲直りして笑い合う…そんな普通を何度も繰り返して、いつしかお互いが大切な存在と気付いて付き合うことに。

ルカは〜?『わたしは遠慮しておくよ。本屋さんに寄りたいから二人で仲良く帰りなよ♪』

『そっか。また明日ね!あのルカの顔を見れるのは誰なのかしらフフ』

「夕夏、なんかご機嫌だね!?イイことあった?」

『内緒。その時がきたらね♪』

夕陽が作った長い影と一緒に、ふたり並んで帰っていく。教室の窓に映る二人を見送り、

ー恋ってどうやって気付くのかな…その気持ちはみんな同じなのかなー

この気持ちはあの影の所為だね!と少しだけ降り注いだ哀愁を振り払うように『うん!』と席から勢いよく立ち上がる。教室の後ろの扉を開けると、廊下の冷たい風と教室の温かい空気が混じりながら、流歌の髪を揺らす。

鞄を両手で持ちスカートを揺らしながら、それでも周りからは凛として見える所作で、ゆっくり螺旋階段を降りていく。

下校時間の街はいつもと変わらず賑やかで、少しだけ落ち着かない。雑踏を潜り抜けた先、幹線道路に面した本屋が見えてくると、いつの間にか足早になっていた。なぜか雑踏から逃げるように。

ふぅ、すっかり遅くなっちゃった。本屋ってどうしてこう時間が過ぎるのが早いのかなぁ。

そう言いながらも手にはとある詩集を持ち、るんるんと帰りの汽車に揺られていたが、ふと夜の窓に映る自分を見つめ『恋か』とふいに呟くのだった。

コメント (2)
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空と二人の Ⅱ

2023年05月28日 | 空と二人の
流歌は今日も詩を書いていた。
同じクラスの友達の仕草だったり、頬を染め上げる誰かの恋人の話しだったり、勉強や部活の事だったり・・・自分の事となるとからっきしなくせに、人の褌で相撲・・・では無いけれど、みんなが今この瞬間を謳歌している姿がとても好きで、そんな二度と来ない普通の日常を、キラキラ光る日常を詩に残していた。
自分一人でも創り出せる。でも、同時にそれはいつも同じ様な感情となって、鈍色となっていく。だからこそ誰かが必要で、友達の何気ない仕草を見ているのがとても好きだった。
「ルカ~♪今日の素敵な言葉はな~に~?はやくいつものお披露目会して~」と親友の夕夏(ゆか)がいつもの様にはしゃいでいる。
(なぜこの子はそんなにはしゃげるのか・・・?)
と、それを考えるのも楽しくて、同じようにはしゃいでいる自分もそこにいる。

―今、恋をしている貴女の瞳は透き通る水のようで、想い人の事を捉えて離さないくせに、その想いでどんな形にも、どんな色にも染まる。束縛したくてされたくて。
そして恋の呪縛に捕らわれて・・・たまには汚れたい、でも、純粋で居たい―

「う~ん。こんな感じかな~」
「で、ルカはいつなのかなぁ?」
夕夏がにやにやしながら覗き込んできた。
「いやいや、そんな人いないよ~。いつか出来たらいいとは想うけど、まだよく分からないんだよね、恋ってヤツが」(笑)
夕夏は、その容姿でならすぐ彼氏できるでしょーが!とツッコミたい衝動を抑え、流歌のそれこそ透き通る水のように静かな水面のココロに、少しも揺らぎがないように瞳を見て髪を撫でた。
「ルカの髪、相変わらず綺麗ね」
少しだけ落ちかけた陽に流歌の髪が優しく陽色に染められていた。ん?と想いながらも優しく撫でてくれる夕夏の手の上に自分の手を重ねながら、
「その時が来たらわたしはどうなっちゃうのかなぁ」
頬をほんの少しだけピンクに染め、それが自分でも分かっているのか外を見るように顔を半分隠した流歌を見て、
「ルカ、キスしてイイ?」
「え?それは大好きになった人とするものなのでしょう?」
「だって今のルカの顔があまりにも可愛すぎて♪」
流歌は恋が近いのか遠いのか・・・冗談が通じるのか通じないのか。
「ま、ルカのココロはルカしか分からないよね。一つだけ言えるのは、恋の定義は自分だけが決めれるんだから、気持ち大事にね。そのココロを一度知ったら戻れないかもよ~?」とにやにやしている。流歌がいつか恋を知ったら、それはとても素敵なココロなんだと教えたくて仕方ないのだ。
「その時が来たら真っ先に夕夏を頼りにいくから・・・恋バナしようね」
「可愛いルカの頼みだから、お泊りしながら語ろーね♪」




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空と二人の Ⅰ

2023年05月27日 | 空と二人の
結人は今日も星を見ていた。
誰に言われるでもなく、誰から言われた訳でももちろん無く。だから誰からも何も言われない。望遠鏡から見える無限の銀河の、まだ誰も知らない宇宙で「空」(そら)を探していた。専門家でも無い、高校の天文部である結人が宇宙の中で空なんて・・・きっと存在しないだろう。
始まりですら見通せる、幾何学で美しいすばる望遠鏡や宇宙に浮かぶハッブル宇宙望遠鏡は、人類が到達するにはあまりに遠く、あまりにも美しい宇宙を写しだした。遠くて遠い、それでも人に触れることができない結人にとっては、空を探すことの方が簡単に感じていた。

―今日も春の大三角と大曲線が綺麗だな―

望遠鏡を覗けば無限の自分だけの宇宙が広がる。そんな空間に自分だけが放り出され、まだ他のどの引力にも惹かれない、産まれたての感覚が好きだった。意識を街へ向ければ、それこそ星たちに負けない色彩りの燈があって、決して独りでは無い感覚と同時に、誰からも気付かれず自分だけが街を見ている居心地の良さも堪らなく好きだった。
ここは円形校舎の屋上。
若い時の独特の感覚かも知れない。夜の学校でみんなで学校祭の準備を夜な夜なやって、準備が好きなのかただただみんなでワイワイ過ごすのが好きなのか、とにかくこの年頃であれば妙にウキウキする初夏の夜。普段の制服と違い、思い想いの服装ということもあるのかカラフルな声が響き渡っている。結人は独り抜け出し、校舎屋上のソファーに座り望遠鏡を覗いていた。すでにスピカは眠そうに西の空に消えようとして、「あれがデネブ、アルタイル、ベガ」と、夏の大三角が天の川と共に地球に降り始めていた。

ー僕たちが眠りにつくころ君は目覚め、僕らが夜の終わりに起こされる時、君たちは白み始めた空に飲まれ眠りゆく―

結人はスピカに話しかけて帰路につく。




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空と二人の  prologue

2023年05月27日 | 空と二人の
天使結人(あまつか ゆいと)
天羽流歌(あもう るか)

結人は今日も星を見ていた
流歌は今日も詩を書いていた
そんな言葉から始まる二人の物語

同じ桜歌聖鴦(おうかせいおう)高校に通う二人。街を見下ろす高台に建っており、中央に大きな螺旋階段がある円形校舎。その同心円状に廊下と教室が配置されており、1学年9クラスで1クラスが特進科となっている。
結人は出来るだけ人と関わらないよう伊達眼鏡で素顔を隠しており、ちょっと特殊なココロと体質で・・・。
流歌は所作が綺麗で可愛く、恋もしたいけど自分のココロに響く言葉を探す方も大事で・・・。
特進科2年生の結人と普通科1年生の流歌が織りなす、淡くて切ない恋物語。




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