9月6日
■消えた「プルターク英雄伝」のマンガも出てきた。これは今ドキの画に馴染めず途中でやめてしまったが、また読んでみてもいい気になってきた。
■プルターク英雄伝というのは、プルターク(プルタルコス)という人が書いた「英雄伝」のことです。”ムンクの叫び”がムンクの「叫び」であるのと同じで、叫びとか英雄伝では言葉が足りず、そう呼ばれるようになったのだろう。
■プルターク英雄伝を最初に翻訳したのはたぶん河野與一という学者で、東北帝大教授を経て、最後は岩波の人になった人だ。
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■英雄伝の他では、アミエルの日記、ベルクソン、トルストイなどを翻訳している。これだけでも古典語、ロマンシュ語、フランス語、ロシア語と多岐に渡る。会話レベルではなく高度な文学作品を翻訳できるレベルで10カ国語を操った語学の天才だった。
■著書は少ない。私が知るかぎり、学問の曲がり角、その続編、哲学講話だけ。哲学講話は岩波書店で行われたギリシア哲学の講義をまとめたもので、出席者が三島由紀夫、大岡昇平、吉田健一、遠藤周作、江藤淳など著名な作家・批評家であることからも、河野がどういう存在だったのかがわかる。ほとんど誰も知らないが、知ってる人は知っている偉大な文学者だった。