11日
■映画「鬼畜」を観る。緒形拳演じる宗吉が、余所で拵えた三人の子供を次々と処分する話。原作も読んだことがある。
■岩下志麻が鬼畜な妻を演じるが、その妻よりは少しは人間的に見える宗吉が果たして鬼畜でないと言えるのか。というのは妻は鬼畜であるとしても、夫の浮気や浮気相手の子供3人との暮らしをよく思わないのは自然である。嫉妬に狂っているだけある意味人間的だとさえ言える。他方、宗吉には他者に対する愛憎がない。
■長男を殺しに東尋坊に行ったときも、長男がうっかり崖から落ちそうになると慌てて駆け寄った矛盾にも、長男を殺すことに対する葛藤とは違うものが感じられる。
■次女を捨てに行ったとき、次女に「父ちゃん、好きよ」と言われても少しも心に響かなかった宗吉が、長男から父親であることを否定されると愕然として泣き出す最後の場面は、この男が鬼畜でもなければ人間でさえもない何者かであると考えなければ説明がつかないだろう。