「着色料不使用」といった「○○不使用」という文言も、目立つ形で表示することが禁止に。適用されるのは今年4月製造分からで、みそや野菜飲料など“無添加”“不使用”と表示されている製品が市場から消えることになる。
今回の改正には、本来、着色料が含まれるはずのないミネラルウオーターに「着色料不使用」などと表示してはいけないなど、もっともな改正も含まれてはいるが、複数の項目は「できるだけ添加物は避けたい」と、表示を頼りに購入していた消費者にとっては痛手となるもの。なぜ健康志向の高まりと逆行するこのような事態が起きているのだろうかーー。
元・農水大臣で、現在も食の安全問題に取り組む山田正彦さんは、その理由を次のように説明する。
「消費者庁は“無添加”や“不使用”などと表示することで、『添加物を使っていない商品のほうが体によい』というメッセージを消費者に与えてしまうのはよくないからと主張しています。こうしたルールを新設する背景には、添加物を使っている食品が売れなくなることをおそれる大手食品会社などの思惑があるのでしょう。しかし、このままでは消費者の知る権利と、メーカーの表現の自由を奪いかねません」
すでに消費者庁は、添加物のネガティブなイメージを軽減するために「人工甘味料」の“人工”や、「合成保存料」の“合成”といった表示を、国会での議論を経ることなく'20年7月に表示用語から削除。それを受けて、今年4月以降は“人工甘味料不使用”などとパッケージに記載した商品は原則販売ができないことになる。
しかし、消費者の食品添加物に対する不信感は、依然として根強い。添加物に詳しい日本消費者連盟の原英二さんは、こう警鐘を鳴らす。
「消費者庁は、『国が認めた添加物は安全』という前提に立っていますが、添加物の安全評価は極めてあいまいです。評価基準となる実験はマウスなどの動物のみで、医薬品のようにヒトに対する臨床実験は行われていません。ヒトとマウスには当然大きな違いがありますし、ヒトだってお酒に強い弱いがあるように、個人差が存在するにもかかわらず、です」
過去には「発がん性」が報告された食品添加物も
実際に、日本では食品への使用が認められていても、海外では禁止されている添加物も多く、あとからリスクが報告されたことも。
「人工甘味料の『チクロ』など、もともと発がん性が理由で禁止された添加物はたくさんありますが、『アカネ色素』など最近になって発がん性がわかった添加物もあるのです。高度経済成長期以降、指定添加物はだいたい330~350品目で推移してきました。ところが'00年代に入ってから、国際平準化のため、その数は330品目余から一気に450品目に増えてしまったのです」(原さん)
意見交換の場でも見解を示した、パルシステム生活協同組合連合会の常務執行役員・高橋宏通さんは、無添加と表示できなくなることで顧客が離れ、売り上げが落ちれば、「採算が合わないので、もう無添加の商品は作らない」というメーカーも出てきかねないと指摘する。
「いまや食品は、添加物ありきで作ることが前提のように思われています。しかし、添加物を使用しなくても、素材を吟味し、製法技術を駆使すれば安全でおいしい食品は作れるのです。実際に、そういう努力をして無添加の食品を作っているメーカーも少なくありません。にもかかわらず表示できなくなれば、わざわざ苦労して作る企業も減り、提供したいメーカーにとっても、選びたい消費者にとっても、大きな痛手になってしまうのです」
実際に、こんな声も届いているという。
「すでにある無添加の総菜メーカーからは、売り上げが減る見通しを理由に、販売店から『今後、御社との取引を控えたい』と連絡を受けたと聞きました。消費者庁からペナルティが科せられることを懸念しているのでしょう」
このままでは、気づかぬうちに食卓が食品添加物だらけになる恐れが……。この事態を前に、私たちにできることはあるのだろうか。
「現在の食品表示制度には欠陥があり、食品添加物が全部は表示されていません。そのため、安全を危惧されている食品添加物を把握したり、食品表示制度の改正に敏感になったりと、アンテナを張っておくことが重要です」
インチキな添加物だらけの食品や飲料が溢れる事に。