生計費原則を軽視し、地域間格差の是正を求める声に応えない最賃目安
各地のたたかいで最賃の大幅引き上げを勝ち取ろう(談話)
2024年7月29日
日本自治体労働組合総連合
書記長 橋口 剛典
7月25日、厚生労働省中央最低賃金審議会は、2024年の地域別最低賃金改定の基礎となる引き上げ目安について、すべてのランクで50円引き上げる答申を厚生労働大臣に対して行った。各都道府県で目安どおりに引き上げられると、全国加重平均は、1,054円となる。
過去最高の引き上げとなったことは、全国一律最低賃金制と時間額1,500円以上を求める運動を社会的な賃金闘争の中心課題と位置づけ、全国の仲間がたたかいを展開した成果である。「全国一律最低賃金制度の実現を求める請願署名」は、5月23日の署名提出時には約18万筆が、物価高騰のもと切実な声となって寄せられた。
しかし、目安の水準は、私たちが求める「時給1,500円」には遠く及ばない。政府の2030年代半ばまでに最低賃金の全国加重平均を1,500円とする方針は、「骨太方針2024」のなかで、より早い達成にとりくむとされたが、今回の目安も依然として、早急な賃金改善を望む国民の強い思いに応えない不十分なものであり、生計費原則の軽視といわざるを得ない。中央最低賃金審査会では、最低賃金の大幅引き上げによる中小企業等の負担増を懸念する発言もあったが、国の責任で中小企業等への支援策と財政措置を行い、最低賃金1,500円以上を今すぐ実現すべきである。
また、もし、目安どおりに改定されると、最も高い東京で1,163円、最も低い岩手で943円となる。最低賃金の低い地域では、高い地域への人材流出が深刻な問題であり、地域経済の衰退に拍車をかけ、公務においても地域間格差は、人材確保の困難さをもたらし、住民サービスに支障が生じている。公益委員見解で「地域間の金額の差についても引き続き注視する必要がある」と言及されたことは、私たちの継続的な訴えの到達とも取れるが、実際に金額の差を是正する答申に至らなかったことは遺憾である。しかし、岩手や徳島で知事から労働局へ直接の最低賃金引き上げ要請が行われたことに代表されるように、最低賃金引き上げを重要視する世論は着実に大きくなり続けている。地域経済を支え、全国どこでも、住民が健康で文化的なくらしができるようにするために全国一律1,500円以上を求める私たちの運動がますます重要となってくる。
最低賃金の決定に向けた地方最低賃金審議会の審議が始まっている。目安を大幅に上回る引き上げを求め、地方最低賃金審議会への意見書・陳述、地方議会への意見書等、地域の幅広い住民・団体との共同で運動を広めよう。
10月の地域別最賃改定に向けて公務職場でも、最低賃金引き上げをはじめとする社会的な賃金闘争と初任給改善と在職者調整・会計年度任用職員の賃金引き上げ等を一体のものとして旺盛にとりくもう。自治労連は、職場と地域の力で、地域間格差是正や最賃の大幅引き上げの実現に奮闘するものである。
以 上