安倍首相が訪米し、4月28日にオバマ大統領と首脳会談をおこない、29日には米議会で演説するなどした(いずれも現地時間)。それに先立って日米の外務・防衛担当相の会談(2プラス2)が開かれ、防衛協力の指針(ガイドライン)の18年ぶりの改定でも合意した。
それら一連の内容は、アメリカと一緒に海外で戦争する国づくりをすすめる日米軍事同盟の強化や沖縄・辺野古沖への米軍新基地建設の推進、さらにはTPP(環太平洋経済連携協定)の早期妥結など、日本の主権を蔑ろにする異常な対米従属の約束であり、断じて容認できない。全労連は世論と共同をいっそう強め、誓約の具体化を許さないたたかいに全力を尽くす。
問題の第一は、新ガイドラインの改定で合意し、日米同盟のいっそうの強化と、そのための戦争立法の夏までの成立を約束したことである。「同盟のグローバルな性質」が強調されたとおり、地球規模で米軍の戦争に協力し、戦闘地域(戦地)で米軍支援をおこなうことが明記されており、憲法9条はおろか、現行の安保条約さえ超える内容にほかならない。しかも、それらは国会論議、戦争立法等の国会提出に先行して誓約されたのであり、二重三重に許されない異常な対米従属といわねばならない。
くわえて、辺野古沖への米軍新基地建設についても、「唯一の解決策とする立場は揺るがない」などと、推進が米国に約束された。しかも、沖縄にとって4月28日は、サンフランシスコ条約発効で日本から切り離され米軍施政下におかれた「屈辱の日」である。オール沖縄の民意を無視し、土足で踏みにじるものとして厳しく批判されねばならない。
第二は、TPP交渉の早期妥結が誓われ、議会演説等では、むしろ日本から能動的に推進が呼びかけられたことである。安倍首相は「単なる経済的利益を超えた、長期的な安全保障上の意義」を強調したが、米議会ではTPA法案の審議中であり、さらなる譲歩を迫られることは明らかである。マスコミ等が伝える部分的な情報からも、すでに国会決議を逸脱した譲歩となっていることは明白であり、交渉からの早期撤退こそ、日本の政府がとるべき態度である。
農業と食の安全を壊し、雇用や社会保障の営利化など日本の経済主権を根底から脅かし、日米のグローバル大企業の利益のみに奉仕する亡国的な態度にほかならない。
第三は、先の侵略戦争、歴史に真摯に向きあう姿勢があるのか、安倍首相の態度からは大きな疑問を持たざるを得ないことである。安倍首相は、先の大戦への「痛切な反省」を口にし、「アジア諸国民に苦しみを与えた事実から眼をそむけてはならない。歴代総理と全く変わるものではない」と、従来の歴史認識を引き継ぐ考えを示しはした。しかし、「侵略」や「おわび」という言葉は使わなかった。従軍慰安婦問題についても言及しておらず、「米国にはこび、アジアには冷たい姿勢ではないか」という疑念を拭うことはできない。歴史への真摯な反省なしに未来志向の関係を構築することはできないということを強く指摘しておきたい。
2015年4月30日
全国労働組合総連合
事務局長 井上 久
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