2021年9月10日
書記長 石川 敏明
9月1日、デジタル庁が発足した。菅首相が政府全体のデジタル化政策の司令塔として位置付けた看板政策である。わずか1年で発足させるために、デジタル庁設置法などの関連法は充分な審議を経ずに成立を強行した。国会審議では個人情報保護をめぐって課題が浮き彫りになり、衆参両院で個人の権利利益の保護をはかることなどの付帯決議がついた。
デジタル庁は、予算と権限を握り、省庁に対して勧告ができる強い総合調整機能を有している。各省庁だけでなく、補助金を出している地方自治体や準公共部門に対しても関与するとされており、デジタル庁からの直接的・間接的な指導や締め付けが強められる。
内閣直轄で総理大臣がトップとなり、事務次官クラスのデジタル監には民間出身者が就く。国公法が適用されない特別職として、きわめて異例の職となっている。職員約600人のうち200人は民間企業のIT人材等を起用し、企業に在籍をしたまま兼業も認められている。デジタル化に関わる国の意思決定に深く関与することになることから、利益相反の危険性がある。新聞各紙も、民間人材が出身企業に便宜を図るリスクや、関連企業との癒着を防ぐことが課題だとしている。
デジタル改革関連法のもとで、各省庁と地方自治体の情報システムが統一化され、行政手続きのオンライン化がすすめられようとしている。これまで地方自治体が地域の特性や住民ニーズをもとにすすめてきた、独自の医療費無料化や各種給付・減免制度などが制限をされかねない。オンライン申請できない住民は取り残され、対面窓口の縮小がすすめば住民との接点がなくなり、住民に対して責任ある対応ができなくなってしまう。
さらに、マイナンバーによって、健康情報や金融情報、運転免許情報などがひも付けされ、各行政機関が集めた個人情報などが デジタル庁のガバメントクラウドに集約され一元的に管理される。改正個人情報保護法により、地方自治体独自の個人情報保護条例は統一化され、行政が保有する個人情報等のデータを官民が共有し、企業のもうけのために利活用されることになる。公務公共のあり方、地方自治・団体自治のあり方が変質されようとしている。
地方自治体は、地方自治の本旨に基づく住民福祉の向上と、憲法に基づく基本的人権を保障することによって、住民一人ひとりにあった行政サービスを提供することが本来の業務である。自治労連は、デジタル庁発足による地方自治、団体自治の改悪を許さず、デジタル技術は住民の生活保障や公務公共の拡充のために利用し、働きやすい職場環境を実現するために住民との共同を広げていく。
以上
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