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【談話】2020年地域別最低賃金額の改定の目安について

【談話】2020年地域別最低賃金額の改定の目安について

2020年7月23日
全国労働組合総連合
事務局長  野 村 幸 裕


 厚生労働省の第57回中央最低賃金審議会は7月22日、2020年度最低賃金について「新型コロナウイルス感染症拡大による現下の経済・雇用・労働者の生活への影響、中小企業・小規模事業者が置かれている厳しい状況、今後の感染症の動向の不透明さ、こうした中でも雇用の維持が最優先されること等を踏まえ、引き上げ額の目安を示すことは困難であり、現行水準を維持することが適当」とし、有額での答申を示さなかった。また、地方最低賃金審議会での審議に際し「地域間格差の縮小を求める意見も勘案しつつ、適切な審議を希望する」。来年度の審議においては、「引き上げを目指すことが社会的に求められていることも踏まえて、議論を行うことが適当と考える」の2点を付記した。
 全労連は、広がる労働者・国民の生活不安と切実な声を背景に、コロナ禍の今だからこそ、大幅な引き上げが必要と訴えてきたが、答申は最低賃金法の「賃金の低廉な労働者の生活の安定を図り、経済の健全な発展に寄与する」目的を果たさず、労働者・国民の生活の先行き不安をさらに増幅させるものあり、極めて遺憾である。
答申は、「引き上げが雇用調整の契機とされることは避ける必要がある」と、ことさらに強調した。雇用を盾に、労働者に物を言わせず、痛みを押しつけるものである。そもそも最低賃金は政府の政策決定であり、審議会は、政策決定にかかる議論をすべきところである。政府に対して最低賃金を上げるべき、経営困難にならないために行う支援措置などの答申を行う必要がある。雇用を守ることと最低賃金引き上げを二律背反に描き、政府の責任を棚上げにする姿勢も承服することはできない。
 また、全労連は、エッセンシャルワーカーの低賃金状態の改善、人口や経済の大都市集中の改善、そして、直面する日本経済の立て直しに極めて重要であることなど、コロナ禍における特別の事情としても、最低賃金の重要性が増していることを訴えてきた。当事者からの切実な声も上げられた。しかし、答申は、「引き上げ凍結」と言う使用者側の意向を安倍政権が丸呑みし審議会に諮問、その諮問をそのまま結論とした経過である。審議では、労働者委員が有額答申を求めて最後まで奮闘したが、使用者委員は歩み寄る姿勢を示さない不誠実な対応に終始した。公益委員によっても適切な調整は図られなかった。労働者・国民の実態を顧みず政策議論もされない一方的な結論押し付けの経過は審議会の在り方にかかわる不当なものである。
 現局面の経済悪化は、コロナ禍以前からの賃金低下、消費税の引き上げなどによる個人消費の落ち込みなど景気低迷が主要因である。コロナ禍にあっても上場企業の3月末決算は黒字である。大企業の内部留保に至っては、前年同期比で19兆円も増えている。政府は、GOTOトラベルなどに巨額の税金をつぎ込む一方で、中小企業が最低賃金の引き上げができる有効な中小企業支援策をまったく示していない。最低賃金の大幅な引き上げや全国一律制度の確立は十分に可能であり、そのことが、コロナ禍の経済悪化から脱して、地域循環型経済をつくるベースになると確信する。
 審議は地方最低賃金審議会へと移される。過去3回、目安答申が有額で示されなかったが、02年は14県、04年は44道府県、09年33県の地方審議で引き上げを実現している。生計費に大きな地域間格差はなく、時給1500円以上の必要性は、我々の最低生計費試算調査で明らかである。この間、ほぼすべての政党が最低賃金の格差是正と引き上げを政策に掲げている。日本弁護士連合会は2月に全国一律最低賃金制度の実現を政府にはじめて要望している。全国一律制の確立を求める山形県知事をはじめ多くの地方自治体が格差是正と大幅な引き上げを求めるなど、社会的要請は強まっている。また、海外では、コロナ禍であっても最低賃金をイギリスは6.2%、アメリカはコロラド州など4州で15㌦(約1600円)に引き上げている。
 全労連は、政府に対し、最低賃金の引き上げが可能となる中小企業支援策をいますぐ明らかにするよう要請する。地方審議会には、すべての地域で引き上げの議論から開始し、そのための条件整備を審議する誠実な審議を求める。
 最低賃金はすべての労働者の賃金と生活にかかわり、日本経済の行方を左右する時の政府の重要な施策である。コロナ禍でその重要性がいっそう高まっている。全労連は、当事者の声を前面にかかげ、組合員の総力をあげて、地方審議で一歩でも前進させられるよう全力をあげる。同時に、全国一律最低賃金制度の確立、大幅引き上げに向けて奮闘する決意である。

以上
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