『お探し物は図書室まで』青山美智子(ポプラ社2020/11/9)
お探し物は、本ですか? 仕事ですか? 人生ですか?
人生に悩む人々がふとしたきっかけで訪れた小さな図書室。
彼らの背中を不愛想だけど聞き上手な司書さんが思いもよらない本のセレクトと可愛い付録で後押しします。
仕事や人生に行き詰まりを感じている5人が訪れた町の小さな図書室。
「本を探している」と申し出ると「レファレンスは司書さんにどうぞ」と案内してくれます。
狭いレファレンスカウンターの中に体を埋めこみ、ちまちまと毛糸に針を刺して何かを作っている司書さん。
本の相談をすると司書さんはレファレンスを始めます。
不愛想なのにどうしてだか聞き上手で、相談者は誰にも言えなかった本音や願望を司書さんに話してしまう。
話を聞いた司書さんは一風変わった選書をしてくれます。
図鑑、絵本、詩集など。そして選書が終わるとカウンターの下にたくさんある引き出しの中から、
小さな毛糸玉のようなものをひとつだけ取り出します。本のリストを印刷した紙と一緒に渡されたのは羊毛フェルト。
「これはなんですか」と相談者が訊ねると、司書さんはぶっきらぼうに答えます。 「本の付録」と。
自分が本当に「探している物」に気がつき、明日への活力が満ちていく
『朋香(21歳)婦人服販売員』『諒(35歳)家具メーカー経理部』『夏美(40歳)元雑誌編集者』
『浩弥(30歳)ニート』『正雄(65歳)定年退職』5話。
・続けているうちにわかることってあると思う P45
・今の自分にできることを今やる。それでいい P46
・口に入れるものや身の回りのものをていねいに扱わないって、自分を雑にするってことだ P48
・何ができるのか、何をやりたいのか、自分ではまだわからない。
だけどあせらなくていい、背伸びしなくていい。
今の生活を整えながら、やれることをやりながら、手に届くものから身につけていく。備えていく P57
・何を探してるのかって……
もてあましている夢の置き場かもしれない P75
・いつかって言ってる間は、夢は終わらないよ。
美しい夢のまま、ずっと続く。かなわなくても、それもひとつの生き方だと私は思う。
無計画な夢を抱くのも、悪いことじゃない。
日々を楽しくしてくれるからね(略)
でも、夢の先を知りたいと思ったのなら、知るべきだ P77
・仕事って、社会におけるポジションの確保だと思うんです P101
・いつかやろうって時が来るのを待っていたらめぐってこないかもしれない。
いろんなところに顔を出して、いろんな人と話して、
これだけたくさん見てきたから大丈夫って思えるところまでやってみることで、
『いつか』が『明日』になるかもしれない(略)
大事なのは、運命のタイミングを逃さないってことじゃないかな P104
・何も言わないで、ついてきてくれたんです。感謝しています P106
・いつかを待たないで……
これから動いてみようって気持ちになりました P107
・世界は何で回ってると思う?(略)
私はね、信用だと思ってる(略)
お金集めだけのためにクラウドファンディングをやろうと思ったら大変よ。
開業できるほど集まるかなんてわからないもの。
それよりも、公報活動のすごいツールになると思う。
熱く語って、信用してもらうの。
むしろ、経験のない人が本気で、嘘偽りのない言葉で伝えたことは、きっと人の心を動かすと思う(略)
理屈よりも、ワクワクするならその選択は正解なんだよ P113
・やることはたくさんあるけど、「時間がない」なんて言い訳はもうよそう(略)
「ある時間」で、できることを考えていくんだ。
「いつかが」「明日」になる P118
・人生で一番がんばったのは生まれたとき。
その後のことは、きっとあのときほどつらくない。
あんなすごいことに耐えたんだから、ちゃんと乗り越えられる P138
・幸せに優劣も完成形もない(略)
人生なんて、いつも大狂いよ。
どんな境遇にいたって、お思い通りにはいかないわよ(略)
計画や予定が狂うことを、不運とか失敗って思わなくていいの。
そうやって変わっていくのよ。自分も、人生も P159
・私たちは大きなことから小さなことまで
「どんなに努力しても、思いどおりにできないこと」に囲まれて生きています P161
・書物そのものに力があるというよりは、
あなたがそういう読み方をしたっていう、
そこに価値があるんだ P165
・同じでいようとしたって変わるし、
変わろうとしても同じままのこともあるよ P166
・やりたいことが決まってるって、それだけで素晴らしい P168
・好きって、人を救ういい言葉だ P217
・仕事をしていないということは、休みがないということなのだ。
働くからこそ、休日は生まれる。
前日のあの解放感を味わうことは、わたしにはもうない P269
・詩っていうのは、こむつかしいことを考えないで雰囲気で読めばいいのよ。
好きなようにイメージして P271
・人と人が関わるのならそれはすべて社会だと思うんです。
接点を持ったことによって起こる何かが、過去でも未来でも P285
・役に立つか、モノになるか。
これまでのわたしを邪魔していたのはそんな価値基準だったのかもしれない。
でも、心が動くこと自体が大切なのだと思うと、やってみたいことはいくつもあった P299
この本、読んでみたかった本なので、とても嬉しくて「つい」コメントしてしまいました。
私は運のいいヤツです。
>・好きって、人を救ういい言葉だ P217
この言葉にハッとさせられました。最近、この「好き」さえなければ…と自身を責めていたので、そうか、扱いようによっては人を救うのかもしれない。…と目が覚めた気持ちです。
ありがとう。やっぱり私は運のいいやつです。